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第41章:バリケード破壊

―3001年 3月7日 午後11時00分 グランマウンテン 森林―

プルルルル…無線機が鳴り響いた。

「ハァ…もしもし」
『うっす!クリスッス!今3キロ地点に到達しました!』
「ハァ…ハァ…ご、ごくろうさん。ハァ…待機してろ。」

無線機を切ると、リクヤはゆっくりと立ち上がった。

「フゥ…ヘェ…ハァ…。」

血まみれの顔を袖でゴシゴシと拭いた。

「死ぬかと思った…。」
「僕もです…。」

僕とサイモンさんは敵の山の上で息も絶え絶えにグッタリしている。
ようやく第一陣は全滅させたか。

「おっしゃ…ハァ…行くぞ…。」

リクヤは血まみれの身体でフラフラと歩き始めた。そして、

「あんぎゃ!?」

木に激突して倒れてしまった。

「大丈夫かい?」

サイモンさんが持ち上げた。

「タバコの吸いすぎのツケが回ってきたね。」
「う、うるへぇ…。」

リクヤはヘロヘロだった。
手のかかる司令官だ。サイモンさんはリクヤをおぶってくれた。

「しゅ、しゅまねぇ(すまねぇ)…。」
「よし、進もう。」


「あ!いた。」

サイモンさんが小声で指差した。クリスとセンネンが前方を睨んでいる。
ロゼオは僕達に気付くと軽く手を振った。

「おぅ。血だらけじゃねえか。」
「ちょっと、ね。」

サイモンさんがリクヤを降ろした。

「フゥヘェヒィ。」

リクヤは干物みたいに横たわっている。

「おいおいおい…。」

ロゼオは呆れ顔である。

「いた!」

クリスが声を上げた。

「あそこあそこ!ほら!あの建物の陰!」
「ウムゥ。確かに。」

センネンもうなっている。

「どうしたんですか?」

なんだか騒がしいな。

「シークさんが墜落したんス。」

クリスは慌てた感じでそう言った。

「へぇ、そうですか。」





「はい!!!?」


「あそこですよ。しかもアジトの真っ只中。」

僕は慌ててクリスの指差す方向を睨んだ。黒い物体が煙を出しながら横たわっている。

「誰があんな事を…。」
「正確にはワシじゃ。ごめ~んね。」

真顔で言うな!

「どうする?」

サイモンさんが聞いてきた。

「…師匠は放っておきましょう。ゴキブリみたいな人だから殺されても死にませんよ。」
「ほっとくんスか!?」

クリスはビックリして顔を向けた。

「弟子の僕が言うんです、信用なさい。」


案の定、シークは生きていた。


生きていたとしても、そこにシークはいなかった。
近くの樹木の枝にしがみついていた。

「いきなり驚かせやがって…。」

シークはスペアの黒服に着替えていた。そう、隠れ身の術である。

「レッキ達は大丈夫なのか?」

あたりを見回すと、自分の抜け殻を見て騒ぐレッキ達を見つけた。

「やれやれ、バカな弟子と部下を持つと苦労するぜ。」

シークはレッキ達の元へ向かおうとした。しかし、妙な殺気を感じた。

「おっと?」

振り返ると、なんだか暑苦しい男が向かい側の枝にとまっている。
上半身は青いゴムスーツを着て、水泳用のゴーグルを3つ程肩にかけている。しかし筋肉が見え見えである。
下半身は軍服だが、ブーツの代わりにサンダルを履いている。そのテカテカした顔はにこやかであり、また歯も美しい。しかし、ひく程までにテッカテカのスキンヘッドだ。

「YAあ!御機嫌いかがかな!?」

―キラリ!

彼の歯が輝く。

「おうともさ。」

シークは男の元気な問いに元気に答えた。

「ワタシは“オーガ・フェスティバル”!夏、が!大好きな男さ!見ろ、この腹筋を!」

マジで暑苦しい。

「お前も12MONTHだろ。」
「WOW!何で、わかる、んだい!?」

―キラリ!

