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第82章:道化師の降臨

―3001年 4月9日 午後1時57分 戦艦フリーセル 武具庫―

「でかしまくりですセンネン」
「あの猫耳から奪ってやったわい」

さすがだ。この調子でどんどん集めていこう!

「うぎょおおお…」

クレイ爺が起き上がった。黒こげの身体で何かをしようとしている。

「…まだ生きておるのか、トランプのくせに」

センネンは獅子神を撃とうと手を向けた。

「ぐ…ぎぎ」

ふところから取り出したのは、リモコンだった。

「…ワーミング・サイレン…発動」

―ポチッ!

「ネシ様万歳」

クレイ爺はそれっきり何もしなくなった。死んだのだ。

「…何をしたのじゃコイツ…」
「…さあ…」

僕とセンネンは不思議そうな顔をしていたが、ミサだけは違った。ガタガタと震えていた。

「何かが…来る…」
「え?」
「ム!?」

センネンは何かを感じ取った。

「レッキ!殺気を感じるぞ!逃げろ!!」


「あそこからだ」
「あの部屋からするぞ!」
「行こう!」
「殺そう!」
「ひゃはは」
「八つ裂きにしてやる」


「急げ!」

センネンは早く来いと腕を振った。

「待ってください、この猟銃は1800年代の骨董品じゃないですか」
「びええ、レッキのんきⅡですの」
「武器マニアめ…」

センネンは無理やり僕を持ち上げた。

「わあ」
「さっさと逃げんかたわけ!!」

そのまま、近くにある窓を突き破って脱出してしまった。

「あそこの影に隠れよう!」

3人は小さな瓦礫の山の陰に身を潜めた。

「何か出てきたぞ…」

センネンは青ざめた。出てきたのは、龍だった。
ゴツゴツとしたうろこ、鋭い爪、鋭い眼光、そして巨大な翼。10メートルはくだらない大きさだ。そんな龍が何十頭も武具庫を荒らしまわっているのだ。

