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第42章:それぞれの戦い

―3001年 3月7日 午後11時25分 蒼の騎士団 アジト内部―

薄暗い空間だ。血の臭いが濃くなっている。

「慎重に進め。」

リクヤは拳銃を右手に持ち、慎重に進んでいる。そして僕等は、ソイツの後を歩く。

「敵はどこにいるかわからんぞ。処罰機関の連中が足止めをしてくれておる。ムダにするな。」

センネンが静かにつぶやいた。

「わかっていますよ。」

僕は周囲を確認しながらそう返した。

「道だ…。」

サイモンさんが声を出した。
目の前にライトアップされた通路があった。

『ザザ…国家機関諸君、ザザ、ザザ…歓迎するよ。』

ノイズの激しい放送が聞こえた。

「バカにしてるんスか?絶対罠ッスよ。」

クリスがいきりたちながらそうつぶやいた。

「まぁ待て。この声は嘘じゃねえ。アイツ等、俺達を招こうとしてやがる。」

師匠がそう言った。

「どこへだ?」

ロゼオがやれやれと言わんばかりにそう聞いた。師匠は単調に答えた。

「簡単なこった、地獄だよ。」


―午後11時29分 レインの部屋―

ミサは本を読んでいた。

「優しい本…レインっていう子…あんなに悪いヤツの子なのになんでこんな本を読むんだろう。」

平和を愛する天使のお話。ミサはそれをジッと読み続ける。

「ミサ、ちょっと来たまえ。」

ジャンが入ってきた。後にはレインが冷たい目つきで立っている。

「…!!」

ミサは、警戒している。

「まあまあ、そう身構えるな。お仲間と、ご対面だよ、と。」

ジャンはニヤニヤしている。

「ジャン、手短にしておけ。時間がない。」

レインは冷たい目つきでそう言い放った。

「あいよ。まったく、狂気に侵されたレイン坊ちゃんは恐ろしい♪」

ジャンはミサを無理やり捕まえると、引きずって外へ連れ出した。


―午後11時32分 ???―

ここはどこだ?
僕達が通路を通って辿り付いたのは、明るい空間だった。蒼い空が写っているが、絵のようだ。
僕達は何かの建物の屋上らしく、向かい側、10メートル程先には、もっと巨大な建物があった。

「どうなってやがる…。」

ロゼオが辺りを見回している。

「なかなかよい趣向じゃのぉ。空の絵画が美しい。」

センネンが何気無くつぶやいた。その後、みんなの白い目に気付いた。

「ニャハ、冗談じゃよ。」

肩をすくめた。

「ここは処刑台だよ。拉致してきた人間をこの空間の中で処刑するのさ。ウン。」

サイモンさんが身震いをしながら説明した。

「処刑、ねえ…虫唾が走るッス。」

クリスは地面を軽く蹴った。砂埃に赤いものが混じっている。
血だ。僕はいよいよ怒り狂いそうだった。蒼の騎士団の異常なまでの殺への執念。しかもその理由が“芸術”のため。
蒼の騎士団…必ずこの手で潰す!!

「お前等、武器は出したまんまにしとけ。いつ敵が出てくるかわからんぞ。」

師匠が杖をついて建物の縁にまで歩いていった。

「出て来いよデスライク、いるのはわかってるんだ。」

師匠の言葉に一同は仰天した。


「ははははは、バレていたか。流石はシーク・レット・ジャスティス…。」


青ざめた男が向かい側の建物から姿を現した。

「あぁっ!」

クリスが声を上げた。
ソイツのチューブだらけの身体は不気味としかいいようがない。

「あいつがデスライク・シュバルツ…。」

僕の家族を、サイモンさんの婚約者を…全てを奪った張本人…。

「くふふ…。」

デスライクは僕達をジロジロと眺めている。
殴り飛ばしたいが…遠すぎる。

「“コレ”がお前の新しい部下か?」

チューブを揺らしながらソイツはそう言った。

「そうだ。俺の大切な部下だ。特にレッキは俺の愛弟子よ。」

師匠は自慢気にそう言い放った。
デスライクは更に僕達の顔を見ていた。

「ジロジロ見るな、犯罪者め!」

リクヤがイライラしながらそう叫んだ。
デスライクは、驚いたように目を開いた。

「驚いた。これは活きのいい人間だ。他のみんなも素晴らしい顔だ。」

そして、こう続けた。



「奪っていいか?」


地の底から響く恐ろしい声だった。

「ぐっ…。」

リクヤは青ざめて後ざすりをした。

「お断りだ、芸術家さん。」

師匠はふざけるようにそう返した。

「いやだ、拒否権はない♪」

デスライクは指を鳴らした。

―シュビビビビビッ!