彼の歯が輝く。

「オーガは“オーガスト”だ。8月がモデルなんだろ?単純なネーミングセンスだぜ。」

人の事を言える立場ではないが。

「HEY!ビックリ、の、連続、だぜ!この、ワタシを知る者が、いるとは、思いもしなかったからさ!」

―キラリ!

彼の歯が輝く。
どこぞのキャプテンにオーラがソックリなのだが。

「面倒な、ことに、なっちゃったんだねぇ!ノブも、ディスも、通信が、途絶えてしまったんだ!一人、は、国家機関に、殺されたらしいが、もう一人は、“今”、死んだそうだ。」

―キラリ!

彼の歯が輝く。

「へぇ~」

シークは思った。
アイツ等(レッキ達)だな、と。

「キミは何をしにきたんだい?シーク・レット。部下を連れてピクニックとは思えないなぁ♪」

シークは顔を上げた。
コイツ、俺に気付いている…?

「何をしようとしているのかは、知らない。だけど、蒼の騎士団は難攻不落さ!邪魔していいかな?」

オーガはテカテカの笑顔で飛び掛って来た。

「瞬動!」

隣の樹木に移ってやり過ごした。

「WOW!流石はベテラン!歳のわりに衰えてないじゃないかぁ!シーク・レット!」
「一言余計だっての。」

シークは杖を剣の様に持ち直し、オーガを睨んだ。

「HEY!キミと戦うなんて自殺行為はゴメンだね。セプト!オクト!来なよ!」

何かが林から飛び出て来た。2人の人間だ。どちらも寂しそうな顔をしている。

「読書の秋。」
「食欲の秋。」

2人はそれぞれ寂そうにつぶやいた。
一人は木の葉みたいな色をしたコートを着ている白髪の少年だった。
もう一人は灰色のマントをひるがえしている茶髪の少女。

「僕は読書のオクト。」
「私は食欲のセプト。」

二人はそれぞれ丁寧に自己紹介をした。

「オクトバーとセプテンバーか?蒼の騎士団はネーミングセンスが悪すぎだぜ。人間の作った“暦”をバカにしすぎだ。」

シークは静かにそう言った。

「ほざきやがれ!ワタシ達は自分の名前に関するものは全てワタシ達のものだと思っている!」
「そうよ。私達はそう教育されて育ってきたのよ。」

勝手に適当ほざいている。

「もういい…会話するだけ耳が腐る。」

シークは肩をワナワナと震わせ始めた。

「怒りかい?シーク・レット!」

オーガが楽しそうにそう言った。それは遺言だった。


ゴキ


シークは右腕を振り下ろした体勢だった。

「…?」

セプトはオーガの異変に気付いた。首が異様な方向を向いていた。

「くたばれ。」

シークは左腕を突き出した。
ワナワナ…。二人は気付いた。震えているソレは、力を集中させている時なのだと。

『無詠唱、超・神打!』

白い閃光がオーガを消滅させた。

「なっ!あっ…!!」

オクトは咄嗟に巨大な銃器を取り出し、シークに放った。

「イオン・キャノン!」

―ぶああああああっ!

もの凄い勢いでレーザーが発射された。

「ムダだ…烈硬化、人間大砲!」

即座に巨大な大砲を創作し、レーザーを吸収してしまった。

「発射!」

―ぶああああっ!

完全に我が物にしたイオン・キャノンをオクトに発射した。

「クッ!」

オクトは森林の中に潜り込み回避した。

「うぅ…。」

セプトもすぐに中に入り込んだ。

「逃がすか…いや、ここは逃がすか…。」

シークは何かつぶやき、森林に入り込んだ。


なにやら爆音が響き渡るわけだが。
僕は上を見た。白髪の男がナイフを持って飛び降りてきた。

「ガッ!」

一瞬の出来事だった。僕の喉元にナイフを突きたてられた。

「動くな侵入者共め!」

白髪の男はそう叫んだ。

「うげっ!何捕まってんだよレッキ!」

ロゼオが仰天して鎌を持った。

「動くなと言っているだろぉが!マジで殺すぞ人間無勢め!」

僕はため息をついた。

「何だ!?」

ソイツは怒り狂った目つきで僕を見下ろした。

「おかしいんですよ。」

ソイツは引きつった怒り顔になった。

「はっきり言ってあげましょう。滑稽なんですよ。僕は君みたいな人間をいくつも見てきた。すなわち………君の言動全てがおかしい。」

ソイツはワナワナと震え、歯ぎしりを始めた。
何です?何怒っているんですか?

