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第40章:12MONTH

―3001年 3月7日 午後10時49分 グランマウンテン付近―

「着いたぜ。ここがグランマウンテンだぜ。」

リクヤが巨剣を背負って降りる準備を始めた。
夜、という理由もあるのだが…山全体は暗黒に包まれている。妙な殺気が立ち込めまくる。

「覚えている…覚えているぞ…そうだ…僕はここから脱走したんだ…ウン…。」

サイモンさんも記憶が戻ったらしい。

「…。」

僕はBMを握りしめた。

「待っていろよ、ミサ…。」

絶対に助ける。ミツルとの約束だからな…。

―午後10時53分 グランマウンテン付近 森林―

「よし、班にわかれよう。一番部隊は…アクマン、ドレッド、ニタリ―」

リクヤが班分けを始めた。

「お前達も処罰機関と同行した方がいい。リクヤはアホだが戦略を練る天才だ。従うのが利口だぜ。」

師匠が腕組みをしてそう言った。確かにここは未知の領域だ。山のふもとでも、森林が生い茂っている。
ノアの時は広い空間だったので楽に戦えたが、こんなに障害物が多いと…戦いの知識はリクヤの方が上だと思える。

「おっしゃ、俺達も行くぞ。俺、レッキ、サイモンと、クリス、センネン、ロゼオの2班に分かれるぞ。」

リクヤは適確に指示を出した。

「いいか?作戦はこうだ。蒼の騎士団のアジトは国家のカメラの確認によると二つの山の間にあるんだ。おまけに谷底に高圧なバリケードか設置されてやがる。クリスチームの任務はソレの破壊だ。ジョイジョイアイランドでの戦いから推測するに、センネンの属性は俺と同じ炎。クリスは風、ロゼオは血だ。この内、火属性魔法と風魔法を結合させると巨大な“即席爆弾”が作れる。」

彼の説明によると、派手な化学爆発を起こす寸法らしい。

「それをロゼオに破壊してもらうってわけだ。理解できたな?…んでもって、俺達リクヤ“様”チームの仕事はクリスチームの援護だな。」

“様”だけ余計だ。

「敵の中には空中を飛び回る厄介なのもいるんだ。タクティス・ロードを持つレッキと、銃弾を弾けるサイモンなら援護も簡単だろう。んでもって、俺は地上の敵を一掃する。てな感じだな。」

ほほぉ、総司令官の名もだてではなさそうだ。

「しかしだ。蒼の騎士団の軍事力は強力だ。最後まで慎重に事を進めよう。とりあえず俺達はここに残ってしばらく待機だ。クリスチームがバリケードから3キロ離れた地点にまで到達したら、無線で連絡だ。」
「うッス!」
「ギガ腕が鳴るぜ。」

クリスとロゼオは弱冠興奮している。

「若者はいいのぉ。感心させられるわい。」

こんな状況で冷静に瞑想をしているセンネンの肝っ玉にも感心します。

「俺は正面から向かうぞ。」

師匠がそう言ってきた。

「あそこを見ろ。あれがバリケードだ。」

師匠はアジトの方向を指差した。

「あれが…。」

錆びた鋼鉄の門だ。軍兵が小窓からギラギラ光った目を覗かせている。光るからよく見えるんだ。

「俺は立場的にクリスの援護役かもしんねえな。クリスやロゼオは戦力はあるが“戦争”を知らねえ。俺が守ってやらなきゃなんねえ。いいか?」

シークの言葉にリクヤは笑いながらこう答えた。

「ああ、そうだな。シークさんはクリス達と一緒に正面から突破して敵の目を引いてくれ。蒼の騎士団は狂気を使って相手に恐怖心をいだかせて攻撃する。狂気の抗体を持つのはこん中では俺と、アンタだけだからな。」
「わかってんじゃねえか。さすがは総司令官だ。」

師匠はシルクハットを軽くひねると、ふところから杖を取り出した。

「リクヤ、レッキを頼むぞ。」
「あいよ!」

師匠は膝を深々とかがみ、

―ギュンッ!