7人の男女が彼の周囲に降り立った。
一人は茶髪の青年。もう一人はニット帽をかぶった笑顔の青年。その隣には髪を逆立て、スカーフを口に巻いている奇妙な青年。その後方に立つ闘牛のような鋭い角を頭から生やした黒髪の男は、桃色の髪の女性を肩に担ぐ程の巨人だった。そして、黒い服を着た双子らしき男女。

「12MONTHのジャン、フェブ、マウル、エイプル、メイ、ジュン、ジュラだ。」

デスライクが楽しそうに紹介した。

「12MONTHは蒼の騎士団が作り出した究極の改造人間だ。箱舟を越える、究極の中の究極体。わかるな?」

改造人間…。あの白髪の男も改造人間だったのか。
オメガに似たあの姿にも合点が通る。

「コイツ等を倒せば、ミサを救えるぞ。もっとも、私とレインがいるがな。」

デスライクは笑っている。

「さて、ミサを連れて来い。」

デスライクが叫んだ。

「ミサだと!?」

師匠がビクッと身体を震わせながら叫んだ。

「ははは、最高のシナリオだと思わないかね!?人間無勢共が!!」

デスライクはそう言うと身体を右にどかした。
真っ暗な通路からミサは現れた。後ろからレインが銃器を突きつけている。

「ミサ!!!!」

僕は仰天して叫んだ。

「ミサちゃん!」
「ミサ!聞こえるか!?助けに来たぞ!」
「ミサ!!」

クリス達も口々に叫んだ。

「待て!見えないのか!?後ろから銃を突きつけられてるんだぞ!?刺激するな!」

リクヤが叫んだ。

「今はしねえよ…。」

師匠が拳を握り締めながらそう言った。

「え?」

僕は師匠の方に顔を向けた。その時、ミサが口を開いた。


「…みんな帰って…。」


―午後11時37分 バリケード跡前―

「しかし、マジでこの厚さのバリケードを破壊しやがったのか?」

処罰機関戦士の一人がそうつぶやいた。
バリケードはダンボールみたいにメチャクチャに破けている。

「12MONTHの一人、オクトも死んだらしいぜ。化け物だな、アイツ等。」
「バカ、化け物じゃねえよ。あの人達の力は世界を救う力だ。」

銃器を構えながら闇人達との戦闘を繰り広げながら、戦士達はそう会話していた。
そんな中、ドレッドは妙な殺気に気がついた。

『うん?どうかなされましたかな?ドレッド坊や。』

ゴショガワラの声がした。そもそもピーチメントは体内に3匹の精霊を飼う能力だ。
だから、ゴショガワラ達3匹はドレッドの中にいることになる。

『顔色が真っ青だぜ。』
『確かに。』

ロクロとロトも不安そうな声でそう言った。

「何か来る…。」

拳銃を片手に、ドレッドは茂みの奥を睨んだ。

「女だ。」

ドレッドは目を丸くした。茂みの中に血走った目つきの女性が笑っている。
灰色のマントに茶髪。そう、シークが取り逃がした“セプト”だった。

「…。」

青ざめた顔でドレッドは近くの戦士を手ぶりで呼んだ。

「ひぇはははははははははっはあはははははっはははははは」

セプトは大声で笑い出した。

「12MONTHか!!」

ドレッドは拳銃を構えた。

「動くな!」

セプトは警告を無視し、拳銃を蹴り飛ばした。そして、片足を軸にドレッドの首元めがけて脚を振り上げた。

「クッ!」

ドレッドは咄嗟に十手を抜き取り、セプトの蹴りをせき止めた。

―グニャリ。

「ま、ま、曲がった…!?」

生身の人間が喰らったら即死である。

「しょ、食欲の秋ィ!」

セプトは震えた声でそう叫んだ。

「しょ、食欲の秋ィィィィィィィイ!!!!く、喰わせろ!クゥ、クソガキィ!ひ、ひ、ひぇはあああああ」

セプトは満面の笑みで牙を剥き出した。


『ドレッドVSセプト』



―午後11時38分 処刑台―

「か、帰ってだぁ?」

沈黙をやぶったのはロゼオだ。

「ミサ!俺達がどれだけ苦労してここまで来たと思ってんだ!?特にレッキはお前のために何度もメガ死にかけてたんだぞ!?命がけでギガ辿り付けたってのに、それが第一声か!?ふざけんじゃねえぞ―」
「ロゼオ!!!」

