第7章:次の目的地へ!
―3000年 1月2日 午前8時47分―
「本当に行っちゃうんですか?」
クリボッタは残念そうに言う。
「もっとお礼をしたいんですけど…。」
「結構です。僕達はやり遂げなくてはならない事があるので。」
僕は丁重に断った。
「急ぐぞ!あいつが来ちまう!!」
師匠は慌てながら僕を呼ぶ。
―1日前 1月1日 午後14時52分―
トロピカル・ラグーンの外では下級隊員らしき連中が僕が引っ張って来た無残な上司達を見て仰天した。
「どど、ドレッド隊長!?ロトさんやロクロさんまで!?」
「ゴショガワラさんも!?どうしてこんなにボロボロに!?」
僕はこれ以上、面倒事に巻き込まれるのは嫌だと思い、「4人とも、途中で『仮眠をとりたい』とか言い出してしまって、眠りこけてしまったんですよ。」と嘘をこいた。
まあムダだとは思うが、この程度の嘘で国家機関ともあろう処罰機関を騙せるはずが、
「ああそうですか。ドレッドさん達ったらぁ…しょうがないですねぇ。」
わぁお、マジかよ。
「それじゃあ、これで失礼します。プヨン教授によろしくお願いします!」
下級処罰隊員は元気に声を張り上げる。
「は、はあ…。」
おいおい!ちょっとは考えろよ!どうしてどいつもこいつもボロボロで泡吹いてたりしてるんだ?とか、大体あんたは誰なんだ?とか聞けよ!
そして僕の嘘の下手さをつっこめってば!
「さようならー!」
僕の心の叫びも通じず、アホな下級処罰隊員は上司を連れ、ジェットボートで去って行った。
―午後14時54分―
「い、行っちゃったんれすか?あの人達、行っちゃったんれすか!?」
ええ、行っちゃったんれす。
キッソウはジェットボートが去るのを確認して扉から出て来た。
「それより、スピードヒール持ってませんか?師匠が死にかけて大変なんです。」
「?シークさんが!?私、1粒だけ持ってます!」
―午後15時00分―
「シィーク・レットォ!ふっかあぁーつ!」
ハイテンション男ぉ!ふっかあぁーつ!
死にかけた時は非常に心配したのだが、その気もうせた…。
「フハハハハァ!レッキ!あいつら1人で追い払ったのか!?ハーハッハッハァ!やるじゃあないかぁ!手伝えなくて悪かったなあ!ん?あんたはキッソウちゃんじゃあないのぉ!クリボッタは大丈夫かぁ!?え?軽傷で済んだ?そいつぁーよかったなぁ!俺も元気になったから見舞いにいかなきゃなあ!!」
数十分意識を失ってた分、かなりハイテンションだ。さすがについていけない。
「え、ええ…。」
キッソウは少し怯える、無理もない。無視しても結構ですよ。
「処罰機関はもうしばらくは来ないでしょう。安心して下さい。」
僕はキッソウに優しく言う。
「はい…2人共、本当にありがとうございます…。」
キッソウはニッコリと微笑む。
「恩返しです、興味深い施設を見せてくれたお礼、それともこの程度ですむものですか?」
僕は師匠の大穴の開いたシルクハットを見てそう言った。
「ヘヘ、全くだな。」
師匠は僕の背中をポンと叩く。
「ウフフ、2人共、今日はここに泊まって行きませんか?」
「泊まっていいのか?どうする?」
「今からクストポートに戻るとなると、日が暮れてしまいます。お言葉に甘えましょう。」
「そだな。」
「ドクター・シュノがあなた方の事について感謝していました…。明日お話があると言うのでぜひ顔を出して下さいね。」
―午後15時24分―
