第3話 鋼の国
走り続けて、ようやく国の城門にたどり着いた。
そこには、2人の兵士が倒れていた。
所々から血は出ていたが、息はまだある。
「大丈夫ですか!?」
「き、君は・・・?」
「あまり動かないでください。魔物に襲われたんですね?」
リズロはそういいながら、腰ポーチから取り出したガーゼと包帯で、応急処置を施した。
「僕に任せてください。この国にいる魔物を、とりあえずすべて倒しますから。」
応急処置を終わらせて、スチルにここにいるように伝え、国の中に入って行った。
みると、住宅は所々溶けていて、人の気配が全くない。逃げ遅れた者も1人はいるかとは思うのだが、その気配もない。
あるのは、魔物の気配だけ。むしろ魔物の姿が見えるだけだ。
しかし、何故すべての魔物が、城へ向かっているのだろう?
リズロは少し考えたが、そんな暇はないと悟り、魔物を一体ずつ倒していった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・とりあえず、民家に広まっている魔物は全部倒した。あとは・・・お城の中だ・・・・・・。」
≪リズロ、大丈夫か?≫
「大丈夫・・・さ、行くよ・・・。」
リズロは、城に向かって再び走り出した。
お城に着くと、その庭にも兵士が何人も倒れていた。
「ここまで来て、住民たちがいないとなると・・・きっとみんなお城に避難したんだ・・・。
そこを襲撃しようと・・・・・・早く行かなきゃ!」
城の中に入ると、魔物であふれていた。
どうやら、住民たちを探しているようだ。
リズロはお構いなく、魔物を切り裂いていく。どこの部屋に避難したのかわからない住民たちを探しながら。
だが、城は広い。探しながら、尚且つ魔物を倒していくので、リズロの体力は削られる一方だ。
だが、ここで倒れるわけには行かな・・・・・・
「がっ!」
≪リズロ!!≫
リズロは、正面からまともに魔物の攻撃を受け、吹き飛ばされる。そして壁にぶつかり、バタッとうつぶせに倒れた。
≪おい、リズロ!しっかりしろ!≫
クラードが傍に寄り、声をかけるが、リズロは起きる気配がない。
大勢の魔物を倒し続けていた疲労が、体に蓄積され、魔物の攻撃を受けたときに、それが爆発してしまったような感じになったのだろう。
つまり、気を失っているということだ。
≪やけに戦い慣れしてると思ったが、やはりまだ子供か・・・・・・。≫
クラードはそう呟いて、リズロにバリアを張った。
すると・・・・・・
「ぅ・・・うぅ・・・・・・。」
リズロが目を覚ました。
だが、体はまだうまく動かせなかった。
≪リズロ・・・目を覚ましたか・・・。≫
「く、クラード・・・・・・ごめん、まだ・・・動けそうに・・・ない・・・。」
クラードは、動けそうにないリズロに手をかざす。すると、暖かい光が零れ出した。
その光で、リズロの傷や体力は段々癒えてきた。
≪どうだ、リズロ・・・動けるか?≫
「う、うん・・・・・・ありがとう、クラード。」
≪よし、戦闘開始だ。≫
バリアを解除させ、再び魔物を倒すほうに専念するリズロ。
倒しながら、あたりを探す。
すると、クラードが何かを感じだ。
≪リズロ・・・人の気配だ・・・。≫
「え?どこから?」
≪この先だ。この辺にまだ魔物はいない。早くするんだ。≫
「わ、わかった!」
リズロは、クラードが感じた方向へと走る。
≪ストップ!ここだ。≫
リズロは足を止める。
そこは、他の扉より大きなものだった。
どうやら、王様の部屋のようだ。
「ここに、いるんだね?」
≪あぁ、間違いない。≫
リズロは、扉をゆっくり開けて中に入った。
そこには、住民たちがいた。
リズロが突然入ってきたので、住民たちは怯えていた。
「あ、そ、その・・・すみません・・・僕は怪しい者ではありません・・・。
自然の国から来た、リズロって言います。」
剣を片手に持って「怪しい物ではない」というのはどうかと・・・。
「そなた、リズロ殿ではないか!」
人込みから、誰かが現れた。
「お、王様!お久しぶりです!」
「いやぁ、何年ぶりかのぅ・・・。ところで、スチルは見なかったか?」
「しまった!スチルの事忘れてた!」
そんなセリフに呆れるクラードは、突然指をパチンと鳴らした。
すると、そこに応急処置の施された兵士2人とスチルが現れた。
「あ、あれ?さっきまで国の城門にいたんだけど・・・?」
と、状況を掴めないスチルに「クラードがここに連れてきたんだよ。」と説明する。
しかし、スチルの事を忘れていたとはいえ、魔物がまだいるかもしれないという城に、連れてきてよかったものか?