僕は叫んだ。

「ガッ…。」

ロゼオは青ざめた顔で僕を見た。

「レッキ…。」

他のみんなも汗だくで僕を見つめていた。
僕は息をつくと、ミサを見た。蒼白な表情で涙を浮かべている。プルプルと肩を震わしている。

「どういう事なんだい?ミサ、なんでそんな事を言うんだ。」

僕は至極、優しい口調でそう問い掛けた。ミサは小さい身体を震わせている。

「ごめんなさい…。」

涙が一筋流れ落ちた。

「でも、帰って…お願い…。」

涙がせきを切って流れ始めた。
ミサは“お願いだから帰って”と何度もつぶやいている。

「はははははは!ミサもこう言っているから帰ったらどうだ、お前達?…無論、生かして帰すつもりはさらさら無いがな。」

デスライクはそう叫んだ。
そしてミサの頭に手をあて、優しく撫で始めた。

「だよなぁ?愛しのミサよ…。」

その様を見て、僕は血管を2,3本ぶち切った感覚を覚えた。


「デスライクゥゥ!ミサに何を吹き込んだぁ!!?」

怒りで周りが見えなくなる癖はいつも通り。僕は血走った目でそう叫んだ。

「くはははは、怒り狂う人間を見るのは楽しいぞ。しかしな、ミサはお前達を救いたいがためにこのような事を言っているのだ。」
「どれはどういう意味だい?」

サイモンさんが強い口調で問い掛けた。

「ミサの家族、のような人間共が死んだのは、“私が命令した”からだ。ミサの体内には、我が軍が必要とするエネルギーをもっている。家族はその力を奪い取る恐れがあるのだ。だからだ。私が全てを奪い取った。」

デスライクは楽しそうにミサの顔を撫でている。
ミサは、辛くて、怖くて、悲しくてたまらない、そんな表情をしていた。

「お前の軍のためにミサの家族を殺したのか?ホウプラブ教授を殺したのか?」

僕はガタガタ震えている。

「そうだが、何故怒る?芸術品を作って何が悪い?辛いならお前も一緒に芸術品になればいいじゃないか。安っぽいが、戸棚に並べてやるぞ。」

もうダメだ。怒りで身体が制御不能だ。

「レッキ、落ち着―」

師匠の手を振り払い、

「うあああああああああ!!」

僕はBMを乱射した。

「この悪魔がぁ!!!」

―ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!

銃弾が尽きるのに気付いた時には、目の前の建物は砂煙で見えなくなっていた。

「悪魔…な。いい響きだ。」

デスライクのおぞましい笑顔が浮かんだ。
見ると、彼の足元に銃弾が転がっている。ジャン達が銃弾を全て叩き落したらしい。化け物だ…。

「12MONTHは私の盾だ。いつでも私を守ってくれる。特に、あの男に致命傷を負わされてからな、バロンの弟、レッキよ。」

僕は奥歯をかみしめた。

「ちくしょう…。」
「だからだ♪ミサはこれ以上自分の仲間を殺されるのが見たくないのだよ。だから、帰れと言っている。わかるか?」

僕はもちろん、後ろにいるみんなも血走った目つきだ。
こんな人間がいるのか。救いようのない程の悪党。人間の弱みをしつこく突く。十二凶最悪の組織、蒼の騎士団のボス、デスライク・シュバルツ…人間の感情のほとんどを持ち合わせていないと見た。


「俺はいやだ…。」

二度目の沈黙を破ったのはまたもロゼオだった。

「なんでお前みたいなガキの言う事をギガ聞かなきゃなんねえんだよ。俺は誰の指図も受けず、俺の人生をメガトン歩きやがりてえんだ…だから、四の五の言わず俺達に助けられろ!ミサ!」