「2人共!1日この部屋で休んでくれよーん!」
ギッサは明るい笑顔を取り戻していた。
「うひょ―!いい眺めだぜ!」
師匠は水泳の飛び込みのごとく部屋に飛び込む。
部屋はフローリングの床で敷き詰められ、白い壁紙に、自分と同じくらいの大きさの柱時計が吊るされていた。立体映像の浮かぶテーブルに空中に浮かぶ椅子が未来的だ。プヨン教授のセンスなのか、様々な色の水時計が色んな所に取り付けられ、天井にはブルーのライトがチカチカ光る。
師匠は窓から外の風景を眺める。僕も覗いて見た。
「へぇ…。」
一面が青い海で囲まれている。確かにいい眺めだ。
「2人には助けられたよーん!オレッチ、実はドレッドの事を殴ろうとしてたんだよな!でも、2人が代わりに痛めつけてくれたからスッキリだもんね!」
「そりゃ、よかったですね。」
内心、うるさいから出て行ってもらいたい。
「プヨン教授も多分感謝してると思うぜ、明日何かもらえるかもよ!」
「マジで!?やりぃ!!」
師匠が飛び跳ねる。ギッサもつられて飛び跳ねる。
外でやってくれ。
―午後17時36分―
少し早いが僕はシャワーを浴びた。季節は冬、湯冷めしない内に寝巻きに着替える。
外はすっかり夜だな。
「レッキ、テレビが取り付けられてるぜ。」
師匠が壁に取り付けられたテレビを指差す、早っ。属に言う薄型テレビには、女性と男性が夕日の浮かぶ港で真剣な話をすると言う、かなりベタなドラマが放送されている。
「しかし、これからどうする?クストポートに戻ったとしても、次の目的地はまだまだうやむやなんだし…あのチケットの行き先でも何か蒼の騎士団についてわかる訳でもないだろ。」
師匠がソファーに座り込みながら聞いてきた。
そのチケットを捨てたのはどこのバカだ。
「そうですね…この施設の人達なら、蒼の騎士団の情報を何か知っているかもしれませんね。師匠も見たでしょう?外の4本のアンテナ。あんな物があるんだから、きっと情報を持ってるはずですよ。」
僕は考えを述べた。
「そうか!よし!今日はゆっくり休んで、明日聞きに行こう!」
師匠は元気よく立ち上がると、部屋の隅にある2つのベッドの方へ直行した。
「ちょっと!いくら何でも寝るのは早すぎじゃ…あ…。」
「グゴォォォォ…。」
あらら…もう寝てしまった。
―1月2日 午前7時46分―
「フアァ…。」
長い一日もようやく終わり、新年第2の日が始まった。
しかしいい天気だ、こんな良い日には静かに過ごせたら……
「おっはよーさぁーん!!2人共ぉ!ぅおきぃろぉー!」
そうはいかんか。
ギッサがノックも無しに部屋に飛び込んで来た。
「おはようございます。」
「プヨン教授がお前らを待ってたぞ!早く来いよぉ!」
「え?すいません、師匠、急ぎましょう。ん?」
あいたたた…師匠はまだ眠りこけている。
「起こしますんで、待ってて下さい。」
「ほーい。」
ギッサはニコニコしながら外に出た。
「師匠!師匠!起きて下さい。」
師匠は寝言を言う。
「うーん、レッキ、お前にこんな趣味があったなんてぇ…意外だなぁ…。」
ど、どんな夢を見てるんだ!僕を巻き込むな!
「師匠!早く起きて下さい!プヨン教授が待ってますよ!」
師匠は起きない。
ハア、仕方ない…
―パチン
師匠の顔を軽くひっぱたく。師匠はまだ起きない。
―バチン
師匠の顔を強くひっぱたく。師匠はまだまだ起きない。
―バッキィン!!
