第36章:カウントダウン
―3001年 3月3日 午後2時59分 ジョイジョイアイランド―
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ」
と、スチル。
「止まれぇぇぇぇぇぇぇ」
と、ロキ。
「待ちなさぁぁぁい」
と、アリシア。
「俺だけにぃぃぃぃぃぃぃ」
と、マシュマ。
「何がだぁぁぁぁぁぁ」
と、ロキ。
「おいでやすぅぅぅぅぅぅ」
と、フリマ。
「イヤ一番関係ないだろぉぉぉぉぉぉぉ」
と、スチル。
「説明しよう、キャプテン・ウェイバーは走り方がとてもカッコイイのだ。」
と、キャプテン。
「黙ってろウェイバー…って、うぉぉ!マジでかっこいいぞぉぉぉぉ」
と、ロキ。
「おい、あれ見ろよ。」
師匠が前方を指差した。箱舟が猛スピードで走っているではないか。
パンドラの皆さんが必死で後を追っている。
「どぉうしたんだぁオメー等ぁぁぁぁぁ」
師匠が走りながらそう叫んだぁぁぁぁ。
「おぉぉぉぉぉうぅぅ、シィィィィークゥじゃねぇぇぇかぁぁぁ」
と、ロキ。
風の音でまったく声が聞こえないので大声で叫んでいるのだぁぁぁぁぁ。
わかりづらいかしら。
「こっち方向にノアが飛んでいったんだぁぁぁぁぁぁぁ。今、俺とレッキで追ってるんだがぁぁぁ、箱舟も一緒に向かっているようだなぁぁぁぁぁぁ。」
うるさい会話の中、僕のケータイが鳴り響いたぁぁぁぁぁ。
「ハイもしもし。」
『レッキさんスか?クリスッス!』
「クリスさん。何故僕の番号を?」
そういや出発の準備してた時に番号教えちゃったっけ。
『大変ッスね。今そっちに向かっているところッス!』
「そっち?走ってるんですか?」
『自分にはそんな超人的体力はありませんよ…。あ、見えた見えた!』
―ぶおおおおおおん。
背後から爆音が聞こえた。見ると、大型のジープが走って来た。
「おぉ。」
サイモンさんによる運転らしい。かなりのテクニックだ。
「乗ってぇ!」
クリスが手を伸ばしてきた。
「師匠ぉぉぉぉぉぉぉ、お先に行ってますからねぇぇぇぇぇぇぇぇ」
と、僕。
クリスの腕を掴んで車内に飛び込んだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ?お前ぇ!ズルイぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
師匠の声も遠のいて行った。
「やれやれ…。」
なんとか乗り込めたが。
「ばッ!」
クリスの胸に顔がモロに。
「…。」
顔が真っ赤になる。
サイモンさんは気が動転しているのかハンドルを持つ手を小刻みに震わす。
ていうか、いつのまにかまたあのオレンジ色の仮面をかぶっているではないか。
「大丈夫ッスか?」
クリスの問いかけに適当に応じ、僕は後部座席に移った。
「ところで…ロゼオは?センネンは?…ミサは?」
あの3人がいないじゃないか。
「ロゼオは飛んでいくっていってたッス。センネンは別の通路から向かうらしいッス…ミサちゃんは、わかんないッス♪」
「はぁ!?」
僕は飛び上がった。
「ウン、途中ではぐれちゃったみたいでさ、ごめんね。でも、危険には巻き込めないだろう?」
サイモンさんが引きつったクリスの代わりに代弁した。
「ふざけないでください!この状況に迷子にさせとくこと事態が危険でしょうが!Uターンです!ミサを探しましょう!」
困惑する2人を必死にせかしていると、いきなり窓から手が伸びた。
「小僧、今はそんなあまったれた事を言っておる場合ではないぞ。」
センネンだ。バイクに乗りながら僕のむなぐらを掴んでいる。
厳しい目つきでそう言い聞かせる。