「トランプ戦団は龍まで飼い慣らしておるのか」
「そんなバカな。あんな生物いるわけないでしょう、敵の能力かなんかですよ。きっと」

僕はセンネンにそう言った。

「あ、サイモンさん!!」

ミサが声を上げた。小声で。

「!!」

見ると、サイモンさんが一頭の龍の首にしがみついているのが見えた。

「何をやっちゃってんですかあの人は」
「おばかなことじゃろ」

ごもっとも。

「うぉぉぉ、コイツしつこいぜぇ!!」

龍は暴れまわっている。その辺の建物や砲台にサイモンを凄まじい勢いで押付けていた。

「ぐっ!うぉっ!がぁっ!」
「さ、サイモンさん!!」

ミサが悲鳴をあげた。

「見ておれん…ワシらも加勢しよう」
「はい…ミサ、ここを動いちゃダメですよ」
「は、はい」

僕とセンネンは影から飛び出して、サイモンさんの頭を食いちぎろうとした龍に蹴りを喰らわした。

「ぐっぎゃあ!!」

龍は悲鳴をあげて壁に激突した。その瞬間力が抜けたのかサイモンさんがへたりと落ちてしまった。

「サイモンさん、大丈夫ですか?」
「ウン…助かったよ」

サイモンさんはフラフラと立ち上がった。

「無茶しおる」
「コイツ等はエース、アーケードマスターの使い手だよ。何か最強の力らしいね」

サイモンさんはそう説明した。最強の力か…。

「ただでさえ忙しいというのに…」
「げっひゃひゃひゃひゃ」

龍エースは大笑いしだした。

「何だよ」

サイモンさんがそう言った。

「へへへ…お前等パーツが欲しいのか?」

一頭の龍エースが耳から何かを取り出した。

「それは!!」
「俺が持ってるぜ、もちろん本物だ」
「何故それを教える。まさかあの猫耳のように忘れていたとか言うのではないじゃろうな!」

センネンがにらみながらそう叫んだ。

「それはない、俺達はアイツみてえにバカじゃねえ。俺達は貴様等に負けないという絶対的な根拠があるのだ」

別の龍エースがそう言った。

「絶対的根拠だと?くだらない。そんなものは公式を用いてきっちり説明しなさい」

僕はBMを構えてそう言った。

「げひゃひゃひゃひゃ!!威勢のいいガキ共だ!」

龍エースはそう叫ぶと、一斉に襲い掛かってきた。

「獅子神・王牙」

センネンは素早くパーツを持っていた龍エースの頭に傷をつけた。

「コイツだけは消滅させて殺そうとするなよ!」
「ウン、ご親切にどうも」

3人は周囲をグルグル回る龍の群れを見つめていた。

「どうします?…」
「ウウン、どうするもこうするも…」
「やるしかなかろう」

僕はBMを、サイモンさんは槍を、センネンは戦闘の構えを、龍の群れに向けた。

「ゆくぞ!」


再び時間がさかのぼり、


―1時39分 敷地―


「シィィィィク・レットォォォォォ!!」

ダイアは叫んだ。悲鳴だろうか。

「俺が怖いか?だったらさっさと消えろ」

シークは静かに、そして冷酷につぶやいた。

「うぐぐ…俺だけじゃ分が悪すぎる…」

その時だった。クラブが笑いながらすっ飛んできた。

「俺をなめるなよ!!ミュータント・アンチ」

クラブは、デスライクに変身した。

「これがお前の一番嫌いな男か!!」
「デスライク!テンメェェェッ!」

シークはクラブを思い切り殴りつけた。

「さっすがシーク♪」

アリシアが目をハートにしている。

「ひぎゃあ!何故だ?!何故嫌いなのに殴れるんだ!?」
「お前アホだろ」

シークにアホと呼ばれるとは。

「まあいい…貴様がここで現れることは想定外だったが…むしろ好都合だ。ダイア、連携して戦うぞ」

クラブは口元の血を拭きながら立ち上がった。

「あ…ああ」

ダイアも素早くシークから離れて頭にまいてあったスカーフを外し戦闘態勢に入った。

「トランプ戦団の四天王、4THカルティメットの力、見せてくれようぞ!!」

クラブが叫んだ瞬間、アリシアが静かに立ち上がった。

「え…?」

アリシアは青ざめた。

「ん?アリシア…?」

シークが振り向いた時、アリシアは腰のクナイを振りかざしていた。

「何!?」

シークは素早くアリシアの腕を掴んだ。ぎぎぎぎぎぎ…凄まじい力だ。

「アリシア…何しやがる!!?」
「ち、違うの…身体が勝手に…!!」
「あはははは!」

頭上からダイアの声がする。見上げると、ダイアが指から糸のようなものを出して空中を浮遊していた。

「あ、あいついつのまに…」
「驚いたかい?それは俺の能力紋・ドールマスターの力だ」

なるほど、あの糸でアリシアを操っているのか。単純かつ厄介な能力だ。
アリシアは怪力の持ち主だからシークでも手に負えない。腕を押さえるので精一杯なのだ。

「参ったなぁもお!」
「へへへ!クラブ、今のうちにやってしまえ!」
「言われなくても」

クラブは全力で走り出した。

「筋力ミュータント!」

彼が叫ぶと、全身の筋肉が膨張し始めた。

「げ!?ウェイバーみてえになっちまいやがった!」
「くははは!これがミュータントの力だ!」

クラブは右腕でシークの右わき腹を殴った。

「うげ!」
「まだまだ!」

ダイアは糸の付いていない片方の手を掲げた。

「トランプ法術・セブンスライン!」

―バシュッ!

7つの光がシークの頭めがけて飛んできた。

「い、いかん!アリシア!!」

シークはアリシアを力任せに突き飛ばした。

「し、シーク!」

アリシアは叫んだ。

「死ね!!」


すがん


光はシークに当たった瞬間派手な爆発をとげた。


「まだだ!セブンスライン!」

クラブも光を撃ち出し始めた。

「撃て!撃ちまくれ!二度と立ち上がれなくなるぐらいにまで痛めつけろ!!」

―ずがんずがんずがん!!

