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第1話 旅立ち

 

・・・悲鳴が聞こえる・・・。

・・・何故?

一体何が起こっているんだ・・・?

そして、何故レイが闇に吸い込まれないといけない・・・?

 

リズロの頭の中に、その言葉がよぎった。

 

「レイ・・・・・・。」

 

レイの名を呟くが、返事など帰ってくることはない。

帰ってくるのは、人々の悲鳴だけだ。

 

「・・・悲しんでいる場合じゃないんだ・・・レイを見つけなきゃ・・・。

それに、戻って確かめなきゃ!何が起こっているのかを!」

 

リズロは、走り出した。全力疾走で。

途中何度か転びはしたが、リズロは走り続けた。

そして、やっとのことで戻ってこれた。膝から、血が流れていたが、そんなのは気にも留めない。

何故なら、自然の国が何者かに荒らされていたからだ。

美しい緑に囲まれた自然の国が、先ほど見てきた元無の国の状態に少しだけ近い状態になっていた。

だが、消滅はしていない。家などは、多少かけたり屋根がなかったりであった。

 

「・・・何なの・・・一体何が起こってるの・・・?」

 

そう呟くと、とある家から老人が現れた。

 

「魔王が、復活したのじゃ・・・。」

「おじいちゃん!」

 

この老人の名は、リグゼン。リズロの祖父であり自然の国の長老でもある。

 

「おじいちゃん、大変なんだ!レイが!レイが!!」

「判っておる。すべては、魔王ルシフェルが復活したせいじゃ・・・。」

「魔王ルシフェル・・・?」

「昔、国全体を襲い、無の国を消滅させた張本人じゃ。」

「じゃ、レイはそのルシフェルってやつに連れて行かれたって事!?」

「そうかも知れぬ・・・。」

「何で、どうしてレイなの!?」

「そこに居合わせたのが、レイじゃったということしか言えん。」

「僕だって、レイのそばにいたよ!?」

「・・・それは後で調べて考えてみるしかあるまい・・・。」

 

2人は、家の中に入った。

リグゼンは、本棚から古い書物を取り出して、ページをパラパラとめくりだした。

 

「おお、これじゃこれじゃ・・・。」

「何?何て書いてあるの?」

 

その古い書物にはこう書いてあった。

 

ルシフェルは、もともと無の国の住人だった。

そこで、科学者をしていた。

だがある日、自分の研究を、国の中心である人物に差し出したのだが、その研究を断固拒否されてしまった。

その研究とは、人々をクローンで作る研究であった。

人々が少なくならないよう、クローンで作っていけば、人口は増えるんじゃないか。ルシフェルはそう言った。

だが、その意見もむなしく、すべて拒否され、さらには研究自体を削除してしまった。

そのことが許せなくなり、ルシフェルは力をあげ、バックアップでとっておいたクローン技術を応用し、大量の魔物を作り出し、自ら魔王となった。

そして、その魔物を全国に散らせ、一番憎く思っている自分のふるさと、無の国を自ら消滅させた。

そして、封印される前に、ルシフェルはこういった。「また復活してやるよ!元無の国の住人の体を使ってな!!」と・・・。

 

「だから・・・だからレイを連れ去ったんだね・・・。」

「きっとそうじゃろう・・・。」

「・・・僕・・・レイを助けに行く!!」

「馬鹿者!力のないお前さんが言っても無駄じゃ!」

「だって・・・だって僕・・・(親友として)レイが好きだから!」

 

「好きだから」の言葉で、少し動揺したリグゼンだが、恋愛に鈍感なリズロに、そんなことはありえないと悟り、我に返る。

 

「・・・ならば・・・ついてくるがいい・・・。」

「・・・?」

 

リグゼンは、書物を本棚にしまい、家の奥へと歩みを進める。

リズロはそれについて行く。

家の中を進むと、突然リグゼンは足を止め、床下の板をはずした。

そこには、地下へつながる階段があった。

リグゼンはその階段を下りてゆく。

 

「リズロ、何をしている。早くこんか。」

「あ、うん・・・。」

 

下に進むと、何やら神殿のようなものになっていった。

「家に、こんなところがあるなんて・・・。」という言葉が、リズロの頭をよぎった。

 

「ついたぞい。」

「・・・わぁ~・・・。」

 

そこは広い広い神殿だった。

リズロは広さに圧倒され、まわりをキョロキョロと見回した。

特にといったものはないが、しっかりとした柱が何本もあり、「ここは神殿だ。」ということを物語っている。

 