まぁ、そこは深く考えないでおこう。
「あ、リズロ。魔物は全部倒したの?」
「実はまだなんだ。この辺に魔物の気配はなかったけど・・・・・・。」
≪だが、魔物が城の中にいることは確かだ。≫
「だから、みんなここでじっとしてて。」
そういい、再び扉に向かう。
「あ、そうだ。この部屋に入ってこられないように結界張らなきゃ・・・・・・。」
≪やめておけ。≫
クラードがリズロをとめると、リズロは疑問の表情を浮かべる。
リズロはすでに、自分の国全体に結界を張っている。
今のリズロの力では、2度も結界を張るのは難しく、例え出来たとしてもこの先の戦いが不利になるというのだ。
「じゃ、どうすればいいの?」
「あ、結界だったら、ボクがやっておくよ。」
と、スチルが突然そう言い出した。
話によれば、スチルは結果のことだけ、真面目に習っていたそうだ。
そのおかげで、今やプロ並らしい。
しかし、何故スチルが出来て王様は出来ないのだろうか?
その疑問はすぐに解決される。
「やり方を忘れた」だ。
結界は、何故か人によって違うらしいのだ。
だから、基礎知識は教えられるものの、やり方は自分自身で取得しなければならないのだ。
「なら、ここはスチルにお願いするよ。」
「任せておいて!」
スチルは、自慢げに胸を軽くドンと叩く。
そして、リズロは部屋の外に出る。
リズロは、クラードが行った方向に向かって走り出した。
部屋の中では、結界が張られようとしている。
普段、結界なんぞかけないものだから、実践的に「結界を張る」というのはこれが初めてだそうだ。
「スチル、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、お父様。ボクを信じて。」
スチルはそういうと、地面に手を当て、目を閉じ何かを念じる。
かすかに、スチルの体が光る。
「・・・・・・よし。結界完了っと。」
スチルはそう言って、父―王様―のほうを見る。
「これで、魔物は入ってこないよ。ちなみにここだけじゃなくて、国全体にも結界を張っておいたから、安心して。」
スチルは笑顔でそういった。
いつもは臆病なスチルだが、こういうときはとても頼りになると感じた父であった。
さて、リズロはというと、違う部屋に魔物がいたのでとにかく斬り裂いていた。
「クラード、魔物は後何体いるの?」
≪あと、10体のはずだが、まだひとつでかいのがいる・・・・・・。≫
「つまり、ゲームで言うボスにあたるってこと?」
≪あぁ。だが、そのでかいやつさえ倒せば、ここにいる魔物は消えるはずだ。そいつが、雑魚な魔物を操っているみたいだからな。≫
「じゃ、そいつを探さないと・・・・・・。」
そういって、走り出しそうなところを、クラードがとめる。
≪リズロ・・・・・・そいつを倒せるのか?≫
「・・・わかんない。でも、やらなきゃいけないんだ。戦いえるのは、僕一人なんだから。」
≪・・・よし、ならば行こう。やつはこの近くにいる!≫
「うん!」
そして走り出す。
だんだんとボスのほうに近付いてくるような感覚が、リズロにも伝わってきた。
すると、リズロとクラードはある扉の前でとまる。
この先は、どうやら裏庭のようだ。
気配が強くて、むしろ威圧感を感じているようだった。
「こ、この先に、いるんだね・・・・・・。」
≪あぁ。気を抜くな、リズロ。≫
「ぅ、うん。」
そっと、扉を開けて、裏庭に出る。
すると、そこには少女がいた。格好的には「女戦士」といったところだろう。
「あ、あれ?あの子?」
≪違う。対峙している方だ。≫
リズロは、少女が対峙している方を見る。
そこには、体を炎で纏った人型の魔物がいた。
見た目的には、デ○モンのメ○モン見たいな感じだ。
少女は魔物の攻撃を避け、リズロがいる辺りまでやってきた。
「ちょっとあんた!ここで何してるの!危ないわよ!」
「き、キミこそ!」
「私は、選ばれた戦士だから戦ってるの!だから邪魔しないで!」
少女はそう言ってから、再び攻撃に向かう。
リズロは、その少女の言葉を疑った。
選ばれた戦士だって?彼女が?
