第77章:恐怖のアーケード
―3001年 4月8日 午後1時17分 戦艦フリーセル 上部通路―
「むきゃー!どこに行きやがったッスか!」
クリスは暗器を両手に握りしめて周囲を見回していた。
「ハッ…そう言えば、こんなことしてる場合じゃなかった…」
アリスが言っていた。
『ストラ・バスタで世界を消滅させる』
…!!阻止しなければ!アリシアさんに怒っている場合じゃない!
「と、とにかく敵を探さなきゃ…!!く、くそ、ロゼオも途中から見失っちまうし…だあー!『憲法1983条・勝手に世界を征服するとか言ったら罰金300万グラン―――――ッ』!!」
クリスは大急ぎで走りだした。
「嬢ちゃん、こんなとこで何やってやがる?大声出してよ。」
背後から声。
「なっ!」
クリスは間合いをとって戦闘態勢に入った。
「ひひひ…」
エースが天井から顔を突き出していた。
「国家の犬A発見。ひゃっは、女だろうが速攻抹殺だ。覚悟はいいな?」
「何が速攻抹殺だ!この悪党集団め、おとなしく捕まれ!」
「威勢がいいなぁ。だが、そうは問屋が卸さない。むしろ…俺達トランプ戦団に関わった自分を恨む準備をするこったな。クソアマ」
エースはニヤニヤと笑いながらスタッと降り立った。
クリスは歯ぎしりをしながら叫んだ。
「勝手なことばかりほざきやがって…自分は男ッス!」
その言葉を聞いた瞬間、エースの顔色が変わった。驚愕の表情だ。
しかしすぐに満面の笑みに変化した。
「ひゃ、ひゃっはっはっはぁ!お、男だぁ?うひゃひゃ!!コ、コイツ頭おかしいんじゃねえの?」
クリスの額に怒りジワが浮かんだ。
「バカにしやがって…タルビートの名において成敗する!」
「タルビート…?ああ、あの狂った人間共のいる一族か。知ってるぜ、チェシャじゃないがな。みんな自分のことを男や女だとかって勘違いしてんだろ?」
エースは卑しい笑顔でゆっくりとクリスに近付いてきた。
「違う!みんな、憲法学を学び、国家機関に貢献し続けてきた神聖な人間だ!」
「ひゃっは!まあどうでもいい。俺にとって人間はみんなクズだ。雑魚だ。ゴミだ。ひゃっは!」
エースはクリスの目と鼻の先まで歩み寄った。クリスはすぐに暗器を向ける。
「まったくもって威勢のいい女だ」
エースの顔から笑みが消えた。冷静かつ、冷酷な、殺人鬼の表情だ。
「いいことを教えてやろう…貴様らタルビート一族が…どんなに神聖な人材であろうと…」
エースはクリスの前髪を掴んだ。
「うぎゃっ!」
「踏まれて終わりだ」
クリスVSエース
ピロリロリロ~♪
間抜けな音楽と共に、エースの身体がゆがみ始めた。クリスはとっさに掴まれていた腕を払った。
「1UPだ」
―シュバッ!
エースが分身してしまった。クリスの目の前にはエースが二人。黒いズボンと露出した上半身、右胸のタトゥーまでまったく類似している。
「な、な…」
「ひゃっははははは!俺の能力はアーケードマスターだ!ゲーム等で究極と呼ばれる力を手に入れることのできる能力紋だよ!!」
二人となったエースはクリスに襲いかかった。
「ぐ…サクラフブキ!!」
―しゅばばばっ!
クリスの暗器剣から斬撃が発射された。
「アーケードマスター・ウォッチワーパー!」
―ビッ!
機械音と共に二人のエースは瞬間移動をした。
「くらえ!」
片方のエースがクリスの腹に手をあてた。
「トランプ法術・コメット・ジョーカー・フルハウス!」
―ばばばばばばば!!
無数のトランプがクリスの身体を切り刻んだ。
「うぎゃあっ!」
「ひゃはははは!!」
二人のエースが笑う中、
「十戒斬り!」
クリスは咄嗟に左右の壁を破壊した。
「なんだ?どうするつもりだクソ女!」
「こうするんだよ!!」
クリスの両腕が竜巻となった。
「風解・白虎邁進!!」
左右に空いた穴に竜巻の腕を通したまま、クリスは腕を手前につきだした。
―バキバキバキ…!!