「笑えてしょうがないんですが…。」
「なっなっなっ…んだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!?」

白髪の男は怒り狂ってナイフを頬に突き立てた。血が一筋流れ落ちた。


「レッキの野郎!何メガ怒らせてやがるんだ!?」

ロゼオが慌てながらそう言った。

「いや、あれは“敵をわざと怒らせて隙をつく戦い方”だ…アイツ、結構やるじゃねえか。」

リクヤは楽しそうにつぶやいた。


「ぶち殺す!家畜のくせに生意気すぎだぞガキめが!」

男は目をいっぱいにしているなんだかものすごい怒り様だ。
上で何かあったのか?

「アンタもガキだろ?師匠は言いました。『ガキのくせに大人ぶるな。』ってね…。」

とどめの一言。

「こ、こ、こ、こ」

男は何か言おうとしたが、

「こおのやろぉぉがぁはぁ」

言葉にできていない。人間の理性を保っていないとみた。
髪が逆立っている。

「神技神腕、極斬刀!」

脇から左腕を入れて神技発動だ。
男の腹に深々と刺さった。

「うげぁ」

男は銃器とナイフを落としてうずくまってしまった。

「ざまぁない。」

僕は返り血をふき取りながらそう言い放った。

「う、ううううう」

?…男がプルプルと震え始めた。

「うぎゃぢhwふぇくysgふゅげわげfかえgふぇgfKfgelogQWfぐgdq」

つんざくような絶叫を4拍子叫び、そして身体が膨れ上がった。

「えぇ!?」

クリスが変わっていくソイツを見て目を疑った。

「コイツ…オメガにソックリじゃないスか!」
「オメガじゃと!?」

センネンも叫んだ。確かに、ゾンビのようなむき出しの顔に血走った目。おまけに黒い鎧まで。

「懐かしいですね…どうなってるんだ?」

何から何までタピオカーナ号で戦った、“オメガ”にそっくりなのだ。

「ロゼオ、おぬしが倒した怪物にソックリじゃぞ。」

センネンがふざける様子もなくロゼオにそう言った。

「ハッ!…メガ、知らねえな。俺はいちいち敵の顔と名前を覚えられるほど賢かないんだよ。」

ロゼオはアメをしゃぶるばかりだ。

「ウン!今ので軍兵が気づいちゃったみたいだよ!」

サイモンさんがバリケード方面を見ながら叫んだ。
軍兵が奇声を発しながら走ってくる。

「ドイツもコイツも…。」

虫唾が走る。

「お前等、敵の謎を解明する暇も、敵といちいち戦う暇もないんじゃねえのか?」

リクヤが起き上った。

「体力回復だぜこの野郎。バリケード破壊だ!クリス!センネン!準備を始めやがれ!」

巨剣を振りながらリクヤはバリケード前まで走りだした。

「うむ…。」

センネンは脚を折り曲げた。

「クリス、乗れ。」
「え?」
「オヌシの足じゃあ、速くは走れまい。」

馬鹿にしてるんスか?
クリスは怒ったが、センネンの背中に?まった。

「獅子神狩猟!」

―シュパッ!

二人が消えた。

「速っ!」

ロゼオがつぶやいた。

「僕達も行きましょう。バリケードを破壊しなければ!」

僕はBMで軍兵を殴り飛ばして、残り二人にそう呼びかけた。

「よし、行こう!」

サイモンさんが敵を串刺しにしながら走りだした。

「ギガ足引っ張るなよな!」

ロゼオは僕のコートを掴んで飛び始めた。またかい!

「上空からモンスターだぜ!」

ロゼオが叫んだ。同時にBMをわずかに見えた黒い影に向け、2,3発放った。
数秒後、巨大なコウモリが落っこちてきた。コイツ等は上級の闇人だ。

「急げ!」

バリケードは目の前だ!

