第4章:プヨン教授と仲間たち
―3000年 1月1日 午前9時12分―
「さあ!着きましたよ!ここが海上自然愛護都市、トロピカル・ラグーンです!」
「ウハー!スッゲエエエエエエ!!!!」
師匠は幼稚な感想をのべた。
いやはやこいつは驚いた。目の前にあるのは緑に包まれた“巨大な島”だった。だがその真ん中にはかなりでかい鉄塔が4本、その中心に更にでかいタワーが1本。
「凄いでしょ。この緑の島には様々な絶滅危機不思議生物、“珍獣”が保護されています。」
「おぉ!!珍獣か!」
黙れ。
「我々はこの珍獣の生態を分析して絶滅危機から救うため、努力を積み重ねているんです。」
フムフム。
「そしてこの島に建つ4本の鉄塔こそが情報を集めるためのアンテナ!!」
「おぉ!アンテナか!」
黙れ。
「プヨン教授はこのアンテナの設計を1人でやり遂げられたんです。」
へぇ、たった1人で設計を。
「どう言う情報を集めてるんですか?」
質問してみた。
「ふふふ、いい質問ですね。このアンテナで集められる情報は珍獣の絶滅危機区域や、政治的情報、経済情報に証券取引情報、等の詳しい情報を検索する事が出来ます。」
へえ…勉強になった。
「テレビとか見れるのか?」
!?…こんのアホンダラはもう…。
「師匠、そんな間の抜けた質問しないで下さい。生き恥かいてしまうじゃないですか。」
本気で。
「だってテレビは見れないと困るだろ?ニュースとか歌番組とか。」
「テレビくらい見れるに決まってるでしょ。こんな高性能なアンテナがあるんだから。」
「テレビ!?そうか!なにか足りないとは思っていたんだ。」
あ、付いてなかったんだ…。
「真ん中の巨大ビルは我々の研究施設です。中は後のお楽しみです、さあ上陸しますよ。」
クリボッタの黒ブチめがねがまたキラリと輝く。
―午前9時15分―
僕と師匠、そしてクリボッタは珍獣生息区域の島に上陸した。小さい港の奥に巨大な鉄製の扉が2つ立ちはだかっていた。
クリボッタはいつの間にかジェットボートから降り、扉に直行していた。
「ちょっとばかし待ってて下さい。今、扉開けるんで。」
そう言うと、なにやらボタンを押し始めた。
―ウイィィィィィン…。
大きな機械音がして、扉は開き始めた。
「ようこそ、トロピカル・ラグーンへ…。」
―午前9時17分―
「…。」
「…。」
僕も師匠も中を見て黙った。扉の中は真っ白で無機質な空間が広がっていた。中には沢山の白衣姿の人がめまぐるしく動き回っている。明らかに外と違う。
「どうしたんです?2人共…さぁさ、中へどうぞ。」
クリボッタはジェットボートの入り口からそう呼びかけた。
「あの…、外の風景と中の風景が全然違うんですけど…。」
恐る恐るそう聞いた。
「へ?あぁー!そうそう!言いませんでしたっけ?珍獣生息区域は島の“中”にあるんです。」
言ってねえよ。
「ク、クリボッタさん!!」
突然の大声にまたビックリ。白衣の人達が20人ほど、どっと押し寄せてきた。
「き、君達ぃ!落ち着いて!落ち着きたまえ!」
クリボッタは慌ててそう叫んだ。
「こ、今回のスピードヒールの売れ行きはどうでしたか?」
一同が沈黙する中、僕と師匠は静かに降りた。クリボッタは笑顔で答えた。
「…売り切れました!」
同時に、
「ヨッシャァァー!!」
でかい歓声が上がった。
―午前9時20分―
「ワァ―ッソイ!ワァ―ッソイ!」
「あの子達は研修生なんです。スピードヒールのテストを行ったのも私と彼らなんです。」
「ワァ―ッソイ!ワァ―ッソイ!」
「なるほど、それであなたが胴上げされているのは分かったんですが、なんで僕達まで。」
「ワァ―ッソイ!ワァ―ッソイ!」
嬉しそうに研修生達はクリボッタと僕と師匠を胴上げしている。
「さあ、なんででしょうねえ。」
「ワァ―ッソイ!ワァ―ッソイ!」
「悪くないなあ。ハッハッハァ、テンション高いなあこいつら、ハッハッハァ」
笑ってる場合か、こいつらもあんたのテンションにはかなわねえよ。
「ワアァァァァァッソイ!!ワァァァァァッソイ!!」