竜巻は壁を粉砕し、エースに襲いかかった。
「なっ…何!?」
「うっ、うぎゃああああ―」
―バリバリバリ…
エースは竜巻によって粉々にされた。
「ハァッ…ハァッ…」
クリスは、自分の限界を超えた風魔法を使ったため、疲労していた。だが、倒せた。
「やった…へへ…」
ピロリロリロ~♪
残酷な音楽が流れた。
「…!!」
青ざめた顔でクリスは背後を振り返った。
―シュバッ!ババババッ!
エースが分身しているところだった。
「危ない危ない、いざというときのために“エースを増やしといてよかった。”」
分身は二人じゃなかった。3人、4人、6人、8人、10人、11、16、25、48、50…
「そ、そ、そんな…」
「ひゃっはははァ!70人だぁ!!」
70人のエースは一斉に笑い出した。通路いっぱいにエースが詰まっている。
「そら死ねェ!!ファイアエースだぁ!」
彼らは両腕から炎を発射した。
「クッ!!せ、千年桜ァ!!」
―ババババババババババ!!
膨大な量の斬撃が、エースを10人切り刻んだ。クリスは、相殺できなかった炎を浴びてしまった。
「うぐっ…うぅ…」
「うひゃっ…やるな…だが!」
―ピロリロリロ~♪
「そぉら、15人復活ぅ!5人増えたぞ?ひゃははははは!!」
大勢となったエースはクリスに覆いかぶさった。
「ゆっくりといたぶってやる!ひゃははははははは!!」
―午後1時20分 メインエンジン室 通路―
「国家機関だ!」
「捕まえろ!」
心なしか紅白兵たちが目まぐるしく動き出した気がする。いたるところから飛び出して襲ってきたのだ。僕達を抹殺するつもりだ。
「やれやれ…神技神腕、超・神打!」
―ズァッ!
白い閃光が紅白兵を消し去った。
「ワシも動くか…獅子神・王牙・六武燐!」
―ザンッ!
紅白兵が真っ二つになってしまった。
「センネン、アレ見て!」
ミサが紅白兵を指さした。
「ム?」
紅白兵の身体から黒い球体が転がり出ていた。
「あれは何じゃ?…レッキ、打ち抜いてみてくれんか」
「…ええ」
―ダンッ!
球体を撃ち砕いた。
「ぐぎぇええええ!」
紅白兵がうめきだした。そして、乾いた破裂音と共に粉々になってしまった。
「ウンン、あれが弱点か…!!」
「決定的ではないがな」
「んまあ、決定的でしょ…」
紅白兵が青ざめてたじろぎ始める。うん、弱点だな。
「今のうちに逃げた方がいいですよ…」
僕はBMを両手で持ち、紅白兵へ向けた。
「面倒だな…いちいち相手にするのもしゃくだろ?」
サイモンに支えられながらロキが口を開いた。
「出血大サービスだ。炎礼・火柱!!」
ボォォッ!!
巨大な火柱が上がった。
「わああああああ!!」
僕達は火柱のてっぺんにいるロキに掴まれたまま、上まで上昇していった。
―午後1時20分 ???―
「あででで…」
僕は腰を押さえながら立ち上がった。どうやら天井を数枚ほど突き破ったみたいだ。
「む、無茶しよる…」
続いてセンネンが起き上った。
「みんな大丈夫かい?」
サイモンがミサとミソラを抱えて飛び出て来た。
「ロキさんは?」
「さあ…」
一瞬ロキを探すが、どこにも見当たらない。薄暗くて、鉄錆びの臭いがする。それはどこでも同じか。
僕はライターを取り出した。
―ボッ!
小さな明かりは周囲を照らす。
ネシがいた。
「きゃあああっ!」
ミソラが悲鳴を上げた。
「貴様…!!」
「ふふふ…ご安心を、私は映像です。」
ネシの身体がわずかにぶれている。
「ネシ…よくも世界征服などとほざけるものだな!!」
僕は眉間にしわをよせながら叫んだ。
「世界征服?なぁにをおっしゃりますか?私の計画は世界消滅だけではありません。あなたがたはこの世界のことを知らないんですか?」
ネシは呆れたように肩をすくめる。
「このやろう…」
横でサイモンが筆と絵の具を取り出した。
「とにかく、私の計画を邪魔させるわけにはいきません。申し訳ありませんが、死んでいただきます。地獄の旅をお楽しみください…」
ネシがそう言った瞬間―
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
戦艦が揺れはじめた。
「次は何じゃ…?」
「ふ、船が変わりますの!!」
―ブワァッ!