飛んでった。

「超人の域も越えてやがるッスね。」

クリスがつぶやいた。

「何言ってやがる。俺もギガ飛べるぜ!」

ロゼオがアメをくだきながらそう言った。

「じゃあ、二手に分かれて行動しよう。…ああクリス、これを持っとけ。さっき説明した無線機だ。到達以外にも何かあったらこれを使え。」

リクヤは小型のケータイのようなものをクリスに手渡した。

「あざーッス。」

クリス達は森の奥へ走って行った。

「健闘を祈る。」

リクヤはそう言いつつ、黒い拳銃を取り出した。

「レッキ、お前にこれを渡しておく。」

僕はそれを一目見た瞬間、麻酔銃だとわかった。

「麻酔銃ですか、しかも強力なタイプの。」
「そうだ。蒼の騎士団は全員処刑すべき連中ばかりだが…生かして情報を収集する必要もある。そういうことだな。」
「なるほど。」
「麻酔薬の量は確かめてなかったが、まあ大丈夫だろ。」

リクヤは適当に答えて、また!タバコを吸い始めた。

「タバコは危険だよ。臭いや煙で敵に気付かれる。」

サイモンさんが槍を持ちながらそう言った。

「サイモンさんの言う通りですよ。」
「いや、それでいいんだ。」

リクヤは煙を空中にプゥ―――ッと吹いた。すごい量。空中に漂っている。

「え…………ま、まさか…。」

僕は引きつった。コイツ、僕達を巻き込んで囮になろうとしているのか。

「おほ、来たぞ来たぞ。敵の走ってくる音が。」

―ドタドタドタ…。

「気は確かかい!?わざと敵を呼び寄せるなんて!」

サイモンさんが慌てながら叫んだ。

「お前等ならできるだろ?ノアを倒した新人戦士なんだろ?ベタじゃねえ展開を期待するぜ。」

ふざけんな!!

「gすhふぁsくgcffctyわgcか」

軍兵が奇声を発しながらワラワラと飛び出て来た。

「ちくしょうっ!大旋風!」

サイモンさんは咄嗟に槍を振り回して銃弾をはじいた。

「クッ!」

背後に迫る軍兵2人を銃で狙撃した。その後、剣を振ってきた軍兵の腹に膝蹴りを打ち込み、こめかみに銃口を押し付け、ぶっ放した。

「レッキ、陸上と空中だけばかり見るな。痛い目に遭うぞ!」

リクヤが叫んだ。

―ブァッ!

地中から硬そうな触手が生えてきた。

「モンスターだな。」

すぐに撃ち殺したが、ソイツはゴキブリみたいなグロテスクな昆虫だった。
長い触角は小刻みに蠢いている。

「ギゲエエエ」

―ズバッ!バッ!

巨大なゴキブリはまだまだ出てくる。

「僕はゴキブリは嫌いだ。」

サイモンさんがそうつぶやいた。みんな嫌いですよ、きっと。

「ウンン、殺虫剤の効く相手じゃないな。」

見りゃわかる。

「そら、軍兵だ!」

前方から笑いながら槍を掴んだ軍兵が走ってくる。

「やれやれ…。」

BMを両手で持ち、脚で槍を押さえた。そして、目前で撃った。

「人殺しには慣れたか?レッキ。」

リクヤが巨剣を持って歩いてきた。人殺しに慣れた?ふざけやがって…!