テーブルを叩き付けた。師匠はようやく起きた。
「うーん、おはようさん。」
「プヨン教授が待っています。早く行きましょう。」
僕は白服に着替えながら師匠を立たせる。
「おう!そうだったな!」
師匠は部屋の入口まで突っ走り、
「レッキ!急げよ!遅刻しても知らねえぞ!」
僕に向かって叫ぶ。僕のはらわたが煮えくり返ったのは言うまでも無い。
―午前8時02分―
数分かけて、やっと研究室に着いた。
「遅いでぷ!」
プヨン教授がご立腹だ。
「すみませんねえ、こいつが着替えるのが遅くてね。」
師匠が僕を指差す。後で覚えてろよ。
ドクター・シュノが僕と師匠の手を掴み、ブンブン振る。
「ありがとう!本当にありがとう!君達のおかげでドレッド達を追い払う事が出来ましたぞ!」
「礼なんて、大した事はやってませんよ。」
僕は手を振られながら言う。まあ、大した事になっちゃったけど。
「いやあ、助かりましたよ、あのままだったらどうなってた事か…。」
クリボッタが近づいて来た。顔にはガーゼや包帯が巻かれている。
「リンスもとても喜んでましたよ!」
「バ、バカ!言うんじゃねえよ!」
リンスは顔を真っ赤にしている。
「大きなお世話だったんだよなぁ!あんな奴ら、俺1人で追い返せたんだ!」
ボコボコにされてたくせに。
「あいつらって一体何なんだったんですか?」
クリボッタは説明してくれた。
「国家の特殊機関です、そもそも、処罰機関は裁判機関から処罰命令を出されて初めて行動が可能なんです…なのに、それの規格外を破ってあいつらはあんな事を…。」
なるほど、ひどいもんだ…僕は間違えても国家になんて就職しない。
「ウオッホン!」
プヨン教授が咳払いをした。科学者達は一気に静寂状態になった。
「さて、ジョニーさんに、スティーブンさん、でぴたね」
だから全然違う。
「教授、レッキさんとシーク・レットさんです」
クリボッタは小声でプヨン教授に言った。
「あ、そうそれ、お2方には処罰機関を追い払ってくれた事で一同はとても感謝していまぷ!そこで、ボクは素晴らしい発明をプレゼントしまぷにゃ。」
「は、発明…。」
不吉だ。
「フフ、心配要りませんよ。発明品はキチンとチェックしましたから。」
クリボッタは横から口を出す。プヨン教授は顔をしかめた。
「フン!ボクだってたまには真面目に開発をしまぷにゃ!ギッサ!例の物を持って来てくだぴゃいな。」
「ほーい!」
ギッサは部屋の奥に入ったかと思うと、黒と白の稲妻の模様が刻まれたトランクを持って来た。
「ほい、どうぞ。」
ギッサは僕にトランクを渡す。
「…これは…何ですか?」
僕はトランクを見回す。何の変哲も無いただのトランクだ。
「よくぞ聞いてくれまぴた!それは“トランクPC”!!見た目はただのトランクでぷ!しかし!取っ手のボタンを押すとあら不思議!トランクに内臓されたパソコンが起動しまぷにゃ。」
へえ~。
「ためしにPCモードにして見てくだぴゃい。」
僕はトランクの取っ手を見た。黒いボタンが取り付けられている。ぽちっとな。
―ウィ―――――ン!!
トランクの前側が開き、キーボードと立体画面が現れる。
「これは…。」
「スゲ―!」
「でしょー?でしょでしょ?でしょぉー?ボクが作ったんでぷよ?すごいでぴょー!褒めて褒めてぇ!」
プヨン教授が机の上で踊り回る。
「さらに!それにはGPS機能が搭載されてるから迷子になっても、こちらのサブPCを見ればすぐに場所がわかりまぷにょ、これはシーク君にあげまぴょう。」
僕が迷子になった事、ばれてた…師匠は小さいキーライトみたいなのを渡された。
「ありがとうございます、後で使ってみます。」
「ニャッポイ!喜んでくれて嬉しいでぷよ!」
「あのぉ…俺のは…。」
師匠がプヨン教授を突っつく。
「え、それで充分でぴょ、ああ!そぉそぉ、レッキ君、制作費に3500グランちょーだい。」
はい!?
