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ちょいとした小話(聖夜)

レッキ宅にて―

「おはよう」
「おはよー♪」

もうこたつを出す時期ですねみなさん。
僕はベタなコタツを出して、ミカンを食っていた。目の前には“はんてん”の似合うミサ。

「おなかすいたよ~!」
「ミカンを食いなさい。今日は何をする気にもなれん。」
「えー!?」
「四の五の言わない。いつでも僕に頼らないでくれよ。」
「はーい……ブツブツ。」

ミサはかごの中にたくさんあるミカンを食べ始めた。

「さてと。」

僕は新聞を広げる。

「フムフム。」

最近は穏やかなニュースがないな。

「プッハァ、すっぱいのばっかりでした。」
「えぇ!?」

もう全部食べちゃったのか。僕のミカンが…。

「そんなに食べると顔が黄色くなっちゃいますよ。」
「びええ。」

―ピンポーン♪

「ん?どこの誰だ。」

せっかくコタツから出ないようにしてたのに。

「ミサが出ますの。」
「いいですよ。」

僕は立ち上がると、しぶしぶ玄関まで歩いて行った。

「はい。」

ドアを開けると、

「おう!元気か!?」
「…わあ…」

師匠がいた。

「…おはようございます。」
「おっはようさん!」

はいはい。

「レッキ、お前は今日凄まじく喜ぶ羽目に遭う。何故なら神レベルに優しい師匠様が仕事帰りにプレゼントを買って、それを真っ先に愛弟子の元に持ってきてくれたからだ!!神技なだけに。」

つまり御土産を持ってきたらしい。

「それは御親切に。ありがとうございます。」
「ほらよ!」

師匠は巨大な包みを適当によこして帰っていった。

「さてさて―」

包みの中身は、

「おほ。」

こりゃまた美味しそうな…。

「うわぁ~☆」

ミサは目を輝かした。僕は自然に口からよだれが流れているのに気付いた。

「ネブル地方特産の高級クリームケーキです。これは夜に食べましょう。」
「はーい!」

クリームが零れ落ちそうなほど、スポンジケーキに盛られている。
果たして僕とミサが食べると何秒かかることか。


暇すぎて死にそうになった。コタツの中にこもりきりもよくないという。
ミサと散歩に出ることにした。

「クストポートに買い物でもしに行きましょう。」
「うん!」

それぞれ厚着を着て、さて出発。

「レッキ、ミサ。」

スチルが歩いてきた。

「おはようございます。」
「おはようございまーす!」
「ウム。」

スチルは丁寧な挨拶にウムの一言で返すと、

「貴様等にコレをくれてやる。」

二枚のチケットを差し出した。

「なんですか?…ソレ。」
「見てわからんか。紙だ。」

いや、原料を聞いているわけではない。

「どこぞに行くチケットなのか聞いているのです。」
「おぉソレな。このチケットはクリスマスシティーへの切符だ。俺が許すとな。」

許さないとなんだというのだ。

「クリスマスシティー?」
「なんですの?」
「ホホォ、知らんのか。」

スチルは嬉しそうな顔をした。

「セントラルから7キロ先にある。10年前に作られた娯楽施設だ。今や有名なデートスポットに成り上がった施設なのである。」

嬉しそうに言うな。偉そうに。

「マジですか!?それはすんばらすぃ!」

ミサは目をキラキラさせる。

「そこに行くためのチケットですか。ありがとうございます。師匠とアリシアさんにあげときますね。」
「な、なぬ!?」

ミサは不満そうな顔に切り替わる。何故だ。

「いや、これはアリシアから渡せといわれたものだ。」
「へ?」
「彼女の話によると、『シークは“何故か”すぐに逃げちゃうし、抱きつくと“何故か”病院に行っちゃうし、あぁ~ん、これってきっと恋の病なんだわぁ!シークカワイイ☆でしょ?だから、アタシはシークが隣にいればそれでいいから、これ、レッキとミサちゃんにあげて♪』と言っていた。」