「くたばれ!我等の敵め!」

―すがんすがん!

「消し飛べ!パンドラの一角!」

―ずがずがずがががががが!!

アリシアは壁にもたれかかったままその光景を目にしていた。

「やば…アイツ等、死んだわ☆」



―しゅううううううううう…

シークのいた場所には巨大なクレーターが出来上がっている。

「うはははは!やった!やったぞぉ!」

クラブは嬉しそうにクレーターを見下ろしている。

「たいしたこともなかったか。恐れるに足りないな」

ダイアも笑みを浮かべながら見下ろしていた。クレーターは思ったより深く、下の方は真っ暗だ。

「シークの破片とかあるか?」
「わからないけど、まああれだけ喰らったんだ。生きてやしないだろぉ」

ダイアは服のほこりを手で払い落としながら言った。

「そりゃあそうだな…ひひひ」

クラブはケラケラと笑っている。

「…逃げればいいのに」

アリシアは少し楽しそうに物陰に隠れている。

「よぉし、今度はさっきの女の番だ。ダイア、もう一回あの女を捕まえろ」
「ああ、さっきはドサクサにまぎれて逃げ出したみたいだが、今度は逃がさない。トランプ戦団の恐ろしさを思い知らせ―」

ダイアは何かに気付いた。

「どうした?」
「…声がする」

ダイアは引きつった顔でクレーターを見下ろした。

「ハァ?」
「…嘘だ…俺は全力で技を出した。何故だ…」

ダイアはガタガタと震えだした。クラブはクレーターに再び目をやった。



「ぬるいな」


シークがゆっくりと浮遊しながら向かってきていた。

「ば、バカなぁ!!」

クラブも仰天したようだ。

「それがお前等の最高の力だとするなら…期待はずれだ。俺の足元にも及ばん」

シークはクレーターから飛び出して、クルッと一回転をして着地した。

「かっこよすぎるシーク♪」

アリシアはもうメロメロだ。

「こ、このやろ…!!」

シークはわずかに黒服にほころびが付いているだけだった。

「…お前等は許せないことをした」

シークはいきなりつぶやいた。

「俺の仲間…アリシアを…ロキを…派手に痛めつけやがったらしいな…おまけに、俺の仲間を操って攻撃しようともしやがった。俺が一番許せねえのは、俺の仲間に手ぇ出したってことなんだよ」

シークは静かに言った。それだけに凄まじい気迫を感じた。

「…!!」
「じ、次元が違う…!!」
「最終警告だ。降参しろ」

シークはこぶしをパキパキと鳴らし始めた。

「う、うるせえ!!」

クラブは筋力のあがった腕でシークの顔を思い切り殴った。致命的な選択ミスだ。

「…」

シークは首だけを傾けたまま動かなかった。

「残念だ」

シークはそう言った瞬間、

―シュンッ!

その場から消えた。

「うわっ!」

クラブは驚愕して辺りを見回した。

「どこだ?!どこにいる!?」
「クラブ!上だァ!!」

ダイアが叫ぶやいなや、シークが頭上から急降下してきた。

「うぐっ!」
「神技神腕(超・神+激震重圧波)憤怒・激神災!!」

―ずがががががががががががが!!

クラブのいた場所に円型のくぼみができた。無論、クラブは同時につぶれてしまった。

「どうだ…」
「…まだまだぁ!!」

クラブが腕を伸ばしてきた。そのままシークの足首を掴んでしまった。

「おりゃあ!!」

クラブはもう片腕でシークの身体を滅茶苦茶に殴りまくった。

「くたばれ国家戦士め!!」

クラブはとどめをさそうと掴んだ足首を地面に叩き落そうとした。

―グッ!