―午前9時25分―
5分間もの間理解不能な胴上げに付き合わされ、今ようやく解放された。
ウップ!ああ気持ち悪い…。
現在僕と師匠は入り口を越え、中のソファーで横になっていた。するとクリボッタが「はい、どうぞ。」とプラスチック製の緑色のカードを2枚渡してきた。
「なんだこれ?」
師匠がしげしげとカードを見つめる。
「それはグリーンパス!色んな施設を出入りするのに必要なカードです。それが無いとここから先は入れませんからね、本来なら僕みたいなプヨン教授の助手しか持つ事が出来ないんですがね、あなた方は特別です。」
「怒られませんか?」
「まあ、プヨン教授は『気に入った人は中にいれてあげなさい。』とか言ってるからいいでしょ。」
な、なんて軽い教授なんだ。
「あ、ちなみにそれを無くすと再発行は出来ませんから、あしからず。」
やっぱりどいつもこいつも変人ばかりだ。
―午前9時30分―
「さ、まずは珍獣保護室へ参りましょう。」
クリボッタは足早に歩き出した。僕達も慌てて歩き出した。
歩く中、サイド側を見ると数百台のコンピューターをいじっている研究員、空中に浮かぶモニター、何かの設計図の立体映像が見えた。
「大したもんでしょう。あれは設計図を詳しくして資料にまとめたり、新たな設計図を作り出すための部屋です。」
クリボッタは歩きながら早口で説明した。
続いて、30人以上の研究員がなにやら話し合っているのをガラス越しに見た。
「あれは開発した発明品を商品化出来るか会議を開いているんです。スピードヒールもこの会議で合格しました。」
またまたクリボッタが早口で説明した。
興味深い部屋はまだまだ続く。
「研究、開発関連の施設は真ん中のビルです。まあその中に入るのはもう少し待ちましょう。」
―午前9時35分―
ようやく珍獣保護室に着いた。窓も無い大きな扉があり“珍獣保護室”と書かれている。
「ここからはこの無菌服に着替えて下さい。」
そう言うと、クリボッタは白い帽子と白いブカブカの服を差し出した。
「き、着替えるのか?」
そう言ったのは師匠だった。
「あのさあ…。俺だけ頭は大きめの無菌帽を…。」
「えぇ!?…別に…あります…けど…。」
クリボッタはやっと師匠の事で驚いた。シルクハット頭を見て最初にビックリしない方がおかしい。
―午前9時55分―
20分クリボッタは我々を待たせた。
「待たせてしまってすいません、ハイ!シークさんの無菌帽!」
と通常の1,5倍の大きさの無菌帽を持ってきた。
「サンキュー!」
師匠は大喜びで無菌帽をかぶった。
まったく、どこまで人を困らせれば気が済むんだ。
僕と師匠は無菌服を着て、ダブダブ姿になって未知の空間に足を踏み入れた。
―午前9時56分―
「…凄い。」
「本当に“中”か?ここ!」
中はまるで別世界だ。森林に囲まれ、岩山が立ち並び、迫力ある滝が音を立て流れ出ている。おまけにそれが島の6割をしめている。
「珍獣達に都会になじませないようにするため自然型のドームにしたんです。これもプヨン教授の設計です。」
へえ…たいしたもんだ。
「そのプヨンって奴、凄い人だなあ。」
「あ、いや…彼の場合、“人”っていうのかなあ…。」
師匠が“はあ?”と言った直後、
「ウイーッス!クリボッタじゃんよぉー!」
師匠と同じくらいの陽気な声が聞こえた。見ると、ニンマリとした顔の無菌服男がスキップしながらこっちに向かって来た。
「珍獣か?」と師匠。
んな訳あるか。
まあ、気持ちは分かるが。
「ギッサさん!今日はあなたが珍獣の観察ですか?」
とクリボッタ。今度の名前はサギか。
ギッサと呼ばれた非常に親近感の沸く男は「その通りさー!」とまた叫んだ。
師匠以上、いや、同レベルのテンションだ。
「紹介します。この人はギッサさん、プヨン教授の助手2号です。」
「よろしくぅ!!クリボッタ!この人ら誰?」
「はじめまして、僕はレッキと言います。クリボッタさんとはクストポートで知り合いました。そしてこちらは」
「シィィィィク・レットだ!独身!現在彼女募集中!!」