「あのノアという男が何をしようとしておるかわかるか?あの光線で国家機関を一掃しようとしておるのじゃぞ?」
「し、しかし…。」
センネンは厳しい目つきを緩め、優しい口調でこう言った。
「あのミサという少女は生命力に満ちあふれておる。きっと無事じゃ。そう信じよう。」
そして、サイモンに目を移した。
「丸頭、ゆけ。」
「ウン!」
サイモンさんはアクセルを思いっきり踏み降ろした。
センネンの乗り込むバイクは左方向に曲がって進んで行った。
「行こう、止めよう、ノアを!」
「ウッス!」
「…ええ。」
一方、リクヤは…。
―午後3時3分 広場―
「あらら…こいつは半端ねぇな。」
騎士団兵がゾンビみたいにワラワラ迫ってくるのだ。
「殺すよ。」
「殺すか。」
「殺すぞ。」
「殺すね。」
「殺すな。」
「殺すぜ。」
「殺すにょ。」
笑いながら騎士団兵は口々につぶやく。
「ケッ…。」
俺は巨剣を引き抜いた。
「バトルスタートってか?…野郎共…一発やらかそうぜ!」
俺はタバコに火を点けながらそう言った。
「おう!」
部下が銃やら剣やら握って走っていく。
「間違っても『殉職』はやめろよ。オメー等の死体を、セントラルまで持って帰る気はねぇかんな。」
「う――っす!!」
やれやれ、元気な奴等だ。
「司令官殿!」
背後から大声。
「ぎゃあ!」
ドレッドがニコニコしながら敬礼をしている。さて、殴るか。
「俺を脅かすな!」
―ズゴッ!
「ひでぶ。」
ベタな叫び声だ。
「お前も早く行け。俺は敵の軍勢の核を破壊する。処罰兵は通路を作れ。」
「ういっす!」
ドレッドはおもむろに上着を脱ぎ、黒いTシャツを見せた。
「何だテメェ、貧相な肉体見せんな。」
「違いますよ。久々に俺の本領発揮ッス。」
両腕と腹が奇妙に光りだした。
「ほぉ…能力紋か。」
しかし見た事もない紋章だ。
「“ピーチメント”三獣召喚!」
―ボボボッ!
両腕、腹から赤、青、黄の色の炎が飛び出した。
「うぉわっ!」
“それら”はドレッドの前にテンポよく降り立ち、人の形になった。
「久々の、登場。」
驚いた。青い炎がロトになった。
「腕が鳴るぜ。」
赤い炎はロクロになった。そして、
「総司令官殿、驚かせてすみません。」
黄色い炎がゴショガワラになってしまった。しかもそれぞれ前より若く見える。
ドレッドより5歳年下っぽい感じだ。
「総司令官殿、これが俺の力、“ピーチメント”です!こいつらは俺の部下に見えて実は俺の召喚獣であり、俺の部下であり、俺の召喚獣であり、ところがどっこい俺の部下で―」
「わかりにくいわ!」
―ドゴッ!
「あべし。」
ベタな叫び声だ。
「まぁいい。その自慢の能力で敵を一掃しろ。」
適当に手を振った。
「あいさぁ!行くぞロト!作戦Dだ!」
ドレッドは腕を縦に振る。
「な、なぬ!?作戦D!?」
俺はまたも驚く。こいつは作戦なんて考えてやがったのか!
「ドレッド、作戦D…って何?」
「バカだなぁ、作戦D(大体は適当にやっとけ)だろうぉが。」
「ムチャ振りかぁい!」
―ドゲシャア!
「ぴぎゃぼぉ。」
ベタじゃねえ叫び声だ。
「もういい!とりあえず目前の敵を倒しまくればいいんだよ。」
「な、なるへそ!」
「早く行けやクソ坊主がぁぁぁ!」
俺は巨剣で地面をぶっ叩いた。
「は、はいっ!」
ドレッドとゆかいな仲間達は慌てふためきながらも走って行った。
「バカが…。」
俺はタバコを吐き捨て、脚で消した。
「俺も行くかね。」
そして、軽く数十メートル飛んで軍兵の一人を袈裟に斬った。吹き出る鮮血。ベタな出方だぜ。
「テメエ等、全員処刑だ。」
「ふざけるな。」
軍兵の一人が笑顔でマシンガンを乱射してきた。俺はそれらを巨剣で弾いてみせた。
「何だと?」
「かっ斬る。」
―ザンッ!