動かない。

「え…?」
「お前、片腕大丈夫か?」

見ると、片腕が滅茶苦茶な方向に曲がっていた。

「うぎぇえええええええええ!!」
「一応いっとくけど、降参しろって言ったのにしなかったお前等が悪いんだからな」
「ち、ちくしょう!!苦しめてやる!!ミュータント・ビジョン!」
「シーク!その技は危険よ!」

アリシアが叫んだ。

「何だ?」

シークはクラブの技をまともに受けてしまった。

「…」

シークの目に最悪な過去が映った。

「どうだ、精神ごとぶっつぶれちまえ!」

クラブはケタケタと笑っていた。しかし、その笑顔はすぐに蒼白な表情に変わった。

「だからどうした」

シークは空中で静止したままクラブを見下ろしていた。

「俺は過去になんか振り返らずに前だけに突き進む。過去の思い出なんか知るか」

クラブは確信した。勝機はゼロだと。

「ドールマスター!」

ダイアがシークの身体に糸を縫いつけた。

「やった!これで自由は利かないぞ!?」
「…ああ、そうかい」

シークは腕の辺りの糸をクイッと引っ張った。

「うぎゃおっ!?」

ダイアがすごいスピードで引っ張られてきた。

「ほぉ、即席フレイルだな」

シークはつぶやいた。糸がブチブチと音を立てて千切れていく。

「ひぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃいぃぃぃ!!!!!化け物だ、化け物だぁ!俺達が二人合わせても傷ひとつつけられないなんてぇええええ!!」

ダイアは絶叫しながらクラブに向かっていく。

「うわぁあああああああ!く、来るなぁ!!」

クラブは悲鳴をあげた。

「なんにせよ、これでどっちかは死ぬな」


ガゴッ!


「ぶげゅ」

鈍い音と共に、ダイアの首が妙な方向へ曲がった。クラブはダイアとモロにぶつかり、戦艦の縁にまで吹っ飛んでいった。

「あらら…」

アリシアは呆然としていた。

「思ったよりグロいな」

シークは糸を全てちぎり落としながら言った。ダイアは即死していた。クラブは縁のところで横たわっている。

「大丈夫だったか?アリシア」
「おかげさまでね、ありがとね♪助けてくれて」
「当たり前だろ?お前は俺の大切な仲間だ。それに…」
「それに?」
「コイツ等の目が気に食わなかった…命をゴミ同然に見る目だったからな。俺の愛弟子が大嫌いな目だよ」

―シークVSダイア&クラブ シーク 圧勝―


そして今――


「そういやぁ、そろそろ他のみんなも来るはずだな」
「え?プロさんも来てるの?」
「ああ、どうやら今回の仕事はパンドラ級のレベルらしいぜ。ま、幹部でこの程度ならたかが知れてるけどな」
「あ…」

アリシアは目を見開いた。


ネシ


「シーク、あのね…」
「うん?」

アリシアはネシと戦ったことをシークに話した。

「なんというか…次元そのものが違ったのよ。アイツは、今までの敵とは何か違う…言葉では表現しにくいけど…戦った後には絶望感しかなかったわ」
「…お前ほどの女がそこまで言い切るとはな」

シークはシルクハットを調えた。

「ネシ・サルマン・ジョーカーね…戦い甲斐のありそうな男だ」

楽しそうだ。

「ちょ、ちょっとシークったら…」
「ドバァン!」

アリシアが突き破ってきた穴から、バロンとクリスとエリザが飛び出してきた。

「うぉ」
「わ!」

シークとアリシアは少しびっくりした。

「お前、レッキの兄ちゃんじゃねえか」
「おう、シークさん!アリシアさん!」

バロンは息切れをしながらそう言った。どうやらクリスとエリザを背負ってここまで来たらしい。バロンは死傷している幹部二人を見て驚いた。

「コイツはあの変身野郎…やっつけたのか!さすがは俺の弟のお師匠さんだ!」
「まあな!はっはっは!」
「調子いいとこもいつもどおりッスね」

クリスが面白そうな笑みを浮かべた。

『サイモン…おバカみたいな人達と仲良くなってるのね』

エリザはそう感じた。

「それよか、カードキーのパーツを集めなければ!」
「かーどきー?」

シークとアリシアが同時に言う前に、バロンはダイアの服とクラブの服を調べた。

「変身野郎は持ってないか…こっちの曲げ死んでるヤツには……あった!!」

カードキーのパーツが光り輝いていた。

「やったぜ!」
「あの、ソレ何?」

アリシアが目を点にして聞いてきた。

「ああそうか、説明しねえとな」

バロンは二人にカードキーについて説明した。


「ネシのヤツ、女の子をいじめるなんて酷いわ!」

アリシアはプルプルと身体を震わせている。

「まったくだ。かなりのどエスだな」

どエス(笑)