そこまで聞いてねえよバカ。
「ふーん…、クリボッタ!勝手に部外者入れていいのか!?」
「プヨン教授もいいって言ってましたし、いいでしょ。」
「あ、そうだな。」
面倒な事はほっとくタイプだな。
「ええっと、ジョニーとスティーブンだったっけ?」
全然違う。
「レッキとシーク・レットです。」
僕はばかばかしいと思いながらも、訂正した。
「そうそれ、ここは凄い施設だからね!見学しまくってちょうだい!!」
変なのがまた増えた。
ギッサは、まだまだはしゃぐ。
「珍獣達は臆病だからね!なるべく大声は出しちゃダメだよぉーん!!」
その前にあんたの大声をなんとかしろ。
―午前10時02分―
奥に進むにつれ、ギッサもクリボッタも口数が少なくなり、気が付くと2人は真面目な顔になっていた。物音1つしない静けさだ。
「シィッ!お2人さん!あれを御覧なさい!!」
ギッサが茂みに隠れて岩山を指差す。
「!」
「何だあれ!」
僕の目に入ったのは奇妙な生き物だった。
モコモコの毛に覆われ、見事な円形、薄茶色の身体、小さい目とプクッと突き出た黒鼻、テニスボールの様な丸い4本の足、そしてかなり短い尻尾、なんだか、バレーボールにテニスボールをくっ付けた様な生き物だ。
「あれは団子熊!獣系の珍獣です。」
とクリボッタ。
尻尾を振りながら「ムフィーン」と鳴く様はとても愛くるしい。
団子熊は1頭から2頭、5頭、10頭とどんどん増えてきていた。
続いて、森林に入ると樹木に擬態していた巨大昆虫「ハヤシモドキ」に遭遇した。樹皮と同じ色の甲殻、長い触角、黒い眼、そして巨大な偽大木が背中から生えている。ピクピク触角を動かしている様はとても不気味だ。
「ハヤシモドキは樹液を吸いに来る昆虫を食べる珍獣でしたが、最近は昆虫も警戒心が強くなって狩が難しくなって減少して来ちゃったんですよ、そこで我々が5,6匹ほど保護して、絶滅危機から救おうと生態を研究しているんです。」
クリボッタは小声で説明した。他にも興味深い珍獣は沢山いた。
巨大なナメクジ「象ナメクジ」、人の顔の様な模様と肌色の羽根の「人面テントウ」、異常なほど首の長いウサギ「ミコシウサギ」、鋭い角が生えている山猫「鬼猫」、全て今まで見た事の無い生き物ばかりだった。
―午後12時34分―
かれこれ2時間ちょいは保護室を歩き回った。クリボッタもギッサも全く疲れてない様だ。研究員の体力は計り知れない。
「おっと、お2人さん!あれが1番レアな珍獣だよーん。」
ギッサが手招きする。見ると、そこには美しい鳥が水を飲んでいた。
その鳥は鶴の一種に見えたのだが、全身が金色で覆われ、まばゆい光を優しく放っている姿は何か別の種類に見える。僕も師匠も思わず見とれてしまった。
「あれは黄金鳥!世界で1番珍しく、絶滅危機にあった珍獣です。見て下さい、あの美しい光。心が洗われます。」
クリボッタは細い目を更に細めた。
黄金鳥は翼を広げた。翼は虹色の複雑な模様だった。
「キロロロロ!」
不思議な声をあげ、黄金鳥は飛び去っていった……。
―午後12時54分―
未知の生物観察も終え、僕と師匠、そして、クリボッタとギッサは保護室から出た。このブカブカ無菌服ともおさらばだ。
「楽しんでくれたかなあ!?」
ギッサが叫ぶ。
「マジ凄かったあぁ!」
師匠が叫ぶ。
「この珍獣保護室は俺達の自慢の1つなんだよぉーん!」
ギッサが姿を明かした。
無菌帽を取ると、オレンジ色のスポーツ刈りがかなり目立つ。30代後半あたりに見える顔はぶしょったく、小じわが目立ち、アゴにはうっすらひげが生えている。体型は言っては悪いがかなりのデブだ。白衣を着ている所はクリボッタと同じだが、中に着ている緑のTシャツには自分のデブを強調する「ファット!」の文字が記されている。
「さあさあ!次はどこに行くんだぁ!?クリボッタァァァ!」
ギッサのテンションは師匠のテンションとほぼ互角だ。
「中央のビルに向かう。プヨン教授に会わせてあげるのさ。」
―午後13時13分―
「中央に行く前に腹ごしらえをしなくちゃな。」