「金を取るんですか?」
「ザッツラーイト、世の中通貨交換がビジネスでぷにゃ。」
瞬時にドクターシュノが教授をぶっ飛ばした。
「も、もちろん無料に決まっておるでしょう!?ハ、ハハ、ハハハハ…。」
なるほど、プヨン教授はこういうやつか。
―午前8時20分―
「教授!教授!大変です!」
突然、新米らしき研究員が飛び込んで来た。
「何ですか、騒がしい!ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」
クリボッタが注意する。彼は関係者だろ。
「じ、実はたった今変な女性がやって来まして、『シルクハットの男が来なかったか?』とか言って暴れてるんですよ!どうしましょう!」
シルクハット…僕はもちろん、研究室内の全ての人がご存知、僕の師匠、シーク・レットの方を見た。
「え?俺?」
新米研究員は師匠を見るなり、「ああ!まさしくシルクハットの男ですね!」と叫ぶ。
ええ、まさしくシルクハットの男です。
「こっちに来て下さいほら早く!」
「わたたた!ちょ、ちょっと待てぇ!」
師匠は新米研究員に引っ張られて連れてかれた。
―午前8時37分―
再び外に出ると、そこには研究員に怒り叫ぶ女性がいた。年齢は20代前半あたりで、首から肩までの短い髪で表情の整った美人な女性だった。額には緑のバンダナを結び、裾の広い長ズボンに、黒と緑のランニングシューズ、ゴム製のスポーツウェアの上に緑色の線が刻み込まれたベストを着こなしている。両腕には鉄製の小手が取り付けられていた。
彼女は新米研究員Bに「あんたに用は無いの!クストポートで聞いたのよ!シルクハットの男があんた達の施設に行ったって!いるんでしょ!?早く出しなさいよぉ!」と叫ぶ。
「さあさあ、止めて下さい。」
新米研究員Aは師匠の腕を引っ張る。師匠はガタガタブルブル震えている。
「どうかしましたか?」
「あわわわわわわわわ…。」
師匠は彼女に見覚えがあるらしい。彼女はさんざんわめいたあげく新米研究員Bを突き飛ばした。
「ほらほらぁ!」
師匠は新米研究員Aに蹴り飛ばされ、彼女の前に飛び出た。
「…。」
師匠と彼女はしばらく見つめ合う。
「シ、シーク…?…本当に、シーク?…キャ―――!知らない間に背が大きくなって、マジかっこいいんですけどぉ―――♥アタシ13年前からずぅ―――っと探してたんだから!!」
彼女が師匠に抱き付く。同時に師匠の身体の骨が大きく軋む音がした。
「ギャアアアアアアア!アリシアァ!よよ、よせ、離れてくれ!もう縁は切っただろう!?し、死ぬ、つぶ、潰れるから離れてくれってぇぇぇ!!!!」
師匠が引き離そうと必死に身体を振る。
「なぁに言ってんのよぉ!アタシとシークの運命の赤い糸は永遠に切れないのよ!」
何だこの古いセリフは。
「そんなもん当の昔に切れたんだよ!はぁなぁれぇろぉ!」
しつこく抱き付く彼女を師匠は無理やり引き離した。彼女は「シーク、変わっちゃったね…。」と落ち込む。
このままじゃ話が終わらないのでこっそり師匠に近づいた。
「師匠、あの…彼女…誰ですか?」
師匠は息切れをしながら、
「ハァ、ハァ、…え?ああ、あいつは、アリシアっちゅう奴で、俺の昔の師匠、ゲンカク先生の孫娘で」
「シークの彼女でぇーす♥」
「ギャア!!」
アリシアは師匠の腕に自分の腕を絡ませる。同時に師匠の腕の骨が大きく軋む音がした。
「師匠、彼女のどこがいけないんですか?美人ですし、元気のある人じゃないですか。」
「あらぁ!あんた、アタシの事分かってんじゃない!でも、惚れないでよ、だって、アタシ、この人の事愛してるんだもん♥」
アホだ、この女。
「元気がありすぎるんだよ!見ろ、ミシミシいってるんだぞ!?骨がミシミシいってんだぞ!?信じられないんだよこいつの怪力はぁ!!大体お前は気持ち悪いもんばっかり食べるからイヤなんだよ!」
「何言ってんのよ、みんなおいしいから食べてるのよ?」
「へぇ、珍グルメ家なんですね。」
「そんな生易しいもんじゃねえんだよ!この女、生ゴミあさって食べれそうだって言って食べるような奴なんだって!」
あらやだ。
「まあ!ひどい言い方ねぇ!いくらアタシでも生ゴミは多分食べないわよ!」
「そうですよ、生ゴミとか、落ちている物なんて食べたりしたら腹壊しますよ。」
「え?別に、落ちてる物は食べるわよ。」
はい?