転がり落ちる軍兵の首。気にしてられるか。
「司令官殿!危ない!」
部下の一人が俺に抱き付いた。
―ズバッ!
即座にそいつは軍兵に斬られた。
「ひゃははははは」
軍兵は大笑いでもう一度剣を振り上げ、
―ザンッ!
俺が真っ二つに斬り殺した。
「おい!おい!しっかりしろ!」
血を吐くその部下、ルーデという男は震える声でこう喋った。
「司令官殿、私は大丈夫です。私に構わず早く、軍兵達を倒してください…。」
か細い声だ。
「…ふざけんな。」
「え?」
「しょーもねー部下の分際で俺に指図すんな!ベタなセリフ並べやがって…お前は即行で救護班に受け渡す。」
俺はルーデを背負い、走り出した。
「お前、故郷に家族がいんだろ?」
「は、はい…妻と子供が2人います。」
「なんてベタな家族構成だ。じゃあ一層死ぬな!…お前には帰るべき場所があんじゃねーか!奥さんと息子を泣かせたら俺がお前をぶん殴るからな!…苦しむのは俺だけで充分だ…」
「え…?」
「救護班、けが人だ。絶対助けろ!」
ルーデを受け渡し、俺は再び戦場に戻った。
一方、レッキ達は…。
―午後3時15分 ???―
「ここはどこだろう?」
サイモンさんはジープから降りてあたりを見回した。
「湖…ッスか?」
広い湖だ。おおかた、水上パフォーマンスを見せる場なのだろう。
「ん?…湖?…水!?」
これはマズイ。ノアにとっては絶好のバトルフィールドじゃないか。
「皆さん、ノアを探してください、あいつは水を使って戦う奴なんですよ。」
「ウン、それは僕もわかるよ、もう予備を壊されたくないからね。」
それ、予備か。
「あ、見て!あそこ、あれノアじゃないスか!?」
え?僕は湖の中央を見た。
「カカカカカカ。」
ノアが笑いながら湖の水を吸い上げている。
「あのやろう、何をする気だ…。」
僕はBMを取り出しながらつぶやいた。
「カ」
ノアは引きつった笑顔で硬直した。
「御主等、伏せろ!」
センネンがバイクを乗り捨てて走って来た。
僕は近くにいたクリスさんを抱きしめて地面に伏せた。瞬間だった―
じゅばばばばばばばばばばばああああああああああああ
膨大な量の水圧弾が頭上をかすめていった。
湖の手すりスレスレは根こそぎ持ってかれた。
「カァァァ…。」
「アイツ、まだ攻撃する元気があったのか…っ!!」
サイモンさんは槍を握りしめた。
「ヤバイ、今の攻撃は向こうまで飛んでいった…師匠達が巻き込まれたかもしれない…ッ!」
「すぐに止めるか。箱舟は無理だがノアは倒せるはずじゃ。」
センネンは腕を組みなにやら唱え始めた。
「ワシも久々に魔法を使ってみるか。火属性魔法、“赤絨毯”」
―ボッ!
炎がじゅうたんの形になって固まった。
「ホレ、乗れ。」
乗れじゃない。湯気が上がってますけど。
「これは上級の造形魔法(火属性なら炎の形を変える力。)だね。凄いよ。ウン。」
凄いじゃない。湯気が上がってますけど。
「そんなに熱くないわい。45度で保っておる。」
「充分な熱さじゃないスか。」
「堅い事言うでないわ!…ったく、最近の若者には根性が足りんというか…ブツブツ」
結局乗らされたわけだが。
これでノアの元にまで向かえる。ちょっと熱いけどね。
「ノアめ。覚悟しておけよ。出発じゃ!」
センネンの掛け声と共に絨毯は高速で飛び出した。
「アアン!?」
ノアが気付いた!
「まぁたテメェか金髪ぅ。さっきの『ラッキー勝利』をもう一度勝ち取ってみろやぁ…水圧指弾、“浮遊砲台”!」
プロペラの付いた砲台が3個、ノアの手から飛び出した。
―ダダダッ!