そうギッサに誘われ食堂まで向かった。食堂では数十人の研究員が食事をしている。研究員達はクリボッタとギッサを見ると、「あ、クリボッタさん、ギッサさん!」「クリボッタさんだ!」「ギッサさんだぜ!」「こんなとこに来るんだぁ。」とざわめいた。
「ここに入るのも5年ぶりですよ。」
「オレっちは10年ぶりだよーん!」
テーブルに座ると自動的に料理が出て来た。大した設備だ。ハンバーグステーキとライスだ。
「うまそう!」
そう叫ぶと師匠はシルクハットの“ふた”を開け、皿ごと料理を中に入れた。シルクハットがグラグラ揺れる。
「ムグモガッうまいうまい。」
この食べ方はもう見飽きた。クリボッタは目を丸くして口に入れようとしたハンバーグステーキをポトリと落とした。
「ナイスリアクション。」
僕はかるく親指を立てる。
「うはぁー!おんもしれぇー!なんだよぉ!その食べ方ぁ!!だぁはははははぁー!!ぎゃははははは!!ヒーヒー!!」
ギッサはミシミシ言って苦しそうな椅子の上で笑い転げる。
―午後13時45分―
「プハァー、食った食った。」
師匠は腹をさすりながら歩いている。まさに歩く生き恥だ。
「さっき助手3号のキッソウさんを呼びました。中央のビルへの鍵は今は彼女しか持ってないですからね。」
クリボッタは携帯を片手に歩いてきた。すると、
「探したれすよ。もう!すぐにどこかに言ってしまうんれすからあ。」
女性の声が聞こえた。早くも変人の気配。“れす”っておい。
「あら、あなた方れすねぇ。クリさんが言ってたお友達は。」
そうれす。
「私、プヨン教授の助手3号のキッソウれす。よろしく。」
キッソウは20代後半あたりに見える。茶髪のおかっぱには水色の髪留めが付いている。少し痩せた顔には、巨大なめがねをかけている。レンズの大きいめがねは少し重そうだ。白衣の中は長袖の白トレーナーと黒のミニスカート、と言うシンプルな服装だった。
「短けぇなぁ。」
師匠が数秒彼女のミニスカートを見つめていたので軽くひっぱたいてやった。
「プヨン教授は忙しいので、開発風景を見るだけれすよ。」
「はい。」
「えぇー!何でだよぉ!」
師匠が叫ぶ。
「何でって…プヨン教授はめったに部外者と話したりしないんれす。」
「ええぇーでもよお…。」
ああもう。
「師匠、彼女の言うとおりです。クストポートで会っただけで、ここまで案内してくれたんですよ。開発風景を見せてくれるだけでもありがたく思いましょう。」
「…分かった。」
ハァ、これではどっちが師匠か分からないな。
「すいません、我々も会わせたかったんですが。」
クリボッタが申し訳なさそうに頭をかいた。
「シークはおもしろい奴だったから教授にも見せたかったなあ。」
ギッサはつまらなそうに腕を組んだ。
―午後14時07分―
僕と変人4人は中央ビルへ通じる特殊な通路に向かっていた。
「何だこりゃ。」
師匠は驚く。
それは確かに通路だった。が、その通路はまるでパイプのように円形で、中央に向かって丸い空間が続いていた。
「ここからはラインボールで移動します。」
クリボッタがそう言うと同時に円形通路上を白色の球体が猛スピードで走って来た。球体はクリボッタの前で止まった。
「う、浮いてる。」
球体はレールと反発する様に浮かんでいた。
「ラインボールは磁力の反発力によって浮上する事が出来ます。」
クリボッタは急いでいるのか早々と説明を終え、グリーンパスを球体に当てた。機械音がして円形のドアが開く。
「さあ、もうすぐですよ。行きましょう。」
クリボッタ、ギッサ、師匠、僕、キッソウと乗り込み中央へ向かって行った。
―午後14時08分―
中央ビルには透明な個室が数十個あり、中にはコンピューターをいじる人型ロボットが沢山駆け巡っていた。
「あのロボット達は設計図からデータをインプットして、発明開発を助けるんです。さ、プヨン教授はこの先です。」
クリボッタがせかす。無機質な通路が長く続き、その先には大きく、“プヨン教授専用開発室!部外者は入るな!”と書かれていた。もの凄く入りにくい。