「慣れるものか。」
「ハハッ!だろうな。」

リクヤは僕の頭を強引に倒して巨剣を振った。

「俺も慣れねぇよ。」

強引に掴まれた頭を離し、リクヤは群生昆虫のような軍兵達の中に飛び込んでいった。

「なんなんだアイツ…」
「レッキ君…ッ!大丈夫かい!?」

サイモンさんが走って来た。

「何がです?」
「後ろだよ後ろ!」

後ろ?背後を見ると…うわっ!軍兵が4,5人倒れていた。同じ位置に切り傷がある。

「リクヤさんは一振りでなぎ倒したのか!?」
「ウンン…めまいがするねぇ。」

リクヤは「フギャ―ッ!」とか吼えながら軍兵と乱闘している。

「僕達も行こう!」
「はい。」

僕とサイモンさんは軍兵の群れに飛び込んだ。

―午後10時58分 森林―

クリス一行は森林をひたすら進んでいた。
クリスは青いサングラスをつけている。

「クリス、それはただの眼鏡ではなさそうじゃな。」
「目がいいですね。これは赤外線を見切る特殊なサングラス。本当はうん百万はかかりますが、へへ♪国家機関の特権ッス!」
「何!?俺ぁメガもらってねえぞ!?」

ロゼオが叫んだ。

「あぁ~遅れってっる~♪」

クリスは“こばか”にしながらロゼオを指差した。

「アァァ!?ギガバカにしてるのかギガトン銀球ヘッド!」
「アメ白髪のくせに口答えすんなぁ!」

口論が始まった。センネンは目を細めてそれを聞いている。

『耳障りじゃな。』

クリス一行は現在森林を2キロ進んでいる。軍兵は、驚く程出てこない。

「何かの作戦ッスかね?」
「いや…多分、シークかリクヤがおびき寄せておるのじゃろう。」

御名答。

「御主等もいつまでも喧嘩をするな。ここは戦禍じゃぞ。」
「そりゃあそうだけどよぉ…。」

ロゼオが嫌そうにそう言ったとき、ものすごい殺気を感じた。

「何じゃ?」

センネンは耳を動かす。

「バリケードの方から感じるのぉ…これは悪の気じゃな。」

センネンは林の奥を睨みつけた。

「何かが…来やがる…!」

ロゼオは鎌を取り出した。殺気はグングン迫って来た。

「クリス、ちょいと伏せておれ。」

センネンが手を振ってクリスをどかした。

「何スか?」
「ホレ、アメ白髪もどかんか。」
「誰がアメ白髪じゃボケェ!」

ロゼオは怒り狂いながらもどいた。

「フゥ…。」

センネンは目を細めて両腕を組んだ。

「獅子神咆哮!」

―グワァァァァ!!

センネンの口からものすごい勢いで炎が発射された。

「チッ!」

何かが舌打ちをして空中に飛んだ。

「ムッ!」

センネンはカッと目を見開くと脚をこれでもかと折り曲げ、飛び上がった。

「獅子神降脚!」

そのまま回転して飛んだものを“かかと”で地面に叩き落とした。

「ぐぇあっ!」

―ズガンッ!

何かが落っこちてきた。

「ロゼオ、そやつを捕まえろ!」

センネンがキレイに着地しながら叫んだ。

「あ!?」

ロゼオは一瞬だじろいだが、自分の腕を鎌で裂いた。

「ブラッドボックス!」

血液は落ちて来た何かを完全に包んでしまった。遠くからみれば真っ赤な冷蔵庫だ。

「ギガどんなもんだ!やっぱ俺様天才だぜ。もう神もビビっちまったんじゃねーの?」
「調子に乗んな。ギガどうもしてないスよ。」
「あぁあああああ!?」

また喧嘩が始まった。

「いい加減にせんか馬鹿者共!」

センネンは目を吊り上げている。いくら怒鳴っても童顔では威力がない。

「にしてもよぉ…何を捕まえちまったんだ?」

ロゼオは血の箱を突付いた。

「これ壊れないッスか?」
「バカ言え。俺の血属性魔法は簡単には破れねぇよ。」

―ガタッ!

「…?」
「今動いたな。」
「そりゃそうじゃろう。中身は生きとるのじゃから。」

センネンは箱を見つめながらロゼオのマントからアメを抜き取った。

「あっ!コラてめぇ!」
「ワシじゃて喉が乾いたのじゃ。」

センネンは美味しそうにアメをほおばっている。しかも抹茶風味だ。

「で、これはどうするんだ?殺すか?」
「ほっときましょうよ。自分達のやるべきことはバリケードの破壊。大体…シークさんが援護してくだすってんですから…」

―ガタガタッ!