演技するな。そしてなんちゅう理由だ。文節は正確に。

「というわけで、はいどうぞ。」

スチルは強引に僕の手にチケットを手渡した。

「じゃな。俺はこれから、ば…姉貴と出掛けるのでな。」

“手編みのマフラーをプレゼントするのだ”となんてとても言えないスチル。
スタコラサッサ。風のように去って行った。

「…面倒だな。」
「レッキ!早速遊びに行きましょうよぉ!」

ミサは目を輝かせている。よくもまあ輝く目だ。お前の目はクリスマスイルミネーションか。

「仕方ありませんね。でもつまらなかったら光速で帰りますよ。」


ちなみに留守番をしている連中は―


セントラル内にて―


「マシュマ、シュガーランドから電話だぞ。」

プロ指揮官が蒼白な表情で受話器を渡して来た。

「持病のタンスの角に足の小指をぶつけるアレゴファアアアアア」

吐血をしながら指揮官は奥の部屋に飛んでいった。

「もはや病気じゃねえだろ…もしもし。」
『マシュマ、そろそろ帰れないの?それは甘い考え?アタシだけに。』

電話のお相手はマスマ子。マシュマの故郷、シュガーランドに住む許婚だ。

「そうだな、お前だけに甘い考えだ。」
『寂しいよぉ。』
「安心しな。明日休日をもらう。俺だけに。」
『本当に!?嬉しい!!』
「じゃあな。」

マシュマは電話を切って、おもむろに、隣にいるリクヤに抱きついた。

「ぐぎゃあ!」

首を掴んで絞め上げた。

「リークヤー、お前ドン・グランパのお気に入りの人間なんだよなあ。」
「そそそ、それがどうしたんスか?!」
「俺様を休日にさせるよう頼んでこい、今すぐだ。」
「ば、バカいわないでくれよ!そんなこと急に言ったって無理に決まってるでしょ?殺されますよ―」
「よし、必殺技の練習でもするかな。リクヤ、そこに立て。」
「頼んできます。」


アリシアは内心寂しかった。

「やっぱり我慢しないでシークを拉致すればよかったかな…」

ふと顔を上げると、シークが口笛を吹きながら歩いていた。

「キャァー!シィークゥー!!」

アリシアは豪速で走り出した。

「ん…ぎゃあああああああああ!!」

シークも走り出す。しかしすぐに追いつかれてしまう。

「シークが生きている間ず――――っと一緒にいてあげる♪絶対離れないぞ☆」

―ゴキメキベキ…

「すぐに離れる羽目に遭うぞぉ!!俺、もうすぐ死ぬからぁ!!」


「ゲ…雪だ…」

リクヤの部下、ドレッドは相棒の三人と自宅で雪かきをしていた。雪がチラホラ降ってきなすった。

「また積もるぞ。畜生…」
『いっそのこと、羽刀で雪を吹き飛ばしてやろうぜ。』

ロクロの提案にドレッドは賛成した。

「オッシャア!やってやろうぜ!」
『よ、よしといた方がいいと思いますがね…』
「うっさい!俺フェザント!羽刀・台風発令!!」

嬉しそうにドレッドは羽刀を振り上げ―



スゴオオオオオオオオオオオオオ


『臨時ニュースです。セントラルに小さな台風が発生しました。処罰機関隊員が巻き込まれ、重傷の怪我を負って国家病院に搬送されたもようです。』
「バカなヤツもいたもんだよな。」
「そうやなぁ。」

ラーメンをすすりながらスチルとフリマはテレビのニュースを見ていた。


「畜生…」

涙目のまま地獄の世界…ではなくドン・グランパの部屋に入ろうとするリクヤ、その前にミソラがいた。

「ミ、ミソラ!」
「書類を届けに来たらこれだもの。アンタまた頼まれごとを受けたんでしょ。昔からお人よしなんだから……違うか?無理やり頼まれたのか?クスクス♪」
「ちっちげぇよ!」
「アタシも一緒に頼んであげる♪」
「え?」
「一人であの人を相手にするのは大変よ。手伝ってあげる♪」
「かっ…………勝手にしろ!」

少し嬉しそうにリクヤはミソラと部屋に入っていった。


こんな感じでした…。


一方、レッキとミサは―


クリスマスシティーというところは素晴らしいな。街が雪に覆われ、そこにイルミネーションがくくりつけられて輝いている。
空中に漂う雪は様々な結晶となり、僕達を驚かせる。よく見ると、向こう側には巨大なクリスマスツリーが見えた。

「わぁ…。凄いですね。いたるところにイルミネーションが取り付けられている。」
「うわぁ~!凄いですの!いたるところにイルミネーションがトリケラトプス。」

違う。

「クリスマスシティーにようこそぉ!ハーハッハッハッハァ!」

キャプテン・ウェイバーが似合わないサンタの格好で走っている。そんなに速く走ったら子供達が喜べないでしょうが。

「さすが国家直属の施設だ。僕達の見慣れた人もいるようだな。」
「ハーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハァァ!!!!」