砲台から水圧弾が発射された。
「ノワァ!」
絨毯に穴が開いた。
「ヒエェッ絨毯なだけに“じゅうたん”じゃないよ!」
クリスが悲鳴を上げた。冗談とかけようとしたらしい。シャレになんねぇ。
「ムゥ…そもそもコイツは炎の絨毯じゃ。水にはこれでもかってぐらい弱いぞ。」
砲台はこっちに迫って来た。これはマズイですね。
「レッキ、あれを撃ち落せるか?」
「やってみましょう。」
BMの弾を痩身し、僕は砲台を見つめた。めまぐるしく動いている。
いつ水圧弾を発射するかわからないぞ。
「早すぎて見えないよ。ウウン、レッキ君撃てるかい?」
サイモンさんは不安そうに言った。安心させましょう。
「…7秒時間をください。」
―ダンッ!
砲台が発射した水圧弾をサイモンさんの顔の目前で撃ち落し、即座に砲台のプロペラの付け根の部分に弾丸を放った。1秒経過。
続いてもう一機の砲台を撃墜させた。落ち行く砲台から16発の水圧弾が連射されたので、片手の銃で10発の水圧弾、もう片手の銃で6発撃墜。ここまで3秒経過。
後一機か。砲台は手際よく水圧弾を発射してくる。BMの銃弾を片手で痩身し直し、最後の銃弾を砲台に命中させた。砲台は残念そうに湖に落っこちた。2秒経過。合計6秒。新記録だ。
「…え?」
クリスは目をパチクリさせた。
「もう終わり?」
「カカ…。」
ノアは目を細めて僕を睨んだ。
「普通の金髪青年だと思わないように。」
「…わかった。カカカ。」
ノアの目つきがガラリと変わった。
「俺の恐怖を思い知れ。」
両腕が透明になった。いや、水になった?
「水圧の力で全て断ち切ってやるじゃん?“水圧清龍刀”」
―ジュバババッ!
ノアの水腕が高速でうなり始めた。
「さすがにあれは撃ち落とせませんね。」
「撃ち落とせるレベルかい?」
その大きさ、威力共々半端じゃない。
「フゥ…仕方ない神技を発動させます。」
神技でもはたして止められるのか…。
「死ねぇ!」
「神技神椀、手枝絡!」
水圧の剣が当たる寸前にノアの両腕の“付け根”を押さえつけた。
そこだけが水圧に包まれていなかったからだ。
「カカッ!」
「サイモンさん!」
「よしっ!」
サイモンさんは槍を投げつけた。
「カカァ、重圧増加!」
槍は再び落っこちてしまった。
「ウンン、予備があってよかった。」
また、予備か。
「この野郎が。水圧の恐怖をおもいしらせてやる。」
ノアは再び両腕を湖に向け、水を吸い始めた。
「グッ…。」
「これじゃあほぼ永久的だよ。」
サイモンさんがうなる。
「ま、待て、湖の様子がおかしいぞ!!!」
センネンが叫んだ。
「水がなくなっておる!」
「センネンさん、それはノアが水を吸い上げているだけで…。」
クリスが呆れてそう言おうとしたが、下を見た途端顔色が変わった。
「どうしたんですか?」
「水が、干上がっていくッス!」
ノア自身も青ざめている。
「カカカカァ!?」
「どうなっているんですか!?」
「ギガ、クールだぜ。」
遠くでロゼオがニヤニヤ笑っている。
「ロゼオ!」
「き、貴様、何をしたのだ!?」
ノアが歯をむき出しにしている。
「湖の水を海に流したんだよ。ホラ、そこの水の循環室でちょこっといじってやったのさ。」
プールによく付いてある機械を指差した。
「お前の思い通りになると思うなよ、ノア。」
「ぐぎぎぎ…。」
ノアはとうとうブチギレた。
「殺してやる!みんなまとめてなぁ!」
―ズズズズズズズズンッ!
僕達は湖の底にまでめりこんでしまった。
「煎餅になれ、クズ共がぁ!!!」
まずい…意識がもうろうとしてきた。その時だった。
「レッキ!みんな!」
ミサの声だ。ミサが白く光っている。同時に重圧がなくなった。
「何ぃ!?」
ノアは腕を何度も振っているが、能力は発動されないとみた。
『ミサ、君は一体…。』
そう思いながらも、僕は両腕を組んだ。
「神技神腕、下降掌!」
ズンッ
ノアの身体に重圧がかけられた。
「カァアアアアアッ!」
ノアは負けずに重圧から逃げ切ろうとしている。
「俺が重力に負けるかぁぁ…重圧は全て俺の能力なんだぁぁぁぁ」
凄い力、血管が切れそうだ。だが…ッ!