「メガ活発な野郎だなぁ…。」
「当たり前じゃ。まだ何が起こったのか理解もできとらんじゃろ。」

―ズボッ!

血の箱から腕が突き出た。

「のわっ!俺の血属性魔法を破りやがった!?」
「クヒッ?俺をコケにしやがって?」

何かが出てきた。ソイツはクリス達よりも年下の様な男だった。
風貌は赤い服だ。赤い帽子に白いマフラーをしている。人相は明るそうだが、何かこう…薬物に染まっているような狂った笑みだった。

「誰ダお前等?」

赤い服の男は袋を背負っている。これはまるで…。

『サンタ?』

ロゼオ達(センネン以外)は一瞬脳裏に浮かんだが、そんなわけないと首をふった。

「誰ダと聞いている?」

赤服はニヤニヤと笑いながら再び質問した。

「ワシ等は―」
「やかましい。」

赤服は何故かさえぎった。

「こんな時間に?こんな奥深くまで?ハイキングをするわけでもあるまい。侵入者だろ?え?侵入者だろ?」

赤い服の男は勝手に話を進める。どっかのアメ死神にソックリだ。

「俺は“ディス・クローズ”。蒼の騎士団・12MONTHの№12。だったり?」
「12MONTH!?」

3人は飛び上がった。

「御主がなぁ…。」

そしてセンネンはソイツをまじまじと見回す。

「奇抜ってか?いいか?12MONTHは暦にわけられる戦士チームだ。ジョイジョイアイランドで死んだノブは、ハロウィン?そして俺は、クリスマス?そんな感じに個性あふれる戦士チームなんだってよ!?お分かりかい?誰かさん達?」

やはりクリスマスだったか。

「何で全部メガ疑問形なんだよ。」

ロゼオが面倒くさそうにそう聞いた。イラついている。

「俺達蒼の騎士団は殺戮の集団じゃね?お前等が誰だか知らんが…美術品にならない?」

ディスはベルを鳴らしながらそう言った。スカウトみたいである。

「ふざけるな。わざわざ殺されてたまるか。」

クリスはそう叫んだ。

「否定権はないんじゃね?俺に殺されね?」

―チリンチリン♪

ディスはベルを鳴らしている。

「それで仲間を呼ぶって寸法か?」

ロゼオはニヤリと笑いながら鎌を向けた。

「勘違いも程々にしやがれ?俺は一人でもお前等を殺せる自身があったりして?」

―チリンチリンチリンチリン♪

「プレゼントをあげよう。地獄への片道切符だ。」

―バンッ!

ディスの袋がはじけた。中身は数十機ものの黒い銃器だった。

「ヒィーハァー!?」

―ずだだだだだだだんッ!

銃弾はセンネン達めがけて飛んできた。

「うぬっ!」

センネンは素早く地面に伏せた。ロゼオとクリスもすぐに伏せた。

「獅子神咆哮!」

センネンは真っ赤な炎を吹きだした。

「おひょ!?炎か?」

ディスはベルを振り回した。その瞬間、

―フッ

炎が消えてしまった。

「えぇ!?」
「何だと!?」

クリスとロゼオは驚愕の表情を浮かべていた。

「ムゥ…。」

センネンはうなる。その後、体勢を整えてディスを睨みつけた。

「ヒィーハァー♪俺は“12月の化身”だぜ!?炎が効くかって?いや、効かねぇなぁ!」
「どうなっておる…。」
「ふへへ?気になるか?説明してやろうか?俺の能力紋は“ムマグアイネ”だ!全てを吸収したり反発したりする力だ。今吸収した炎だって…。」

ディスは指をパチンと鳴らした。



ズゴォォォォォォォォォォッ!


上空からものすごい爆音が響く。

「うっとおしい蝿、消去完了じゃね?」

ディスはヒヒヒと笑った。

「何で空を?」

センネンは目だけを上空に向けた。

「センネンさん!あ、あれ!」

クリスが一点を指差して叫んだ。黒い服の男が落っこちていった。

「シーク!」

ロゼオが叫んだ。

「ムゥッ!」

センネンはうなった。この男、ワシの炎を使ってシークを…!?