「気にしなくてもいいですよ、プヨン教授はジョークが大好きなんです。」
クリボッタは笑顔で話す。ジョークはこいつらのキャラだけで十分だ。
中に入るとすぐに下に降りる階段があった。下を覗くとロボットアームやモニターが取り付けられた部屋があった。
「多分プヨン教授は下にいますよ。ばれない様に見物して下さいね。」
クリボッタは小声で話した。すると、
「おやおやぁ、あんたらは仕事サボって部外者の案内かあ!?」
怒りの混じった声が響いた。
「わ、わ、わ!リンスさん!静かにして下さい!」
クリボッタはかなり慌てる。リンスと呼ばれた男は30代後半あたりの年齢で、紅色のボサボサ頭をしている。目の下には大きいクマがある。
「サボってないれす。設計の図面を作成してたんれす。」
「そうだよ~ん!オレっちだって…あぁ!何もしてないや!ダハハハ!」
ああ、ますます騒がしい。
「なんかいやな奴だな。」
師匠がひそひそ声でささやく。
「おい!あんた俺の事“いやな奴”って言ったよな!!」
あらら地獄耳。
「ここはあんたら一般人が入れるとこじゃないの!とっとと出てってくれ!シッシッ」
リンスはあっち行けと言わんばかりに手を振った。
「何だとぉ!一般人なめんなよコラァ!」
師匠が喧嘩腰になった。
「あ!ドクター・シュノれす!」
キッソウが僕に手招きをした。ドクター・シュノ?
「ほらほら!あそこれす!」
ガン付け合ってる2人は無視して僕は下を覗いた。
な、何だあいつは…。僕が見たのはど派手なアフロヘアーの50代のおっさんだった。紫色のアフロヘアーにはサングラスがかけられている。何でか知らないが顔の鼻は真っ黒に染めてあった。白衣の下には黒のシャツと青いジーンズを着こなし、そのジーンズには鎖を引っ掛けてあった。
かなり現代ぶった服装だが、はっきり言って似合わない。
「彼はシュノーケル・ハヤリスキーれす。プヨン教授の親友で、研究、開発も彼とプヨン教授で成り立っているんれす。」
へぇ~あんなアフロがねえ…。
「ヒヒヒヒ…変な頭だろぉ?イヒヒヒ!」
ギッサが笑う。ドクター・シュノは何か話してる様だ。
「まったく!研究材料をケチられるかもしれないと、助手達が言っておったぞ。助手にまで疑われるとは情けないわい。」
誰かと口喧嘩をしてるようだ。
「ケチで悪かったでぷね!それにボクは節約するためにちょこっと研究材料を削っただけでぷよ!」
何だこの声、子供の様な声だが少しエコーがかかる様に広く響く声だ。
「今の声がプヨン教授れす。」
変な声だ。2人の口論は続く。
「それがケチだと言っとるんじゃ。」
「ニャップ!…とにかくボクはケチじゃないでぷよ!」
あっ誰か出て来た。
「…!?」
僕は目を疑った。そこにいたのは水色のおかしな生き物だった。背はひざ下程度しかなく、目は大きく赤く光っている。鼻は無く、唇は大きく飛び出ている。半透明の水色の身体の外には一応白衣を着ているようだが、その内側には濡れない様なゴムスーツを着てる様だ。歩くごとにタプン、タプンと水風船がバウンドする様な音がする。
「何ですか?あれ…。」
僕は静かにキッソウに聞いた。
「彼がプヨン教授れす。人では無くて、純粋のスライム種族れすよ。」
スライム…。正直、“ド○クエ”のイメージしかないから、かなり驚いている。
「スライムだからってなめちゃだめだよん!あの人がここ“トロピカル・ラグーン”の社長兼、研究、開発総合教授なんだよーん!」
ギッサは満面の笑みで僕に言う。ハア…驚きの連続だよ。
「さあ、プヨン教授を見たんれすから、あなた方はここで…。」
―ビィ――――――ッ!!
突然サイレンが鳴り響く。
「何?なんれすか?」
キッソウは飛び上がった。
「火事か?大変だよーん!ダハハ!」
ギッサは能天気に笑う。クリボッタは一目散に鉄塔へ走る。
「皆!鉄塔からだよ!早く!」
師匠はリンスとまだガン付け合ってる。その時、放送が入った。助手4人は放送を聞くと顔がひきつった。
「えー、プヨン教授殿、“処罰機関”がお呼びだあ!今すぐ来い!」
第5章に続く。