―午後11時18分 バリケード前―

バリケード前ではすでにクリスとセンネンが集中していた。

「お前等!早く援護しろ!奴等、バリケードを守ろうと必死だぜ!」

リクヤが空を指差した。コウモリやカラスみたいな闇人が数千匹飛び回っている。

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、ってか?」

ロゼオが苦笑いをした。僕は下手じゃない。

「全部撃ち落としてやる。」
「銃弾は足りるのかい?」

サイモンさんが呆れた感じでそう言った。
そして、懐から何かを取り出した。

「ガトリング砲だ…。」

円形の銃口が9つついているそれは、とても重そうだ。

「わあ…前から欲しかったんですよ。」

嬉しいプレゼントだ。ありがとう、サイモンさん。

「それはよかった♪ヘリから持ち出したんだ。…使えるかな?」
「…30秒でマスターします。それまで援護してください。」

闇人達が襲ってきた。

「大旋風!」

槍を振り回してまとわりつく闇人をなぎ払った。

「ガイアー!」

サイモンさんがそう叫ぶと同時にオレンジ色の腕が突き出て、地面を思い切り叩いた。
反動でサイモンさんの身体が浮き、その体勢で10匹の闇人を突き殺した。

「よしマスターした!」

僕がそう叫ぶと同時に闇人が刀みたいな腕を僕の首元に向けて襲ってきた。
とっさに伏せて、前転をしてから腹めがけて銃弾を発射した。

―ダダダダッ!

闇人はたった4発の銃弾でひき肉になった。

「次!」

立て続けに3匹の闇人を2秒で葬り去った。
その時、背中に激痛が走った。

「うぐっ!」

闇人につかまってしまった。
つかまれたまま、空中に浮かんだ。

「ちくしょう!」

ガトリングを向けようとするが腕でしっかり抑えつけられている。

「ギァ――――――ッ!」

目の前から刀の腕を突き出した闇人が飛んできた。

「やばい…!」

万事休すか!?

「デッドハンド!」

赤黒い腕が伸びてきて両者の首を刎ねた。

「な、何だ?」

落下しながら辺りを見回すと、

「俺、クールすぎるぜ!」

ロゼオがニカッと笑って立っていた。
赤黒い腕は彼が発動したんだ。

「ありがとうロゼオ!」

着地しながら僕はロゼオに礼を言った。

「気にするな!次行くぞ!」

ゴキブリ闇人が地面から出てきた。頭を踏み付けて銃撃でメチャクチャにする。
ロゼオは鎌を地面に置き、闇人の出入りしていた穴に、“自分の血液”を注ぎ込んでいる。

「モグラ叩きは大嫌いなんだよっ!…“ブラッド×アート”!!」

―バズッ!ズボッ!スバババッ!

あちこちから赤いトゲが飛び出て来た。ゴキブリ闇人が血まみれになってアートの装飾品になってしまっている。

「芸術はメガ爆発だぜ。」

アメをしゃぶりながらロゼオは鎌を拾い上げた。

「準備ができたぞ!」
「離れててください!」

センネンとクリスが叫んだ。

「よし!離れろオメー等!」

リクヤが走り出した。

「ま、待て!」

ロゼオが叫んだ。

「アイツは…!さっきの化け物!」

白髪の男だった怪物がノッシノッシと歩いてきた。

「いぃ!?すっかり忘れてたぁ!」
「がははは!オバエラをコロスゾ!」

そいつはリクヤの頭を引っつかみ、樹木にたたきつけた。

「うがはぁっ!」

リクヤは血反吐を吐いた。

「リクヤさん!?どうなってるッスか!?」

クリスが慌てている。

「クリスさん達は集中していてください!闇人達は僕等で食い止めますから!」

僕はそうは言ったが…。

「果たして止められるかい?」

サイモンさんが苦笑いをしながらそう言った。
そいつは明らかにオメガより巨大で強そうだった。

「がははははははは!読書の秋ィィィィィィ!!オバエラをヨバセロ(読ませろ)!!!がははははっはははは!!」

襲い掛かってきた。

「やばい!今アイツに邪魔されたらバリケードが破壊できねぇぞ!?」

リクヤが剣を担いで走って来た。

「止めろ!」

巨剣を化け物の頭に刺した。

「がははははははっ!」

化け物は笑い続ける。

「ベタじゃねえなコイツ!」

リクヤは慌てて飛び退いた。

「イオン・キャノンンンンンンンっ!!!」

口を大きく開けて光を吸い込み始めた。

「ギガやばいぞ!」
「みんな離れて!」

僕はガトリングを乱射した。

―ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!