「おいおい、メガヤバいんじゃねえのか?」
「確かに。」

シークは黒い煙を出しながら、鈍い音と共に地面に墜落した。

「あらら♪ありゃ死んだかな?」

ディスはシークが落ちた方向を楽しそうに眺めている。

「テメェッ!」

ロゼオが怒って鎌を振り回しだした。

「死導流!ぶっ殺斬撃!」

赤い斬撃が勢いよく発射された。

「俺と同じ色か?」

ディスは素早く飛び上がり、ベルを鳴らした。

「ムマグアイネ!反発!」

斬撃はなんと逆向きになってロゼオに襲いかかった。

「いぃ!?」

ロゼオは鎌で斬撃を押しとめた。が、腕には傷跡がついてしまった。

「ロゼオ!」

クリスが慌てて駆け寄った。

「うるせぇっ!、こ、こんなのかすり傷だ!!」

血がポタポタと滴り落ちる。

「痛そうだな。大丈夫かい?」

ディスがおどけてそう聞いてきた。

「俺は死神だ。刃物の傷は効かない…ッ!」

ロゼオは軽く腕を撫でた。腕の傷が一瞬で完治した。

「ホッホォ?面白いな死神って。」

ディスは面白そうにロゼオを見つめている。

「いや、ワシの方はお前に興味があるぞ。」

ディスは背後から聞こえた声に反応し、振り返った。センネンがツメをディスの首元に突き立てていた。

「何だよ。悪い子にはプレゼント(地獄への片道切符)はやらんぞ?おっと、それじゃダメか?」
「ふふん…獅子神王牙!」

そのツメを横一線に振った。ディスは素早くかがんで袋の銃器を掴み、センネンのアゴに突き立てた。
センネンは銃弾が発射される寸前にバック転をしてかわした。着地と同時に両手を地面に押し付け、そのままブレイクダンスのように身体を回転させ始めた。

「獅子神炎脚斬!」

センネンの両足が炎をまとい、そのまま斬撃となってディスに襲いかかった。

「ハンッ!?斬撃が効くと思ったのか?いや、思ってないな?」

ディスはベルを鳴らした。

「能力紋“ムマグアイネ”反発!」

斬撃が“反発”した。センネンは飛び上がって斬撃をかわし、口にくわえていたアメの棒を手に取るとディスの顔めがけて飛びかかった。

―ズブッ!

「ぎゃあああああ?」

ディスは疑問じみた悲鳴を上げた。

「ギャフンと言わせてやったわい。」

センネンはニヤッと笑うと、アメの棒を引き抜いた。
ディスは片目を必死に押さえている。クリスはセンネンがディスに何をしたのかわかると、軽く身震いした。

「ヒギィィ!?ど畜生がぁ!!?」

ディスは脚を振り上げて立ち上がった。そして、片目も治っていた。

「えぇ!?」
「リカバリーか!!」

クリスとロゼオはほぼ同時に答えた。

「ふへへ、残念だったな!?俺には“ムマグアイネ”だけではなく、リカバリー能力があるのさ!?」
「フン、リカバリーがあると知らなかったらそのまま連続で串刺しにしてやったところじゃわい。」
「…!?て、テメェ、知ってやがったのか?」
「知っててどうするのじゃ?」

センネンは質問を質問で返した。

「う、こ、この…!!」

ディスはブチきれたようだ。髪は逆立ち、目は黒くなって赤い眼光を発した。

「発狂!?マジで殺す!?」

袋が完全にはじけ、ミサイルのランチャーが2丁飛び出て来た。

「うげっ!アイツ…ギガヤバイぞ!逃げろ!あれを撃たれちゃ流石にヤバイ!」

ロゼオはクリスを強引にわきに抱えて逃げろとセンネンに叫んだ。

「逃げろじゃと?」

センネンは鋭い目つきでロゼオを見た。

「な、何だよ!?」
「売られた喧嘩じゃ。最後までケリを付けるのが武道精神じゃろうが。」
「こ、こんな時に侍魂か!?ここは外国だ!今更そんな事に構ってる暇はねぇだろ!」
「やれやれ、これだから若いもんは…ワシは“1000年もの時を越えて武道を伝えに来た戦士”じゃ。」