「ダァ―――――ッ!!」
僕は負けられない。
ズズッ!!
重圧が爆発したかに見えた。
ギャアアアアアアアアアアアッ!!
ノアは乾いた湖の底にまっさかさまに落ちて行った。
「逃がさん!!!」
僕は墜落中のノアめがけて突っ込んでいく。
「神技神腕、激震打!」
持てる全ての力を出し切った渾身の激震打だ。
喰らえ!!
「ま、待てぇ!え、円満に話し合いで解決しようじゃ―」
「うるさぁい!」
ズガッ!
「ブゴォ…。」
ノアは顔面にモロにヒットした激震と共に地面にめり込んだ。
「やれやれ、お話になりませんね。」
―午後3時19分 湖―
「か、か…ぴ。」
ノアはグッタリとしたまま息をしている。
「まだ生きているのか。」
驚きを越えて呆れてしまった。
底は完全に干上がっている。水のみの字もない。
「レッキィ!」
ミサが抱きついて来た。
「ありがとう、ミサがいなきゃ殺されてたよ。」
「え?…何の事?」
ミサはキョトンとしている。知らないのか?
「おぉ――――い!テメェ等ぁ―――ッ!」
リクヤの声だ。
「無事のようだな。軍兵共はたった今壊滅した。俺達の勝利だぜ。へっへっへ。」
鼻をこすりながらリクヤは笑顔でそう言った。
「そうですか…フゥ…。」
安心したらまた腰が抜けた。
「レッキ君!」
「レッキさん!」
サイモンとクリスが支えてくれた。
「ニャハハ、さすがじゃ若僧、見直したぞ。」
センネンも腕を組んだまま笑っている。
ロゼオは手すりに腰掛けアメを舐めていた。
「こいつら凄いな。超人クラスの実力者だ。」
リクヤは感心しながらそう言った。
「いい仲間を持ったな。」
僕の肩をポンと叩き、リクヤは忙しそうに去って行った。
「…やれやれ。」
僕はため息をついた。
「アメ欲しいか?」
ロゼオがアメを差し出した。
「いらな…いや、もらっておきましょう…。」
軽くほおばった。リンゴ味。
「それで、コイツはどうなるんじゃ?ワシは刑罰については幼児以下でのぉ。」
センネンがノアを突付きながらそう聞いてきた。
「多分、蒼の騎士団についてありったけの情報を搾り出されて、首チョンパ。処刑されるッスね。大量殺戮をやったんス。当然ッスね。」
クリスはサラリと説明した。
「カカ、そいつぁイヤだな。」
ノアの目が開いた。
「え!?」
サイモンさんが飛び上がった。ノアの顔を見つめていたからだ。
ノアは血走った目つきで起き上がった。
「カカカ、俺の計画はこれで90%はパアだ。オメガとガンマは死に、軍兵もたった今壊滅。残ったのは、そう、箱舟のみ。実は…箱舟は歩く時限爆弾だ。地球に大穴の開く程のな☆俺が死んだと同時に爆弾のスイッチが入る…絶対に止められんぞ、カ、カカ、カカカ、カカ。」
「ナッ…!?」
とんでもない事態になりそうだ!
「どちらにしろ俺は捕まり殺される。そんな目に遭うぐらいなら…」
ノアはこれまで見た事のないおぞましい笑顔を浮かべた。ミサが目の色を変えた。
「レッキ、あの人を止めて!ミツル兄さんみたいな感じがする!」
「えっ!?」
「蒼の騎士団、万歳♪…カカァ☆」
ボンッ
ノアが爆発した。飛び散る肉片。
「…なんて奴だ…。」
ロゼオがアメをポトリと落とした。
「シークさんにすぐ知らせるッス!ノアの言う事が本当なら、こんな施設、一瞬で吹っ飛ぶぞ!!!」
カウントダウン開始。爆発まで、後10分。
第37話へ続く