「ほら見ろ!こいつはゴミあさり女なんだ!」
さすがに同感だ。
「ひっどーい!…まあいいわ、さあ!シーク!お爺様の所へ帰りましょう!」
「嫌だぁ!!」
「何なんでぷか!?あなたは!勝手に人の施設に立ち入らないで欲しいでぷにゃ!おまけに散々騒いでぇ!迷惑きまわりない!」
プヨン教授とクリボッタがしかめた表情で近づいて来た。
ああ!ダメですよ!これ以上変人が増えたら!
僕の不安もよそに、アリシアはプヨン教授の存在に気が付いてしまった。
「あらぁ?…スライム!?うわぁ!おいしそう!」
おぉ、おいしそうと来ましたか!
「スライムは、食べやすいサイズにカットしてから、ポン酢をかけて食べるとおいしいって本に書いてあったわ!食べさせてぇ!試させてぇ!」
ところてんかよ。
「プギャアアアア!ボボボボ、ボクを食べるつもりでぷかぁ!?」
プヨン教授は我が身の危険を察知したのか、全力で施設内へ逃げ出した。
「ああ!待ってアタシのごちそう!!」
アリシアはよだれを拭きつつ、プヨン教授の後を追う。
「アリシアは行ったな…よし、レッキ!今の内に出発しようぜ!」
師匠が施設内を覗いてからジェットボート乗り場へ走り出した。
「いいんですか?彼女、あなたに会いたがっていたんでしょう?」
「ああ、いいんだよ!これ以上あんな奴といたら、蒼の騎士団所じゃあないだろうが!」
まぁ、そりゃそうだ。
「でも、蒼の騎士団の情報は?明日にもここの人達に聞いて見ようって決めたのは師匠でしょう?」
「う、…ど、どうしよう…。」
師匠は慌てる。
「あのぉ…蒼の騎士団の情報が欲しいんですか?」
クリボッタが話しかけて来た。
「!!何か情報をお持ちですか!?」
「ええ、実は、数日前、蒼の騎士団についての極秘情報を入手したんです。」
「!そ、その情報を詳しく教えてもらえませんか?」
「え?…分かりました。」
―午前8時45分―
「では、この資料をご覧下さい。」
クリボッタは施設の中に入ってしばらくしたら、何かの資料を持って来た。
「早くしてくれよぉ!アリシアが来ちまうだろぉ!?」
師匠はシルクハットを掻き毟る。
「申し訳ありません、どこにあったのか忘れてたもんで、この資料は化学研究施設“バイオテクベース”の情報です。」
「バイオテクベース、とは?」
僕はクリボッタに問いかけた。
「名前通りバイオテクノロジー、生物工学についての研究を担当している施設です。ここは過去に合成生物、“合成獣(キメラ)”等を作り出して、一時期話題には、なったんです。」
キメラを?そりゃ大した施設じゃないか。
「しかし、ここの教授、ドクター・ホウプラブが行方不明になってから、かなり格が下がり、蒼の騎士団と密会していると言う情報まで出る始末です。蒼の騎士団の実体は我々もすでに把握しています。蒼の騎士団と密会している、と言う事は何か悪事を企んでいるとしか考えられませんね。」
「なるほど…。」
「ドクターなんとかなんてどうでもいいだろ!とにかくそこに行くぞ!」
「そのバイオテクベースはどの方角にあるんですか?」
「え?この施設からだと、南西の方角に位置していますね、でも、ジェットボートで移動しても早くて4日はかかりますよ。」
「よ、4日!?」
僕は驚愕した。
「いくぞレッキ!」
師匠はジェットボートに乗り込んだ。
「ちょっと!何も考えずに行くのは危険です!大体、食料とか水とかどうするつもりですか!」
「あ、食料と水は兼ね備えてありますが…。」
余計な事を言うな。
「だってよ!さあ!行こうぜ!」
ハァ、しょうがない。
「本当に行っちゃうんですか?」
クリボッタは残念そうに言う。
「もっとお礼をしたいんですけど…。」
「結構です。僕達はやり遂げなくてはならない事があるので。」
僕は丁重に断った。
「急ぐぞ!あいつが来ちまう!!」
師匠は慌てながら僕を呼ぶ。
「それでは、失礼します。」
僕はジェットボートに乗り込み、次の目的地へ向かった。
悪夢の出来事が待ってるとも知らずに。
第8章へ続く。