「バロンさんみたいなこと言ってるッス」
「お、俺はシークさんと同じくらいなのか。ショックだな」
「そりゃ何の意味だ!!」

シークはそう言いながら、アリシアに襲い掛かってきたクラブの腕を掴んだ。

「うわぁ!」
「ま、まだ生きてるの?!」

クリスとアリシアが叫んだ。

「いちいち仲間を狙うんじゃねえよクソ野郎」
「せ、せめて一撃でも入れてやりたかったぜ」
「パーツも取ったんだ。もうお前に用はねえよ」

シークは静かに言った。

「ほれ」


ズゴッ!


クラブの腹に思い切り腕を差し込んだ。

「びあああああああ!!」

クラブは奇妙なうめき声をあげた。

「ん?なんだこれ」

シークはクラブの腹から黒い塊を取り出した。

「うげぇ…」

クリスが声を漏らした。

「…?」

シークはそれを潰した。

「げちゅう」

クラブがドロドロに溶け、消滅してしまった。

「面白いなぁ、核があるのかコイツ等には」

シークは興味津々といった感じでインクの染みを見つめていた。


―戦艦フリーセル ネシの広間―

「う…ん」

ミソラは目を覚ました。椅子に縛り付けられている。

「ここは…?」
「ネシ様の広間である」

キング・レッドが腕組みをしながらちかよってきた。

「んまあ、私をさらったのはアンタね!?」
「人質をのがしっぱなしなんて知られたら、ネシ様に殺されてしまうからなのであーる」

キング・レッドはミソラのすぐ横まで近づいた。

「さあ、絶望を味わうであーる」
「ぐ…」

ミソラは服の袖口に仕込んだ鉄の破片でロープを切り裂いた。

「タァッ!」

そのまま、キング・レッドの喉笛を切り裂いた。

「がっ」

キング・レッドはうめいたが、すぐにミソラの髪を掴んだ。

「ひゃっ!」
「いい気になるなよ小娘…いくらネシ様に殺すなと言われていたとしても、不慮の事故で殺すこともできるのであるぞ…」
「あ…あう…」
「これは何かわかるか?ミソラ」

キング・レッドはふところから何かを取り出した。赤いスイッチだ。

「貴様の支部の砲撃スイッチだ」
「!!!!」

ミソラは青ざめた。確かにあれはネシの持っていた起動スイッチとそっくりだ。

「押してやろう、ポチっとな」

ポチ、本当に押してしまった。

「あ、あああああああ!!」

ミソラは悲鳴をあげた。


しゅるるるるるるるるるるるる

ずどぉぉぉぉん


凄まじい爆音がとどろいた。

「ありゃあ数分で支部にたどり着くな」
「こ…この悪魔ぁ!!」

ミソラはキング・レッドの顔を殴った。

「…口の悪い小娘は嫌いだ」

―ダァンッ!

ミソラは壁に叩きつけられた。高価そうなツボが砕け散る。

「ふふふふ、心配いらん…『拷問しすぎて殺しちまいました』で勘弁してもらえるだろう」

キング・レッドはニヤニヤと微笑みながら近づいてきた。

「すぐに部下共と顔を合わせることになるぞ…くくくくくく」

キング・レッドは手をミソラに向けた。ミソラは悔しくて、怖くて泣き出しそうだ。

「うう、ううううう!!」
「死ね!くははははははははは!!」


『リクヤ…』


チェスのこまが降ってきた。


ひゅっ


ガンッ


チェスは粉々になった。

「…なんだと?」

砂煙がまく中、ミソラは目の前に希望の光を感じた。

「…あ…」

ミソラはそれに気付いた瞬間、せきを切ったように泣き出した。

「リクヤ…」

「待たせたな、ミソラ」

 第83章へ続く

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