鎌を構えてそう叫んだ。

「そうッスよ…。」

今度はクリスも目を見開いた。

「ミサちゃん、自分達は家族ではないッス。“親友”じゃないッスか。親友が親友を助けて何がおかしいんスか?」

優しい笑顔でクリスはそう言った。

「最近の若いもんはキレイ事ばかり言うのぉ。」

センネンが割り込んできた。

「なんだよ!」
「にゃははは、しかし面白いのぉ、若者は。いつも感情に振り回されてばかりで、いつも無鉄砲じゃ…じゃからミサ、御主もいつも通り自分の感情に振り回されて、『助けて』といえ。それが若者だ。」
「みんなの言う通りだよ。帰ってなんて…寂しい事、言わないでくれよ。」

サイモンさんもそう言った。

「…。」

師匠は心なしか楽しそうな感じで腕組みをしている。

「…最高にイカすぜお前等。」

リクヤがタバコに火を点けながら嬉しそうにそう言った。

「みんな…。」

ミサが涙でグシャグシャになった顔をしている。

「ミサ、僕達の前では二度と泣かせないぞ。だから、助けに行くから、安心して待っててくれ。」

僕は怒りを抑え、そう言った。

「ヒッ…ウッ…みんなぁ…。」

ミサはこらえきれずに叫んだ。



「助けてぇ!!!」


その言葉を待っていた。

「任せろミサ。僕は君との約束を必ず守る。無論、ミツルとの約束もね。」

僕はそう言った。

「!!…レッキ、お前。」

師匠が驚いた声で僕を見た。

「なんです?」
「わ、笑っ…?」

師匠は意味のわからないことを言った。

「ひぇははははははははははははは」

おぞましい笑い声が聞こえた。12MONTHが笑っている。

「バカみたいな余興は終わりかい?人間諸君。」

ジャンが笑いながらそう言った。

「ジャン、そんなに笑うな、客人に失礼だろう。君達に最高のパーティーのシナリオを用意したんだ。」

デスライクはミサの頭に手を当てながらそう叫んだ。

「パーティーだとぉ?テメェ、俺達をメガナメるのもいい加減にしやがれ!」

ロゼオが叫んだ。

「むやみに相手を刺激すんなっつってんだろ!阿呆が!」

リクヤが『ムキャーウキャー』と叫んでいる。

「ここからはレイン、お前が説明しろ。」

デスライクはミサの髪を掴み、建物の中に入ってしまった。

「ミサ!待ってろよ!」

僕は出来る限りの声でそう叫んだ。ミサは何度も頷きながら、暗闇に消えた。

「さて、チームコスモス、シーク・レット、最上陸也…足元を見ろ。」

レインは冷たい顔でそう言った。命令口調だ。やっぱり気に入らない。

「ム?」

センネンが目を細めた。

「どうしたんだい?」

サイモンさんが声をかけた。

「あやつ…目の色が変わっておる。」

センネンはそれだけ言うと、僕の肩を押した。

「わっ、どうしたんですか―」

―ダンッ!

僕の足元に大穴が開いた。

「デリカシーの無い野郎だ。」

師匠がそう言った。見ると、マウロが怒り顔でこっちを睨んでいる。

「レイン坊ちゃんが“見ろ”とおっしゃっているだろぉが!」

手を掲げながらマウロはそう叫んだ。

「アイツ…特殊能力があるのか?」

僕はそうつぶやきながら、足元を見た。奇妙な円形の紋章が8つ?横に並んでいる。

「それは“ワープホール”能力紋だよ。こっちの建物各部屋に分けられている、12MONTHが各部屋で待ち受けている。あ、ちなみに一人しか入れないよ。」
「なるほど、分かれて個人で戦えっていいたいんだな?」

リクヤはニヤニヤしながらそう言った。

「ざけやがって…俺達がそんなゲームに乗るわけ」

リクヤは円形の紋章に足を乗せた。

「ねーだ…」

―パッ!

消えちゃった。

「リクヤ…。」

師匠がワープホールを見つめている。

「ドジ…。」
「かっこ悪…。」

クリスとロゼオが呆れ顔でそう言った。
仮にも年上ですよ。

「見よ、能力紋も共に消えてしもうたぞ。」

センネンが指差した。キレイサッパリになくなっている。

「本当に一人しか入れないってか…。」

サイモンさんがつぶやいた。

「そういう事さ。物分かりの悪い人間にもよく効くよね。」

レインは淡々とつぶやく。

「レッキ、君も物分りは悪いけど、頭はいい。わかるかい?ボクの気持ち…。」

レインはニヤリと笑い、僕を睨んだ。僕はその目つきに殺気を覚えた。

「僕と戦いたいのか?でも、何故だ?」

レインはクスッと微笑んだ。

「殺したいんだ。今のボクには殺人の恐怖をも感じない。そう、狂気に染まったのさ。そしてレッキ、バロンの弟…父の恨みもある。」

レインは微笑みながらも殺気を濃くしていく。

「キミと勝負がしたい。ボクとの戦い相手になるのを願うよ。くくく…。」

そう言い残し、レインは12MONTHと共に建物の中に戻った。

―午後11時39分―

「よ、よし…。」

クリスもホールの中に入った。

―パッ!