銃弾は怪物の頭、足、腕、腹を突き抜けた。しかし、

「がはははは!ムダなあがきだ!」

怪物は笑い続けるだけだった。

「リカバリーか!」

サイモンさんが叫んだ。

「なら、跡形もなく消滅させるまで!」

僕は腕を突き出した。

「超・神打!」

白い閃光を発射した。

「消え去れぇぇぇ!!」

怪物は白い閃光に包まれた。

「がはぁぁぁ――――――ッ!」

しかし、怪物は黒こげになったがまだ笑っていた。

「ば、ばかな…。」
「リカバリーをナベる(ナメる)なよ!!がははははははは!!!!」

怪物はいよいよ光線を発射しようとした、その時だった。



ドゴォッ!!!!


地面が揺れる程の、ものすごい轟音と共に怪物はよろめいた。

「がはぁ!?」

師匠だ。怪物の背中に煙を出している腕を押し付けていた。

「まさか…激震打?」

僕は目を疑った。いくらなんでも、あんな爆発音出せるか。

「がはぁ!?貴様またっ―」

師匠はその化け物をいとも簡単に持ち上げた。

「オゥ、コイツを起爆に使うぞ。」

ノッシノッシと歩き出した。

「…師匠!危ない!」

僕は叫んだ。闇人が牙を剥き出しにして襲い掛かってきたからだ。

「ん。」

師匠は軽くかわして、

―ボキッ!

ソイツの首をへし折った。闇人は突っ込んで来た反動で地面に上半身をめり込ませてしまった。

「よ、よせ!俺はまだやるべき事がのごって(残って)いるのだ!」

怪物はギャアギャアと叫んでいる。

「うるせぇ…よっ!」

師匠はものすごい勢いでソイツを投げた。そして僕に突進してきた。

「ムグァ!」

師匠は僕を抱きしめ、

「クリス!センネン!魔法を発動させろ!」

伏せながら叫んだ。

「はぁああああああ!!」
「でやぁああああああああああ」

二人は両腕を後ろに引き下げ、一気に手前に突き出した。
同時に怪物がバリケード前に転がり出た。

「ぎゃあああああああ!よ、よせぇ―」



チュドォ―――――――ン!!!!


バリケードは怪物と共に消え去った。

「ハァ…ハァ…。」

一行は地面に伏せたまま顔を上げた。
バリケードは完全に消え去っていた。

「や、やったぜ!」

ロゼオが歓喜の声を上げた。

「ギュアアア!!」
「ギュエエエ!」

闇人が突進してくるのが見えた。

「ちくしょう!」

サイモンさんが悪態をついてオレンジの腕を出そうとした。しかし、

「…銃弾の音?」

僕の耳にそれは確かに聞こえた。
闇人の大半が悲鳴を上げて落ちていった。

「アイツ等…へへ。」

リクヤが笑った。

「司令官殿!お待たせいたしました!」

処罰機関の兵士が走って来た。

「ここは我々にお任せください!」

ドレッドが敬礼をしてそう言った。

「ありがとう、ドレッド。」

僕が礼を言うと、ドレッドはそっぽを向いた。

「お前のためじゃねえよ!司令官殿のためだ!」
「ベタな事言ってんじゃねえ!!」

ドレッドはリクヤに制裁された。ざまぁない。

「よし、行くぞ!敵は目前だぜ!」

師匠はクリスを持ち上げてバリケードから中に入ろうとしていた。

「ほらレッキも。」

僕に手を差し伸べた。

「瞬動!」

軽く飛び越えて、中に入った。

「あまくみないでいただきたい。」
「ははは!上達したな弟子よ!」

師匠は笑いながら飛び降りた。


そして、戦いの火蓋が切って落とされた。。


第42章へ続く

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