こんな時に今度はホラか!?
ロゼオは叫んだ。

「お前達に見せてやろう。これが“戦”じゃ!」
「何ゴチャゴチャぬかしてやがる!粉々にしてやるぜぇ!」

ディスはランチャーをメチャクチャにぶっ放した。
ロケットはセンネンめがけて突っ込んで来た。

「センネン!!」

ロゼオとクリスが叫んだ。

「獅子神……」

センネンは両腕をクロスさせてブツブツ何かをつぶやきだした。

「う、うわわ…!!」

クリスが汗びっしょりになった。

「どうした?」
「センネンさんの属性力が向上していく…並の力じゃないッス!」

確かに地震のようなものが。
ロゼオもさすがに青ざめた。

「死ねぇ!?ひゃはははははぁ!?」

ディスが笑いながらそう叫んだ時、センネンの目が開いた。

「獄炎海流!!」

センネンがクロスさせた腕をものすごいスピードで回転させた。同時に炎の渦が飛び出てミサイルを全て粉砕した。

「うぉぉ!」

ロゼオがビックリして叫んだ。
炎の渦はそれだけでは飽きたらぬのか、ディスに突っ込んで行った。



ズゴガギグゲゴガガガガガガガガガガガガガガガガ


「ひぇ?」

ディスは目をいっぱいに見開いた。
そして、冷や汗でびっしょりになった。それも一瞬だった。

「ひぇあああああああああああああああああああああ―」



ズゴォォォォォン!


「もう大丈夫じゃぞ、御主等。」

センネンは普段通りのおっとりした童顔に戻り、ロゼオ達を呼んだ。
その足元には黒こげのディスが横たわっていた。

「マジで倒しやがった…つーか…何だよお前…めちゃくちゃ強ぇじゃねえか…。」

ロゼオがアメを食べるのも忘れてそう聞いた。

「ワシは武道を伝えるために“ここ”に来たのじゃ……それを忘れるな、若僧。」

センネンは笑顔でそう言った。


「ひぇへっ?」

ディスが弱々しい声を出した。

「こやつ生きておる!」

センネンがのけぞった。

「そうか、“リカバリー”か…しかし能力紋はズタズタになっておる。もう長くはないはずじゃ。」

センネンはディスの腕を見た。ズタズタに切り裂かれている。

「ふへへ、そこまで考えてやがったのか?へへ、そうかわかったぞ。お前等がノア達を倒した国家戦士だな?へへ、そりゃ、俺じゃ勝てないぜ?ゴホッ!」

ディスはヘラヘラと笑いながら血反吐を吐いた。

「このまま騎士団には全滅されていただこう。悪く思うなよ若僧。」

センネンはディスを見下ろしながらそう言った。

「ひへ?そりゃ無理だぜ。その程度じゃ、ジャンの兄貴を倒せない。12MONTHの№5は絶対に倒せない。全てがムダなあがき!?…ひへへへ♪…ひへ、へ―」

ディスはそのまま息絶えた。

「最後までいやな奴だったッス。」

クリスは反吐を吐いた。

「ムゥ…」

センネンは腕組みをしてうなっている。

「どうした?」

ロゼオが眉をひそめてそう聞いた。

「うむ…嫌な予感がするのじゃ…。」
「…予感だけだろ?ギガ気にするなよ。それよかシークんとこに行こうぜ!メガトン心配だ!」

ロゼオがシークの墜落した方向に歩き出した。

「う、うむぅ…しかし。」
「早く行くッス。」

クリスがセンネンの腕を掴んだ。

「わ、わかったわい!年寄りをせかすな!」


この後、センネンの予感はレッキ同様、見事に的中する。


第41章へ続く

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