そして、しばらく歩くと、何やら台座のようなものがあった。

その上には、全長80~90cmはありそうな大きな剣と、クリスタルのペンダントがあった。

ちなみに、クリスタルの色はエメラルドグリーン。

 

「これは?」

「これはな、昔7人の戦士の中の一人が使っていたものじゃ。」

 

リグゼンはそういった後、こう続ける。

 

「この剣は、どうやら使い主かしか持てなかったようなのじゃ。

誰が持っても、とても重かったり、弾かれたり。

しかし、彼だけが普通に持てたのじゃ。」

「何でだろう・・・。」

「それは今でも解らないままじゃ。」

「で、このペンダントは?」

「魔王ルシフェルを封印する際に使った物じゃ。

7人とも色は違うが、性能は大体同じじゃ。」

「ふ~ん・・・。」

 

 リズロはそういいながら、ペンダントを手に取り首にかけてみた。

すると、突然ペンダントが光りだした。

 

「え、な、何なの!?」

 

リズロは突然光りだしたペンダントに対して、慌てていた。

と、頭の中に、誰かの声が聞こえてきた。

 

“少年よ、その剣を手に取るのだ。”

 

リズロは慌てていたが、急に冷静になり、誰かに操られているかのように、台座にある剣を手に取り、上にあげてみた。

その様子を見たリグゼンはもちろん驚いた。なにせ、その彼しか持てなかった剣を、リズロが持っていたのだから。

 

“友達を助けたいのだろう?

それを使い、魔王ルシフェルを封印・・・いや、完全に倒してくれ。

その前に、その似たようなペンダントを持つ6人の仲間を集めるんだ。”

 

「僕に出来るの?」

 

“お前は選ばれた戦士。

必ずや、成し遂げられるだろう・・・。

まずは、自分の国を元に戻すんだ。”

 

誰かの声は、そこで止まった。

 

「・・・おじいちゃん・・・僕・・・これでレイを助けに行くよ。」

「・・・そのようじゃな・・・。」

「でも、まずは復興させなくちゃ・・・。」

 

リズロはそう言って、地下の神殿から出て、外に出た。

 

「・・・とは言ったものの、どうしたらいいんだろう・・・。」

 

そう呟くと、再びペンダントが光る。

 

“力をこめて、地面にその剣をさすんだ。”

 

リズロは、声のとおりに何かを念じてから、剣を地面にさした。

全体が、暖かい黄緑の光に包まれ、その光が消えた時、元の緑豊かな美しい国に戻っていた。

 

「う、うわぁ・・・。自分でやったのに、何か凄いや。」

 

“それはお前の能力だ。

力を付ければ、新たな技を身に付けることができるぞ。”

 

「そ、そうなの?」

 

“今から出るのならば、向かうところは「炎の国」だ。

そこに、また選ばれた戦士がいる。”

 

「う、うん。とにかく長旅になるから、準備しなくちゃ・・・。」

 

リズロは、いったん家の中に入った。

そこには、ようやく神殿から戻ってきたリグゼンがそこにいた。

 

「旅に・・・出るのじゃな。」

「うん。僕、レイを助ける。そして、この世界を元に戻す。魔王も倒す。

それが僕の役目だ。」

「準備はしっかりとしておくのだぞ?」

「判ってるって。」

 

そう言って、リズロは自室に戻り、旅の準備を始めた。

 

数分後・・・。

 

「これでよし。」

 

荷物は、腰ポーチのみ。

この腰ポーチに、必要最低限のものが入っているのだ。

大きな剣はどうするのかって?

肩にかけれるものがあったので、それに剣をさして持ち歩くそうだ。

と、再びペンダントが光る。

 

“出発する前に、この国に結界を張るんだ。”

 

「け、結界!?僕、そんな事出来ないよ・・・。」

 

“私の力を貸そう。そうすれば出来るはずだ。”

 

「で、どこでやるの?」

 

“どこでもかまわない。

範囲が、この国全体であればな。”

 

そして、輝きが大きくなり、その輝きはリズロを包む。

何といっていいのか分からないリズロは、「とにかくこの国全体に結界を!」と言ってみた。

国全体に、見えない結界が張られた。

その感覚は、リズロには分からない。

 

「これで、大丈夫なの?」

 

“あぁ。魔物もこれ以上襲ってこないだろう。”

 

「良かった・・・。

じゃ、早く行こうか。」

 

リズロは、リグゼンに別れを告げ、自然の国を後にした。

向かうは、炎の国だ。

 

 

第2話へ続く・・・。

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