やかましいな…。

「ねぇえ、あそこに行ってみようよぉ!」

ミサが僕のジャンパーの裾を引っ張る。

『雪像コーナー。』

どっかで聞いたような…。

「ねぇえ!」

ミサは無理やり僕の腕を引っ張る。

「だぁっ!!…わかったわかった。引っ張るなって。」

そんなこんなで雪像コーナーに入ったわけだが。僕の目に入ってきたのは僕の顔の像でした。

「え?」

見事なまでに僕にソックリだ。僕以外のなんでもない。

「ウン?レッキくんとミサちゃんじゃないか。」
「あ、サイモンさんだぁ!」

サイモンさんが何故かトナカイの着ぐるみを着ていた。丸い仮面に似合ってカワイイ。

「なにをやっちゃってんですか。」
「見てわからないかい?トナカイだよ。ウンウン、ここでアルバイトをしているのさ。このシティーは10年も前から活気に溢れているところだから、バイトができて光栄な気分だよ。」

そして横の雪像を見た。

「ああ、これは僕が作ったのさ、ウン。」
「何で作ったんですか?」
「なんでって…スコップや彫刻刀を使ったのさ。ウン、思ったより雪ってのは硬いん―」
「違いますよ!!意図を聞いているんです!!!兄さんみたいなボケしないでください!!」

噂をすればなんとやら、

「おぉ――――い!!」

兄さんが笑顔で走って来た。サンタの格好をしている。
その後から若い女性達がキャーキャー言いながら追いかけて来た。モテモテですね、お兄サンタ。

「その雪像はこの俺がサイモンに作ってくれと頼んだんだ。」
「何で頼んだんですか?」
「なんでって…電話で頼んだに決まってるだろ。思ったより電波ってのは悪いもんだよな―」
「違いますよ!!意図を聞いてるんです!!!ダブルボケには付き合いませんよ!?」
「ああソレな。お前は俺にはかなわんが美形だからな。“モデル”という生かし方もあるんだと伝えたかったんだ。お兄ちゃんは優しいだろぉ!?」
「優しいー!!」
「バロちゃん最高~!」

横の女性達が口々に叫ぶ。

「ふざけるなバカ兄貴!!今すぐ取り壊せ!!」
「バッ、バカ兄貴とは何事だ!美形兄貴と言いなさい弟よ!」
「美形兄貴とは言わなくてもいいけどさ、この作品は自分で言うのもなんだけどよくできたんだよ。取り壊すのはちょっと待っておくれよ。ウン。」

サイモンさんは申し訳なさそうに頭をかいた。

「わかりましたけど…もう…いつのまに作ったんだよ…」

文句を言いながらも、僕は真っ赤な顔で雪像を見るミサを引っ張って、向こうの雪像を見に行った。

「なんだこの雪像は。」

筋肉質で、男らしいクリスの雪像だった。ボディービルダーのようなポーズを決めている。まだ足元はできてないようだが。

「ウッス!レッキさん、ミサちゃん!」

スコップ片手にクリスが汗を拭きながら呼んできた。

「これはなんですか?」
「ギガマッチョですの。」
「自分の理想像ッス!将来はこんなに強くなりたいという願望があるッス!」

やめた方がいいと思う。

「ところで、そんな格好で寒くないんですか?」

クリスの格好は上半身がタンクトップで下半身がジャージだった。

「心頭滅却すれば寒くもなんともないッス、へへ!…へ、へくちょん!」

いわんこっちゃない。ジャンパーでもかけてやろうかと思ったが、いきなり頭を殴られた。

「あで!」
「こんなバカに情けをメガかけんじゃねえ!」

ロゼオがアメをかじりながら言い放っていた。フカフカであったかそうなジャンパーを着ている。

「酷いですのロゼオ!」
「ギガうるさい!あっち行ってろ!」

行けばいいんでしょ!?まったく…。
僕とミサは膨れながらその場を去っていった。


「アメ白髪!お前なんて失礼なことしてんだよ!」

クリスは怒りながらロゼオに詰め寄る。

「フン、お前もお前だ、無理すんじゃねえよこんな寒いとこで!…ま、メガトンバカは風邪をオメガひかんというがなぁ~!」
「な、な、な、な、なぁんどぅあってぇ!?」
「俺は死神だから寒くねえんだよ!見てみろ!」