戦艦の外郭が開き、広大な海原の光とすさまじい風が僕の目をふさいだ。
「ふふふふ…戦艦フリーセル・第二形態です…」
戦艦の上部は、まるで門のように左右に開き、そこからは数多くの砲台が覗き、四角形の建物が数多く立ち並んでいた。
これが戦艦の全貌か…僕達はちょうど砲台と建物の間の敷地に座り込んでいた。全員風のせいで身動きができない。
足元では雑草や草花が風で揺れていた。
「ふふふふ…チェシャ、ハート、こいつらを殺しなさい」
「了解!」
「はぁーい♪」
ネシの命令とほぼ同時に、チェシャとハートが上空から飛び降りてきた。
「い、いかん…!!」
センネンがうめいたその時…
「ヒャッハァァァ!!俺様・劇的に参上!」
ロゼオが縦に回転しながら鎌を振りかざした。
「なっ…」
チェシャが上を見上げた。
「ハートアロー・普!!」
―シュバッ!
「おっと!」
ハートの解き放った矢をロゼオは回避した。
「死導流・万国殺戮掌!」
ロゼオの両腕がデッドハンドとなり、無数に分裂してハートとチェシャに向けて発射した。
「知ったぜ…ハート!血には水だ!」
チェシャが叫んだ。
「オーケー!ハートアロー・水!」
ハートは水色の矢を撃った。デッドハンドは矢が当たった瞬間中和されてしまった。
「メガッ…」
「ぎゃははははは!ざまあねえな!」
「ナイスですロゼオ…」
「は?」
チェシャの背中に僕は手を押しあてた。
「神技神腕・下降掌!」
―ドバァァッ!!
チェシャは回転しながら床にめり込んでしまった。
「ひぎゃあああああ!!」
大声をあげながらチェシャは沈んでいった。
「言い忘れました………隙アリ♪」
「おやおや…ハート、近くにダイアとクラブがいるから応援に呼びなさい」
ネシは命令した。
「クッ…」
ハートは目を細めて飛び去った。
「ギガ、ざまあねえな!」
ロゼオは笑いながら僕の隣に着地した。
「ロゼオ、おぬしクリスと一緒じゃなかったのか?」
「あ?…途中でオメガはぐれちまった」
「…んまあ、敵地ではぐれちまったって…」
「別にー。あんなギガ銀玉オメガ死んだってメガトンどーでもいいんだよ☆」
語尾に☆を付けるな。前にもあったな。
「びええ」
「ロゼオ!いいから探してきなさい!二人で勝手に行ったんだ。責任を取りなさい!」
僕は一喝した。
「なっなんだよ、リーダーでもあるめえし」
「リーダーじゃろーがぃ」
「あ、そうか」
「いいから行け!!」
僕は指をロゼオにビシッと向けた。
「レッキかっこいい♪」
「んまあ、それでこそ男の子よ!」
「偉いぞ、よくぞ言いおったレッキ。味噌饅頭をあげよう」
…調子狂うな…。
「むぐむぐ、ふぁやくいけ!」
僕は味噌饅頭をほおばりながら再びロゼオに向き直ってにらみつけた。
「わっ、わぁーったよ!…チッ、なんだよ、せっかくギガ助けてやったってのに…メガブツブツ」
メガブツブツ!?ロゼオはしぶしぶ自分の歩いてきた道を逆戻りし始めた。
「さて…諸君、よく聞いていただきたい。アリス様はここにいらっしゃいます」
ネシはアリスの髪を掴んで引っ張り出した。
「いやっいやああっ!」
「おとなしくしなさい。ふふふ、国家機関諸君、御覧なさい。彼女の手首を」
ネシはアリスの手首を突き出した。両手首に白い機械のような腕輪がはめられている。
「ふふ、爆弾です」
「爆弾!?」
僕を含める一同は仰天した
「これは特殊な爆弾でね…3時間以内に彼女がストラ・バスタを歌わなかったら爆発する仕掛けになっているんですよ。吹っ飛ぶのは手首だけだから死にはしません♪」
「な、なんじゃと…!?」
一同は驚愕した。