「ワシも行くかのぉ。」

続いてセンネンも。

―パッ!

どんどん消えていく。

「罠じゃねえだろうな…。」

ロゼオが慎重に能力紋を鎌で突付いた。

―パッ!

消えた。

「感度高っ!」

師匠が突っ込んだ。

「よく感度なんて言葉知ってましたね。」
「ハハ、ロキから聞いたぞ。」

アホか。

その後、サイモンさんもワープホールの前に立った。

「フゥ…それでは僕も行くとするか。ウン。」

―パッ!

残るは僕と師匠だけになった。

「レッキ…」

師匠が僕の顔を見ている。

「はい?」
「死ぬなよ。」
「…わかってます。」
「無事じゃねえ姿見せたら、許さんからな。」
「…僕もですよ。」

共に能力紋の前に立った。

「行くか!」
「はい。」

同じリズムで能力紋の上に乗っ―



パッ!


―た。一瞬で着いてしまった。

「うひょ、やっぱり能力紋てスゲェな。」

師匠が隣にいた。師匠も僕に気付いた。

「…早い再会でしたね。」
「おう。」


一方、リクヤは…


「ろぉが!」

リクヤは暗闇の中にいた。

「ありゃ?」

辺りを見回している。すると、赤い扉があった。上部にスピーカーがある。

『ゴメンね~!君、早く中に入っちゃったから、準備がまだなんだぁ♪』

ジャンの声だ。

「へっ…どうせベタな展開なんだろ?その赤い扉、開かないんだろ?」
『まぁね。出たければ、俺に勝てよ。』


『リクヤVSジャン』



「突付いただけなのに、感度高っ!」

シークとまったく同じ突っ込みをしたロゼオは、目の前の男に目を向けた。
エイプルだ。鋭い角が怪しく輝く。

「お前がオデの相手ガ?」
「…そうみてぇだな…。」

ロゼオは目を細めた。

「邪魔はさせねえ、ギガ!斬る!」


『ロゼオVSエイプル』



「君が僕の相手だね、マウル・ジゴス」

サイモンはマウルを睨んでいた。

「何故俺の本名を?」
「ウン…よく覚えているよ。僕は君にやられたんだ。」
「そうか、お前、あの時の改造人間か。下級の同志のくせに、裏切りやがったあの改造人間。」


『サイモンVSマウル』



「女かよ。」

桃色の髪、メイは嫌そうな顔でクリスを見ている。

「アタシさぁ、相手が男じゃないと“まともな戦い”も出来ないのよぉ。」

クリスはムッとした。

「何よ、女だからってあまくみるなって言いたいのかしらん?」

クリスは目をカッと開くと、こう叫んだ。


「自分は男ッス!」


『クリスVSメイ』



「フム…。」

センネンは目の前の青年、フェブを見つめている。
ルービックキューブを器用に操っている。

「待ってよ。今に仕上げるから。」

その青年は笑顔でカチャカチャとルービックキューブを動かす。

「何もかもキッチリカッチリさせなきゃ、ね?」
「うむ、そうじゃのぉ。」

―カチャカチャ。

「よし、仕上げた。どう?」

完成したルービックキューブをセンネンに見せた。

「素晴らしい。」
「1分かかった。」

フェブはニヤニヤと自慢した。

「さて、始めようか。キッチリカッチリ、ケリをつけよう。」
「うむ、そうじゃのぉ。」


『センネンVSフェブ』



「ん!!」

師匠が前を睨んだ。

「やあやあ、ようこそ、私の部屋へ。」

デスライクが豪華な椅子に座っている。

「いつのまに現れやがった!?」

師匠が叫んだ。

「他の連中はもう戦いを始めているぞ。私達も戦おうじゃないか。」


『シーク、レッキVSデスライク』


第43章へ続く

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