その証拠に少女の首には、リズロが持っているクリスタルのペンダントと似たようなものがぶらさがっている。
リズロは、すかさず自分のペンダントを見る。
ペンダントは、光り輝いていた。そして、少女のペンダントも。
ちなみに、少女は戦いに専念しているため、ペンダントが光っている事など気付いてはいない。
「僕も戦う!キミだけに負担はかけさせない!!」
そういって、リズロは飛び出した。
「ちょっと、素人が何言ってるの?」
「素人だけど、並大抵の素人なんかじゃないから!」
「何よそれ!」
「とにかくよく聞いて。僕が劣りになるから、キミは後ろから攻撃して!」
「な、何で素人なんかに指示されなきゃ・・・!」
「いいから早く!」
「わ、解ったわよ!」
少女は、リズロの言ったことに従う。
リズロは、少女に気を寄せさせないために、魔物を上手く誘う。
魔物はリズロだけに集中攻撃をするかのように、攻撃を加え始めた。
必死にその攻撃を跳ね返したり、受け止めたりしていた。
少女はその隙を付き、後ろに回り込み片腕を空にあげ、こう言う。
「メテオストーム!」
「ストーム!」の所で腕を振り下ろすと、空から炎を纏った隕石が落ちてきた。
それらは全て魔物に直撃する。
体勢を崩した魔物から10mぐらい距離をとるリズロは、剣を持ちながら変わった構え方をする。まるで、今から回転するかのよう。
≪今から何をする気だ、リズロ?≫
「黙ってみてて。」
精神を整え、集中力を高める。
魔物はゆっくりと起き上がる頃だ。
リズロの周りに、木の葉が舞う。
そして・・・
「今だ!!リーフサイクロン!!」
リズロが勢いよく回転すると、木の葉に包まれた巨大な竜巻となった。そして、そのまま魔物に突進した。
魔物に直撃し、連続ヒットしているかのようだ。
うめき声を上げて苦しむ魔物。
木の葉に包まれた巨大な竜巻は、魔物を通り過ぎ、スゥッと消え、リズロがその場にスタッと着地する。
うめき声を上げながら、魔物は消えていった。
「な、何なの・・・?」
「ふぅ・・・やっと終わった・・・。ありがとう、キミがいなかったらあの技は生み出せなかったよ!」
そういって、リズロは少女に笑顔を見せる。
「そ、そうよね。感謝しなさいよ///」
少女は、頬を少し赤らめながらそう言った。
「でも、どうして素人がこんなところに・・・?」
「僕もキミと同じ、選ばれた戦士だから。」
リズロは、さっきからずっと光っているペンダントを少女に見せる。
驚きを隠せない少女は、ようやく自分のペンダントが光っていることに気付く。
選ばれた戦士同士が近付くと、ペンダントはそれに反応して光りだすのだ。
「で、あんた名前は?私はフレア。」
「僕はリズロ。よろしくね。」
再び笑顔で答えるリズロ。
フレアと名乗った少女は、さっきまで顔が少し赤かったのが、また少し赤くなる。
「さて、戻らなきゃ。」
「戻るってどこに?」
「王様の部屋だよ。そこに住民たちがいるんだ。」
そういてから、さっきの扉から城に入り、フレアも後をついていく。
王室に戻ると、最初に入ってきた時と同じような反応をされたが、「なんだぁ~」という感じにすぐに解決した。
「もういいの?」
「うん。魔物は全部倒したよ。フレアがいたおかげでね。」
「フレア?」と首を傾げると、後ろからフレアがやってくる。
何故かまだ、顔が赤い。
「どうしたの、フレア?こっちにおいで?」
ちなみに、前も言ったように、リズロは恋愛に関しては鈍感だ。
フレアは、恥ずかしそうにやってくる。
「えっと、彼女がフレアで、え~っと・・・。」
「ほ、炎の国の選ばれた戦士よ・・・。」
炎の国といった彼女に、リズロは驚く。
何せ、仲間を探すため炎の国に向かって歩いてきて、こんなにも早く仲間が出来るとは思わなかったからである。
「まさか、キミが炎の国の戦士だったなんて・・・。」
「私の出した技とかでまず気付くでしょ?」
もうひとつ言っておこう、リズロはいろんな意味でも鈍感だ。
≪これで、仲間を探す時間が少し省けたな。≫
「そうだね。」
そんな2人の会話を、フレアは不思議そうに見てた。
「ねぇ、その妖精みたいなの、何なの?」
「クリスタルの妖精だけど、キミにもいるはずじゃ・・・?」
「そんなの、私のところにはいないわよ?」
フレアのこの言葉に、クラードはこう解釈した。
≪私に記憶はないが、きっと私のような妖精を持っていたのは、その戦士だけだったのかもしれないな。
つまり、妖精を持つものがリーダーということなのかもな。≫
「ってことは、僕がリーダー!?やめてよ!僕、まとめるの苦手なんだよ・・・。」
「そんなことはないわ。さっきの戦いの時は、いい指示だったし。」
「そ、そうかな・・・?」
そういいながら、頭をかくリズロ。
≪しかし、何故炎の国の戦士とあろうお前が、こんなところにいるんだ?≫
「あ!そうだった!お願い!早く私の国にきて!あなた、自然の国の選ばれた戦士みたいだし。」
フレアの話によれば、炎の国に水属性の魔物が侵入したそうだ。
そして、雷の国に行こうとしたのだが、道のりが遠く、近いと思われる場所の自然の国に向かおうとしていたのだ。
今何とか親衛隊が守っているが、魔物も大量に進入してくるようなので、いつ全滅するか分からないという。
「だからお願い!今すぐ来て!」
「わ、解った!」
そういって、2人は部屋の外に行こうとした途中にリズロはこういった。
「スチル、この国の皆をよろしくね。」
「う、うん!任せて!」
2人とクラードは、城の外へ出て、炎の国へと走っていった。
第4話へ続く・・・。