「アリス様は思ったよりお堅い方でした。何年も過ごした仲なのに、残念です。クスクス」
ネシの横でアリスは唇をかみ締めて涙を流していた。
「辛いでしょうねぇアリス様、もっと苦しめ。ふふふふふ…」
「なんて姑息なヤツなんだ…ウウン」
サイモンさんは歯ぎしりをした。
「この手首の鍵は、5つのパーツを組み合わせてできるカード式になっております。我が幹部連の内、誰かが持っているのです。どうでしょうか、“ゲーム”と行きましょう♪」
「ゲームじゃと…ふざけおって…」
「幹部連を倒して、カードキーのパーツを集めてください!制限時間はさっきも言ったように3時間です。あ、今一分経過したからあと2時間59分ですね。ちなみに…幹部が何人かは、教えられませーん♪」
ネシがそう言った瞬間、
「ハァッ!」
「オラァっ!」
センネンとミソラが何者かに連れ去られた。変形の時に生じた穴の中に入り込んでしまったのだ。
「センネン、ミソラさん!!」
「はわわ…」
僕はとにかくミサを抱きかかえて、周囲を見回した。
「おーい!センネン、ミソラさん!!」
再度呼ぶが、返事がない。
「く、くそぉ、何だ!?何が起こっている!?」
「私の部下は強いですよ…どうぞ、地獄のフライトをお楽しみください…正義共!ふふふふふ…」
―ブチッ!
ネシの身体が消え去った。
「…ちくしょう!やはりロゼオを呼び戻すべきだったか…」
僕は奥歯を噛んだ。
「とにかく、手分けして幹部を探しますの、レッキ…早くしないとアリス様がぁ…」
「いや、単独行動は危険だ…サイモンさんはともかく、ミサはなるべく僕の近くにいなさい…」
「ウン…それじゃあ、どう分かれようか…」
「上と下。で、行きましょう。サイモンさんはセンネンとミソラさんの救出をお願いします。僕とミサで、上の方の様子を見てみますよ」
「そうか、わかったよ。ウン」
サイモンさんは槍を片手にその場から、奈落のそこに飛び降りた。
「さてミサ、僕から離れないように…」
「う…うん…」
BMを取り出して僕はふと、すぐ横にある壁を見た。目がついている。
「きゃああっ!」
ミサが悲鳴をあげた。赤い目がギョロリとこちらを見据えていた。
「さっそく幹部のお出ましですか!?」
僕はBMを向けた。
「…くくくくく…」
―ズズズズズズ…
壁から生まれるように出てきたのは、緑色の食虫植物のような男だった。
ハエトリグサのような鉄製のかぶと、裾の長い緑色の白衣、根っこのような奇妙な形状のブーツそして、黒い顔の赤い眼。ギラギラと光る。何だコイツ!
「私の名はスペード・ジャバーウォックです。トランプ戦団幹部連の一つ。4THカルティメットのリーダーです」
リーダー…ちょっと相手が悪いかも…。
「ミサ、数歩下がれ。」
「はい…」
僕は白いコートを脱ぎ捨て、黒いゴムスーツ姿となった。
「重りでも付いているコートかと思いましたぞ、ふっふふふふ」
「ふん、気分です。気分」
「ふっふふふ、そうですか」
スペードは僕に向かって突進してきた。
「我が能力紋の力を見せてやりましょうぞ!プラントマスター!」
両腕が緑色に光る。
「神技神腕…極斬・抜刀!」
白い剣を作り、スペードのかぶとめがけて振り下ろした。
―ガキィィン!
剣は粉々に砕けた。
「ば、馬鹿な…極斬刀は次元ですら斬れる技なのに…」
「特別製なんです。私のかぶと♪」
スペードは自分のかぶとをコンコンと突いた。
「クッ…神技“超”神腕…神化乱打!!」
―ズダダダダダダダダダダダダダダダダ…!
なるべくかぶとのピンポイントを狙った連続打撃。これで状勢が崩れたのを狙って覇王脚で決める!!