ロゼオはジャンパーをクリスの足元に脱ぎ捨てた。

「フハッ!お前なんて風邪ひいて死んじまえ!ギャハハハハァ~♪」

笑いながらロゼオは飛び去った。

「なんてムカツクヤローだ…」

クリスは怒りながらも、落ちてるジャンパーを見た。

「そういや、アイツジャンパー脱ぐ必要あったッスか?」

彼女はジャンパーを拾い上げ、ジッとそれを見つめた。フカフカで暖かい。

「…まさかアイツ…」

クリスはあることに気付いて、微笑んだ。

「…ありがとう…」

クリスはジャンパーを着て、再び未完成の雪像を作り出した。


センネンはそんな二人の一部始終を見ていた。

「ふふふ…」

微笑むセンネンを見て、サイモンとバロンが歩いてきた。

「ウン?センネン、雪の中に入って何をしてるんだい?」
「サイモンとバロンか。ふふ、これは“かまくら”じゃ。」
「ホォ、ジャパニーズアートだな。」

バロンは感心した。

「ウンウン、僕も入っていいかな?ところで、何を見てるんだい?」
「…素直じゃない若僧二人じゃ。」
「ハァ?」

サイモンとバロンは顔を見合わせた。


その夜―


ミサと手を繋いで夜のクリスマスシティーを歩いている。人々もそれぞれ幸せそうに手を繋いで、夜道を歩いていた。

「キレイだね。」

ミサは空を見ながらそう言った。イルミネーションが光のトンネルを作っている。

「そうだね。」
「もぉー!『キミの方がキレイだね』とか言ってよぉ!」
「なんだよソレ。」

軽く微笑みつつ、僕は目の前に知り合いを見た。

「ロキさん。」

灰色の髪。間違い無く、ロキ・フレイマだった。大荷物を持って泣きそうな顔をしている。

「おこんばんは。」
「こんばんは~!」
「おぉ、レッキとミサか。」

苦い笑顔を作り、ロキが顔を上げた時だった。

「オウオウ!何のんびりしてやがんだよボケナスがぁ!」

―ドゥゴッ!

「ぼけなす!」

もの凄い勢いで鬼みたいな女性にとび蹴りされた。

「か、彼女は…」

ドン・グランパの孫娘、ドン・アンジェリカだ。

「ア、アンちゃん落ち着いて―」
「これが落ち着いてられるかぁ!これから新しいブランド品買ってもらうんだかんな!」
「ヒィィ…」

ロキはアンジェリカに引っ張ってかれた。

「大変だなぁ。」

引きつる僕を見て、ミサはこう言った。

「ミサはああはなりませんの。」

どういう意味かわからんが、助かる一言だ。

「じゃあ、もう帰りましょうか。」
「あぁ、待ってよ。最後に寄りたいところがあるの。」

もう…すぐに終わらせますよ。


ここはクリスマスツリーの前じゃないか。

「さ、ここに座ろ♪」

ミサは近くのベンチにチョコンと座った。僕も続いて座った。

「キレイなツリーだなぁ…」

そのツリーは数十メートルはくだらない巨大なツリーだった。“手枝絡・世界樹”よりもでかい。

「…♪」

ミサは何かを考えているようだ。

「なあ、どうしたんだミサ。何もないならもう帰りますよ?」
「まあまあ、後5分、後5分」
「…?」
「ねえ…さっきバロンさんから聞いたんだけど、このツリーの前でキスをすると両思いになれるんだって♪」
「ベタなジンクスですねぇ。」

気付いたら誰もいなくなった。聞こえるのは、僕とミサの吐息の音と、時々響くクリスマスツリーの鈴の音だけだった。

「あと10秒…」

ミサがこっちを向いた?

「え?ミサ?…ど…どうかしたん―」



「…!!」



時が止まった。



そうか、今日は…24日だった。そしてもう、25日になった。



「メリークリスマス♪」



ミサが僕の頬にキスをしたのだ。

「…。」

思考停止。脳内混乱。何が起こったのかイマイチ理解できない。

「…えへ♪」

ミサは顔を真っ赤にして座り込んだ。

「あ、…あ…い。」

声が出ない。僕の顔からボッと湯気が出た。
ミサは真っ赤な顔のまま立ち上がった。

「さ、家でクリームケーキ食べようよ!」








Merry Christmas. 
To you so that a very wonderful day may visit ・・・ 

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