「ふっふふふ…そんなチンケな技で私をどうにかできるとでも…?」
スペードは笑いながら両手を合わせた。
「今度はこっちですよ。アースハンド!」
―ズボボッ!
地面から根っこが生えた!!根っこは僕の両足に巻きついてしまった。
「うわぁっ!」
「ひゃあ!レッキィ!」
ミサが声を上げた。
「ふっふふふふ…ここは私の最も得意とするフィールドです。ネシ様のお怒りかつ、普段踏みにじられている植物達の恨みを思い知りなさい!」
スペードはそう叫ぶと、垂直に飛び立ち、クルクルと回りだした。
「金髪君もロリ娘ちゃんもここで人生終了ですよ♪」
「何かするつもりだな!?ミサ、こっちに来なさい!神技神わっ―」
僕の全身に根っこがまきついた。こ、これじゃあ身動きが取れない…。
「きゃああ!」
「ミサ!?」
僕が顔を向けると、ミサも僕とまったく同じ状態にあった。うーうーと呻きながら根っこから逃げようと暴れている。
「まったく…パンドラはともかく、コスモスの連中はまったくもって恐れる心配なないようですね…ネシ様も心配性だ…ま、いっか。とりあえず死ね!最大エネルギー・クラックダンス!!」
スペードの身体から膨大な量の針が発射された。あんなのを食らったら本当に死んでしまう!!
「く、くそぉ…もうだめなのか…?」
僕が目を閉じた時、
「オラァ―――――――――――ッ!!」
上空から赤黒い手が伸びてきた。
―ズシンッ!
腕が僕とミサの前に落ち、瞬時に針の刺さる音が響いた。
「こ、この腕は…」
僕は上を見た。
「ギガ、SO、COOL!!」
ロゼオがひゃっははははと笑っていた。戻ってきたのか…。
「リーダーさんよぉ、情けねえなあ!もうピンチかよ!」
そして、スペードを見た。
「おうおう、オメェは俺にギガ無礼なことしやがった食虫野郎じゃねえか!」
「おや、私の技を前になすすべもなかった死神さんですか?」
「あぁん!?」
ロゼオはデッドハンドを解除し、スタッと降り立った。
「今度は俺がギガトン勝つ、何故かって?今週の俺様はいつもより多くギガCOOLだからなんだぜぃ!」
「…呆れた、知能の低いセリフだ…まったくもって、呆れた国家職員ですよ―」
スペードは一瞬でロゼオの背後に回った。
「今度は殺す」
「ギガッ!?」
ロゼオは鎌を取り出し、腕を押さえた。
「瞬発力はあるようだな…」
「まあな♪」
「だが…力への欲望は己を弱くする…ウォックアイズ」
「うぉっと!!」
ロゼオはバック転をして間合いをとった。瞬間にスペードの前が大きくブレた。
「な、なんです!?」
僕は仰天した。
「おおかた、次元を歪ませるメガ衝撃波だろ?正直俺にはすべてギガ読めまくってやがる。びっくりだな♪」
ロゼオは笑いながら僕に巻きつく根っこを切ってしまった。
「ミサのもはずしたら、クリスを俺の代わりにギガ助けてやってくれ…」
「ロゼオ…」
僕はミサの根っこをはずしてロゼオを見た。辛そうな顔をしている。
「すまん、クリスとはぐれたのは俺の責任だ…だがな、俺はコイツに借りがあるんだ…男と男の勝負の方が優先的だろ?」
ニヤリ、ロゼオは笑った。
「まったく…お前は最低の死神だな…」
僕は頭をかいた。
「でも…そういう馬鹿さ加減も悪くはない……死ぬなよ、ロゼオ」
僕はミサを連れてその場から走り出した。
「…おうよ、仲間の言葉が俺をメガ強くする…」
ロゼオは鎌を振り回して刃先をスペードに向けた。
「ギガ、斬る!覚悟しろ食虫野郎!!」
スペードは黙っていたが、突然笑い出した。
「ふっはははははははは!!面白い!八つ裂きにしても文句はあるまいなぁ!?腐れ死神めが!!」
ロゼオVSスペード
―午後1時26分―
タイムリミットまで、残り2時間54分…
第78章へ続く